46-3:日本人なら誰でもできる戦闘火器管制を実演してみた!
「いや待てよ!
この世界には平気で宇宙人がいるし、UFOも居るだろ!
隠すことなんて……」
「無数にあるに決まっているだろ。
平和な日本で暮らしているとイメージしにくