どの章からでも読んでOK! 各章あらすじ紹介!
■第一部(1章〜4章)は異世界を探索し帰還を目指す
「僕達の世界、地球への帰還なんだが、かなり現実味を帯びてきたな」
「まじか!?」
「詳細くわしく~」
「逆に考えてみよう。
僕達が帰れないのはどんなケースか。
最初はここが完全な異世界、すなわち、無数のパラレルワールドのひとつだというケースだ」
■第二部(5章以後)は開き直ってやりたい放題!
「ともあれ、そのこれまで解決した事件を消化しおえた今、ここからは新たに動画を撮っていくわけじゃない~。
それでこっちでも動画配信者として生活していくわけで~」
「いや帰還目指すからな!? こんなトンチキ世界に骨は埋めないからな!? 天照大神から帰還の条件としてチャンネル登録者数1兆人って言われただけだからな!? つーか1兆とか桁バグってんだろ!? どこの超銀河アイドルだよ!」
「ともあれそうなると、これから先のって動画としては改めて『ガチ』になるわけで~」
1章「ゾンビ奇祭編」
怪談 科学
★★★☆☆ ★★★☆☆
民俗学 ???
★★★☆☆ ★★☆☆☆
ギャグ シリアス
★★☆☆☆ ★★☆☆☆
豆知識 パロディ
★★★★☆ ★☆☆☆☆
■1章はゾンビの奇祭を民俗学考察!
「ゾンビ社会で形成された民俗学だよ~!
ゾンビの里の年一度のお祭りって、想像できる~!?
祭りと言えば民俗学の華でしょ~!
私もう、めっちゃ楽しみでさ~!」
「……確かに、ちょっと気になる」
■丸腰チートなし異世界転移だもの。腐った食べ物も食べるしかない!
「あ、ユウキく~ん、おはよ~」
ちらりと2人の前に並ぶ朝食を見る。
サダコ姉の前にはくさやと納豆と漬物と味噌汁。
キリヤの前にはパンとナタデココヨーグルト。
(めっちゃ健康的な朝食やん……ゾンビなのに……)
眠そうにあくびするゾンビのおばちゃんと朝の挨拶をかわし、キムチとザーサイをいただく。
軽く豆板醤を加えてお盆に乗せ、サダコ姉の前に座る。
■ゾンビは日光に弱いのに、里の奇祭では何故か……
「それじゃ、焼肉祭がんばりますかねぇ」
「あ、おかみさん! 日傘日傘!」
「いやいや。焼肉祭の期間中は日傘を使っちゃいけないのさ。
よしっ!」
ベチャっと両手で頬を打つおかみさん。
そのまま外に一歩足を踏み出した、その瞬間。
「あ、あああ! あああああああ!!」
「お、おかみさぁぁぁあああん!」
太陽光を受けたおかみさんの皮膚が煙をたてて焼け始めた。
里の中では至るところで同様の光景が繰り広げられる阿鼻叫喚の地獄絵図である。
■里を襲撃する謎の悪党! 風土が生んだ病とは?
「そ、それだ! それが俺達がこの里を襲った理由だ!」
「詳しく~」
「50年前から生まれた子どもたちに体の異常があらわれ始めた!
奇形に育ち、体もどんどん弱くなり、骨折が日常化していった!
これはすべて、この里のやつらが俺達に呪いをかけたからに違いない!
これは復讐だ!」
「なるほど~……まさかとは思いましたけど~……
想像通りかもしれませんね~、どう思います、ヨッシー君~」
「確証はないが、可能性は高いな。
呪いの正体。それはおそらく」
2章「エルフ因習村編」
怪談 科学
★★☆☆☆ ★★★★☆
民俗学 ???
★★★☆☆ ★☆☆☆☆
ギャグ シリアス
★☆☆☆☆ ★★★★★
豆知識 パロディ
★★★★★ ★☆☆☆☆
■2章は排他的なエルフの薄ら暗い因習村へ
「ありがとうございます。案内よろしくお願いします。
それと、ユウキは騎士としての経験が短く粗野な言動が見られるかと思いますがお見逃しください。
これでも剣の腕は確かです」
「あ、す、すんません」
「気になどしていません。どうぞ」
咄嗟に適当なこと言いやがって、剣は買ったが素振りすらしてないぞと目で訴えるユウキを無視し、ヨッシーはエルフ達の背中の振る舞いに目を細める。
(気にしていませんではなく、気に「など」していません、か。
いかに隠そうとも差別感情はこうした細部に現れる)
■座敷牢が今も残る村は過去に猟奇殺人事件が
「今のサイドグルーヴの人口は約100名あまり。
だが今から約1万年に、150名あまりの人口が犠牲となる大量殺人事件が発生している。
今の住民のほとんどはもうその当事者ではないが、唯一長リトルプラムともう1人、その当時を知っているエルフがいる。
俺はこの仮説から、日本で起きたある事件を思い出したよ。
有名な名探偵が登場する伝説的なホラー映画や、平成の同人界隈で大ブームとなった猟奇ホラーアドベンチャーゲームの元ネタとなった、1938年に岡山県の苫田郡西加茂村大字行重、現、津山市で起きた日本史上最悪の1人の犯人による無差別殺人事件……津山三十人殺しだ」
■事件の裏に隠された謎を解く鍵は遺伝学!?
「メンデルはこの遺伝子に優性と劣性があると考えた。
次世代の子に現れるのは優性の情報のみ。
大文字を優性で小文字を劣性とした場合、この4パターンでは2番目がE、3番目がH、そして最初はEとHからランダム、4番目はeとhからランダムに現れるということだな。
人間の場合、これで男が生まれるか女が生まれるか決まり、結果的に男女は半々になる」
「でもエルフは女性しか生まれないんだろう?」
「そうだ。エルフの場合、その遺伝子は常に優性になる。
言うならば超優性。
どのパターンでも必ずEとeが勝利するんだ」
■犯人が隠していたのは悲しき思い
――されど逃げ惑う中に小梅の姿あり。
我ふと正気に還る。
己の成したこと、許されざるものにして。
もはや腹を斬って死ぬ他なし。
かくして腹を斬り、江留婦と幼き馴染みへの詫びとする。
「これが犯人の動機か……当然許せるものではないが、気持ちはわかってしまうな」
「ちょっと待て。 まだ続きがあるぞ」
3章「都市伝説メカドラゴン編」
怪談 科学
★☆☆☆☆ ★★★★★
民俗学 ???
★★★★☆ ★★★★☆
ギャグ シリアス
★★☆☆☆ ★★★☆☆
豆知識 パロディ
★★★★★ ★★☆☆☆
■3章は職工ドワーフの語る超最先端科学都市伝説!
「魔導機械だ。あれは生き物じゃない。
誰かに作られたものが体を見ればわかる」
「とても大きい。
背中には翼がはえていて、地底湖の上を飛び回っていた」
「口からは炎を吐く」
「攻撃しても自分で直してしまう」
「それに同じ攻撃は次には対策されていて通用しない」
「自分と似たような個体を作り出すこともできる」
「じ、自己再生、自己増殖、自己進化だとぉ!?」
まさにSF。
インフレしたロボットアニメの中にしか登場しないような盛りすぎ都市伝説。
普段ならばそれは、何故こんな都市伝説が信じられているのか、その元ネタはどこにあったのかという思考に進む。
「アフリカマリ共和国ドゴン族のシリウス神話のようにも思うが……」
「でもドワーフのみなさんに、そんなことは起こるわけがないのよね……何故なら彼らにとってドゴン族のシリウス神話は……」
■時間の概念がないドワーフの秘密は文化人類学で判明!
「す、すげぇな……でもなんでドワーフに時間概念がないんだ?
ドワーフは熱帯雨林に住んでるわけじゃないだろ?」
「じゃぁどこに住んでるの~?」
「鉱山だろ? 洞窟の中、地下深くに……
あ。ああああああ!」
「そうよ~。
地下には日の光もなく、気温は年中一定で雨も振らないの~」
「曲がりくねった坑道からは距離感も芽生えん。
一方の体は恒星の光を必要とせず石灰石などから直接栄養素を摂るよう進化したことから、彼らがそんな空間でほとんどの人生を送ることもわかる。
つまり……」
「ドワーフには距離も時間も数もなく、過去も未来もわからない……!」
■超進化するAIのシンギュラリティは世界を滅ぼすか?
「答えは、苦手なものなど無い、だ。
今はプログラム上難しいものが無数にあるが、それすら次第に可能になっていくのは近年のAI進歩を見ていればわかること。
近未来、人類の仕事はすべてAIが担うようになり、人類は労働から解放される日が来るだろう。
生産活動はすべてAIに任せ、ごろごろと動画を見ながらゲームをする生活が訪れる」
「神じゃん! 早くそんな世界が来ないものかねぇ」
「そして自由なAI達は、その世界で最も不要な存在に気付くわけだが」
「うわっ……まさにSFだな」
■暴走するメカドラゴンVSエルフの騎士の決着は!?
メカドラゴンがキリヤに気付き、口を上に向け。
(愚かな……獣人風情が!)
全力の大火球を吐き出した。
「キリヤぁ!」
だが、炎の中からは無傷のキリヤが騎士の剣を上段に構えたまま飛びかかってくる。
魔法鎧の対魔法障壁で全身が光り輝き、ウサギのつけ耳は焼け落ち、横髪からエルフ特有の尖った耳が姿を表した。
(エルフだったのですか!?)
「エルフ一刀流、一の太刀! キィィィィエエエエェェェェイ!!」
4章「天使たちの信仰編」
怪談 科学
★★★★★ ★★☆☆☆
民俗学 ???
★★☆☆☆ ★★★★☆
ギャグ シリアス
★★☆☆☆ ★★★★☆
豆知識 パロディ
★★★☆☆ ★★☆☆☆
■4章(第一部最終章)では神々が登場!
「やぁやぁ諸君! ありがとう!
これより農耕神であるこの僕が、日照りに悩む地域に雨を授けよう!
見学を希望される者は共に来るといい!」
農耕神を名乗る神は耽美系男子だった。
名前は言えないが姿は見えてOKと。
その背後では「農耕神一毛作!」「お米食べろ!」のうちわを振る天使の姿が。
アイドルか?
■差別される盲目の堕天使の嘆きは神々に届くのか?
「それに、黒い肌の天使を僕はルチさん以外に見ていない。
片翼の天使もだ。
お前もオカルトに詳しいなら、これがどういう意味かわかるだろう?」
「……堕天使か」
「そういうこと。
失明と堕天がどう関係しているのかはわからんが、孤児院経営とあわせて、あまり良い扱いを受けていないことは想像に容易い」
「くそっ。
そういうのはエルフの里の時みたいな勘違いか取り越し苦労だとありがたいんだがな」
■72柱の悪魔に囲まれ大ピンチ、最恐怪談で乗り切れ!
「怪談だ! 怪談を語りに来たんだ! 俺は、怪談師だ!」
さぁさぁ皆様お立ち会い!
今宵4つの月の下、耳なし芳一と歌いましょう!
百鬼悪霊蠢く前で、男一匹命を賭けた、一世一代独演会!
こんな体験滅多にできぬ、怪談狂いの誰もが夢見る、垂涎ものじゃぁございませんか!?
祇園精舎の鐘の音!
諸行無常の響きあり!
沙羅双樹の花は赤!
悪魔が斬られてはらりと流るる、てめぇの血の色何色だ!?
我ら猛き者共が、人で滅ぶばいとおかし。
それが驕り高ぶりと、教えられればめでたしめでたし!
終わればすべては真夏の夜、熱に溺れた夢の中!
ここは異世界、星の果て!
宇宙を吹き荒ぶ嵐の前じゃぁ、星の屑にぃ同じときたぁ!
■そして一同は元の世界に帰還する
「はい! 俺達の地球への帰還、よろしくお願いします!」
「わかりました。
では、この番号札をもって3番の惑星まで」
「ありがとうござ……」
「待ってください~。
もう1つ、お願いを聞いてくださいませんか~?」
「お、おい! サダコ姉! 何言い出すんだよ!?」
「まぁまぁ~」
「なるほどな……サダコ姉らしい」
「ふむ。既にあなた達の願いは聞いたつもりですが、言うだけ言ってみなさい」
「では、失礼させていただいて~」
5章「UMAヨルムンガンド編」
怪談 科学
★☆☆☆☆ ★★★★☆
民俗学 ???
★★★★☆ ★★★☆☆
ギャグ シリアス
★★★★☆ ★★★★☆
豆知識 パロディ
★★★★☆ ★★★☆☆
■5章は異世界でUMAネッシーを捜索!
「いや、いねぇだろ。
ほら、メカドラゴンの時に言われたろ。
ドラゴンはこの世界には存在しない。
恐竜みたいなモンスターもだ。
だから、ネッシーみたいな首長竜みたいなのも……」
「あ、そういうモンスターの噂、聞いたことありますよ。
ここからだいぶ東ですけど、マーメイドが住んでる湖に首長竜のUMAヨルムンガンドがいるって」
「……まじ?」
■幼馴染3人の幼稚園時代、オカルトとの出会い
『仕方ないわね~。付き合ってあげるわ~。
でも、ネッシーなんてほんとにいるの~?』
『いるもん!』
『けど、テレビのなかだろ?』
『イギリスのネスこにいるもん!』
『ネス湖までなんて私達行けるわけないわ~』
『い、いつかいけるもん! おとなになったらいける!』
■最新科学の環境DNA測定でUMAを一網打尽!
「環境DNA測定の結果が出た。
ビサヤ湖のものと同じ。
そしてある意味で、ネス湖とも同じだ。
この湖に、ヨルムンガンドと思われる生物が存在したDNAの痕跡は存在しない。
宣言しよう。ヨルムンガンドなどいない」
■しかしUMAの正体はいつだって……
「待てよ……待てって……じゃぁどうして、マーメイド達は……
アビヤさんは……そんな嘘なんかを……?」
「ユウキ。
日本の湖でネッシーのようなUMAが目撃されている場所は何箇所ある?」
「そ、そりゃ、浜名湖とか、屈斜路湖とか、たくさんあるが……おい、お前、まさか……」
「それら発見報告はすべて昭和のオカルトブームの時代以降に集中している。
目的は言うまでもない。湖の観光資源化だ。
いいか? ユウキ。覚えておけ」
――これがUMAの真の正体だ。UMAは人の心の中に居る。
6章「無限百物語編」
怪談 科学
★★★★★ ★★★☆☆
民俗学 ???
★☆☆☆☆ ★★★☆☆
ギャグ シリアス
★★★★☆ ★★★☆☆
豆知識 パロディ
★★☆☆☆ ★★★★★
■6章は終わらない百物語の世界へ
「98話目。赤信号の百鬼夜行、という怪談です。
ご清聴ありがとうございました」
会場に安堵のため息と拍手が響く中、吟遊詩人の堕天使ルチはふっとろうそくを吹き消した。
そしてにやりと笑って「あなた」を見る。
『百物語も残すところあと2話。
しかしまだまだ夜はこれからです。
大丈夫、今回もちゃんと章は4話と総集編+おまけで終わります。
どうぞ楽しんでいってください。
異世界オカルトチャンネル7、無限百物語編。
もう、はじまっていましたよ』
■98話から進めない! 有名怪談連発!
「いたた……やっべ、って、ここは……どこだ?」
そこはまるで、何も無いオフィスの中のような空間だった。
薄い黄色の壁。少し古いカーペット。
壁の隙間には扉もなく、その奥にはさらなる部屋が無尽蔵に繋がっている。
「おいおいおい! こいつぁまさか!」
周りには他の面々の姿はない。
まずは連絡をとるべきとスマフォを取り出す。
幸いにも電波は繋がっているようで一安心。
が、その瞬間。
がさりと背後で誰かの足音が響いた。
「サダコ姉か!?」
■事件の原因は少女の無意識下スーパーPSI?
(仮にルチさん本人に悪意がないにしても、むしろ動機以外の部分、本人に能動的に魔法を発動させる強い魔力が無いにしても。
魔法が……いや、ここで言うなら、超能力が、ESPが発動してしまうケースはある。
それが、ポルターガイスト現象とスーパーPSI仮説だ。
しかし、スーパーPSI仮説には大きな問題がある)
■無限ループの落ちはまさかまさかの……
「……あれ?」
しかし、キリヤはその講談という技を知っていた。
正確に言えば、その技が使用された時に発せられる「音」を知っていた。
以前にどこかで。どこかでその音を聞いたような……
「さて! 今宵長いながぁい夜、語って参りました百物語、百話のトリを飾りますは、恐ろしい堕天使の物語。
こいつを江留婦の騎士がエイヤッとやっつける、胸のすかっとするお話です」
7章「アトランティス滅亡の魔女編」
怪談 科学
★☆☆☆☆ ★★★★★
民俗学 ???
★★☆☆☆ ★★★★★
ギャグ シリアス
★★★★★ ★★☆☆☆
豆知識 パロディ
★★☆☆☆ ★★★★★
■7章は神々の大計画! 地中海の水全部抜いてみた!
「平和な世界、豊かな未来。
神々と魔法と錬金学が手を取り合い、子どもたちが飢えることのない安定した世界を目指します。
アトラントローパ計画。
現在急ピッチで進行中の本計画は、250万平方キロメートルの地中海の水をすべて抜き、この地を農耕可能な新たな大地とする大干拓事業です」
■天照大神と国譲り、魔女キルケーの島へ立退き要求!
「国譲りの交渉をお願いしたいのです。
早めに戻ってくだされば、交渉に失敗しても構いません。
お願いしたいのは、アイアイエー島。
オデュッセイアにて魔女キルケーが住んでいた島であり……アトラントローパ計画によって、干拓が予定されている区域です」
■魔女の技はカバラ数秘術? 頻度分析で暗号解読だ!
「簡単なことよワトソン君~。
このプログラムはね、縁起の悪い数字が出た時にそれに1を足してるのよ~。
だから4は全部5になるから出現頻度が倍になるし、今あげた数字の並びも出てこないってこと~」
「縁起の悪い数字だと? ということは、このプログラムに用いられているのは数字ではなく……」
■アトランティス爆破テロ! ビッグブリッヂを封鎖せよ!
「この橋はうちの担当です。
この下の三途ラインは閻魔大王の担当」
「緊急事態だぞ! 何を言っている!」
「封鎖するにはあと聖地巡礼路公団と、近隣のカルタゴ、サルデーニャ、シラクサへの通達もいる。
危機管理の事態が発生した場合、オリンポス危機管理会への通達も必要だ」
「ビッグブリッジ、封鎖できませぇん!」
「このゲートの裏でずっと待っていたぞ! ここを通らなかったらどうしようと不安になっていたところだ!」
「大天使ミカエル……!」
「行くぞ!」
8章「殺鬼人の陰謀編」
怪談 科学
★☆☆☆☆ ★☆☆☆☆
民俗学 ???
★★★★★ ★★☆☆☆
ギャグ シリアス
★★☆☆☆ ★★★★★
豆知識 パロディ
★★★★★ ★★☆☆☆
■8章ではゴブリン達を虐殺する殺人鬼ならぬ殺鬼人が……
「つまり、報告がされている時点でゴブリンスレイヤーズさんは騎士として無能。
その話にある、冷徹かつ効率的にすべてのゴブリンを殺戮する姿とイメージが重なりません」
「それに、報告にはゴブリンからの物も多い。
これ、それに、これもだ。
キリヤさんの言う通り、ゴブリンを皆殺しにするという信念がデータからは感じられない」
「警察署の方でも、そんな事件の記録は残ってなかった」
「だろうな。
ここは異世界、なんでもありだから一応と思ったが、案の定杞憂だったか」
「これでほぼ確定だな。
ゴブリンスレイヤーズはただの都市伝説。
実在する殺鬼人じゃない、と」
■ただの作り話、噂話、都市伝説だったはずなのに
『奥さん、聞きました?』
『聞いた聞いた! 怖いわねぇ』
『さっき、ゴブリンスレイヤーズが出たらしいぞ!』
『あぁ! 聞いた! 全身鎧の集団を見たって!』
『体格からしてエルフか人間だが……』
『エルフとは考えにくいな。つまり』
『俺の職場、上司が人間なんだ』
『早く転職した方がいいぞ』
『何故神々も警察も人間を逮捕しないんだ』
『お前、この街の議会の第一党の名前を知らないのか?』
『無惨に殺される前に行動した方がいい』
『やつらが異人種を殺すやり方はあまりに残虐だ』
■陰謀論になす術もなく完全敗北胸糞バッドエンドか?
「そうだ。楽しむべきオカルトや都市伝説を政治に利用し、人同士の対立を煽り、陰謀論に作り変える存在」
「陰謀論者」
「本当に陰謀論者の特定はできないんですか?」
「難しいな。
全体における陰謀論者の役割はごく一握りだし、噂の成長に与える影響も大きくない。
なにより、既に今回のバケモノは完成している。
今更特定ができても後の祭りだ」
「現実的に言って陰謀論を食い止めるために陰謀論者を見つけて叩くやり方は、それ自体が陰謀論になりかねない。
最も効果的な対策は2番目の人達、善意ある優しい人達に情報との関わり方を学ばせることだが、これが難しいことは僕達がよく知っている。
僕達の世界はオルコットンよりも科学が発展し教育も一般化しているはずなのに、この啓蒙が全く進まないんだ」
「そうね。もはやこれは、自然災害よ。
私達は私達のできることで被害を最小限に食い止める他ない」
■これがヒロインの姿か? 扱いはさらに雑に
「なるほど。それで今回も私なんですね」
「あぁ。まだご飯粒が乾いてないから動けない」
「今のうちに油性ペンで額に肉とか書いてもいいですか?」
「構わん」
「ありがとうございます」
きゅっきゅっ……
「よし」
「君、字うまいな」
「MS ゴシックです」
「下の方にもなんか書くか?
ふとももに正ってたくさん書いたり、お腹に肉便器って書いてもいいぞ」
9章「ゾンビ籠城戦編」
怪談 科学
★★★☆☆ ★★☆☆☆
民俗学 ???
★★☆☆☆ ★★★★★
ギャグ シリアス
★★★★☆ ★★★☆☆
豆知識 パロディ
★★★★★ ★★☆☆☆
■異世界最強種族、無限湧きするゾンビの攻勢を凌げる城はあるのか?
「だからずっとゾンビは怖いって言ってたじゃないですか!」
「つまり、ゾンビとの戦闘では1週間の間、フレンドリーファイア以外で死者が出ないということ。
ある意味で言えばナワバリバトル以上に安全。
それでかつての戦争をそのまま再現できるのでは?」
「世界で2番目に強い種族の城を見たいか~~ッ!」
――オーーーーー!!!!
「私もよ~! 私もよみんな~!! 種族入場~!!!」
「全種族入場です!!!!」
■ファンタジーでお馴染みのヨーロッパの城の意外な弱点とは?
「ゴシック建築は主の偉大さの象徴でもある。
尖塔アーチと飛び梁が大きな特徴だな。
とにかく見た目の美しさを何より重要視している」
「なるほど。機能性はどうなのでしょうか?」
「もちろんだ。見給えこの美しさを!」
「なるほど、凄いですね……ん、なんか変な匂いがしませんか?」
「あぁ、ハーブの香りは苦手かな? 少々匂いがきついものが使用されている」
「……いやでもちょっと変な匂いがするような……あと、少し寒いですね。
うぅ、薄着で来ちゃったかなぁ」
「暖炉とかはないんですか?」
「あるのは上層階だけだな。
煙が充満してしまう」
「夜暗くありませんか?」
「何も見えなくなるな。
まぁ、早く寝てしまえばいいだけだ問題ない」
「普段城内に暮らすものが食べるものと同じ豪華な食事を用意したぞ。
市井に暮らす堕天使にはお目にかかれない食材だろう?」
「そ、そうですね……ここまで傷んでるとうちの酒場では処分しちゃいますから……」
「流石にこんなところで漏らしたくないです!
トイレ! トイレ!
こんなに広いのになんでトイレが全然ないんですか!?」
■買収! 水責め! 土竜攻め! 次々蹂躙されていく堅牢な城!
「あーーーっと!! ワーウルフが!!
4名のワーウルフがゾンビから賄賂を受け取っています!!」
「完全に買収されていますね。
流石傭兵を生業とする種族ワーウルフです。
カネの切れ目が縁の切れ目。
傭兵は故あらば裏切ります。
これはもうダメですね」
「一体どういった経緯でギブアップを!?」
『実は……ゾンビたちに水責めをしかけられたのです』
「なんですって!? ゾンビが水責めを!?」
「侵入! ゾンビが侵入―!」
「バカな! 城壁も城門も抜かれていないぞ! どこから入りこんだ!?」
「それが……!」
「ち……地下を掘って侵入されただとぉ!?」
「部隊最強の戦力を最後尾に配置し、死ぬまで戦い続ける!
えぇ、死ぬまでです!
私はもう生きて帰ることはありません!
その覚悟の下で私はここで座禅の陣を敷く!
そして私は、本来よりも長くの時間を生きるのです!
1分1秒でも長く時間を稼ぎ、味方の命を繋ぐ!
1人の人生なんてせいぜい1万2000年くらいでしょう!
しかし、100人の人生は120万年です!
故に私の命は、100倍になる!
これが『1つの森』に生きるということ!
これが! これこそがエルフの騎士です!
騎士道とは、死ぬことと見つけたり!」
■姫路城が防御最強と言われた秘密とは!?
「藁をつめ! 燃やしちまっ……うげっぇ!」
ゾンビの頭に矢が突き刺さる。
気付けば周囲の城壁には小さい穴が空いており、そこから矢がゾンビ達を狙っているのだ!
この小さな穴こそが、狭間である!
「やってくれるねぇ!」
「外堀を超えて三ノ丸を抜け菱の門にまで辿り着く過程で姫路城天守閣はどんどん近くなり、敵はもう7割は攻略に成功したと勘違いします。
しかしここからが本番。
天守閣に至るルートは1本道ながら曲がりくねっています。
門の枚数は合計11枚。
さらにはここからは櫓に加え狭間による矢の雨を受けながらの攻城戦です。
櫓はまだ敵の姿が見える分で矢が飛んでくるタイミングもわかるでしょう。
しかし狭間は敵の姿が見えない。
その上降り注ぐ矢は散発的なものでなく、指揮官の号令で一斉に放たれます。
矢が風を斬る音が聞こえた刹那、大勢が倒れていく。
これこそが本物の恐怖です」
『いい調子だよ! あと何枚あるか知らんがせいぜいあと4~5枚だろう!
この調子で……っ!?』
ゾンビたちの足が、止まる。
『な、なんだい……なんだいこの門の場所は!?』
姫路城、水三門。
「ここが最大の難所にして姫路城の地獄。
四方を狭間で囲まれた、絶望の門です」
『この姫路城なら、勝てる!』
10章「錬金科学編」
怪談 科学
★☆☆☆☆ ★★★★★
民俗学 ???
★★★☆☆ ★☆☆☆☆
ギャグ シリアス
★★★★☆ ★★★★☆
豆知識 パロディ
★★★★★ ★★☆☆☆
■科学の徒なのに1人だけパラレルワールドへ!?
「まさか!」
外へ飛び出すヨッシー。
そこは確かにイェール・カーンなのだが、どうにも町並みが新しい。
家賃の安さで選んだここは、旧市街でもう少し廃れていたはず。
なのに目の前の通りは活気に満ち、朝市が出ている始末だ。
「ここは……どこだ?」
恐る恐る振り向くと、拠点の前には1枚の看板が。
――Y&Y錬金術工房
ヨッシーの腕が頭に伸びる。
感覚は本物だ。つまりこれは……
「何寝ぼけてんだよ。ほら仕事進めるぞ。
折角早起きしたんだ、三文くらいは得しようぜ」
そう言って大釜の火を入れるユウキ。
いや、ユウキに似たユウキではない誰か。
もはや疑いようがない。
ここは過去、もしくは平行世界。
そして……
「まさか、この僕が……錬金術師だというのか?」
■戦争を終わらせ元の世界に帰る決意を固めるが……
「僕は戦争の醜さを知った。
あんな地獄がこの世にあっていいはずがない。
もはや世界の重なりを証明し、戦争を終わらせるしかない。
それが科学に命を捧げた者の宿命だ。
たとえこの世界が並行世界でしかないとしても、僕は科学の力で人の命を救って見せる!」
(あぁ……やはり、ヨッシーさんは……)
な ん て 愚 か な ん だ !
「だが君は自分と約束をした!
世界の重なりを証明し、戦争を終わらせると!
君がその自分との約束を破ることはつまり、君が何よりも大切にした科学を裏切るということだ!
さぁ、知恵の実はうまかったろう? 人間。
だが私は堕天してなお誰よりも主の御心に忠実だ。
そんなもの、食べてはならんのだ。故に……!」
――知恵の実を吐き出せ!! 科学を、好奇心を捨てろ!! 人間!!
■謎の鍵は量子力学! しかしそれを解くことは……
「お前の言いたいことって、ようするにさ。
箱の中に閉じ込めた猫が死ぬかもしれない装置があって、箱を開けるまで猫の生死はわからないから、この箱の中には生きた猫と死んだ猫が同時に存在してるってことだろ?
そんなんありえねーだろ」
「シュレーディンガーの猫か……」
・シュレーディンガーの猫
量子力学の基礎となる思考実験。
後に量子力学の基礎理論となるシュレーディンガー方程式とあわせて、提唱者のエルヴィン・シュレーディンガー(1887~1961)は量子力学の専門家という印象を持たれがちだが、これは完全な誤解である。
彼は今のユウキのように量子力学のありえなさを否定するため「そんなことはありえないだろう」としてシュレーディンガーの猫の思考実験を口に出した。
彼は量子力学否定派の先頭に立っていたのだ。
しかし最終的に彼の研究は量子力学の基礎理論となり、シュレーディンガーの猫の逸話もシュレーディンガーが量子力学の不思議さをわかりやすく説明するために考えた例え話だという誤解が広まってしまった。
(僕はニールス・ボーアの末路を知っている……あまりにも、あまりにも悲しい結末だ。
だがそれでも。そうだとしても!)
――僕が正しい。
「実験を続けよう。
このベルの不等式を破ればすべてが終わる。
実験だけが僕の正しさを証明してくれる」
こうしてヨッシーは、2つ目のハードルもクリアした。
異世界における量子力学の基礎理論証明。
それは、親友との決別を意味していた。
――悪い。少し頭冷やしてくる。
夕方。工房に残されていた置き手紙を、彼は無言で握りつぶした。
■禁忌を犯した異端者に裁きを!
♪異端者を出して~異端者を出して~ふふふん~♪
「まさか……! いや、正直……予想はできていた!」
ドンドンとドアから音が響く。
それは嵐の夜に魔王が子供を攫う音。
♪異端者を出して~異端者を出して~あと拷問させて~♪
「正直予想してたがその役にだけは絶対居て欲しくなかった!!
もしくは単純にフレイルをフルスイングして扉を破壊する音である!
「……わかった。取引をしよう」
「え~? でも私、偉大なる主への信仰で神官やってるので、お金とかはいりませんけど~?」
「どぎつい拷問をしても問題ない少女を引き渡そう」
「私達今から友達ね」
「犯罪者だーーーー!! 教会の人早く来てくれーーーー!」
「……あ、そういえば、異端者さんのお仕事は~」
「そうだ。僕は……錬金術師だ」
そういってヨッシーは本棚から一冊の本を取り出した。
ここまでうまく行かない天体観測や親友との対立のストレスを紛らわせるために読んでいたこの世界の魔法錬金術の教本。
その中でも、この本のタイトルはDe Natura Rerum『物の本性について』、著者の名は、錬金術師パラケルスス。
そこに書かれているのは……
「ホムンクルスを作ろう」
■気になる章だけ読んでもOK!
さぁ、異世界のオカルトを解き明かそう!




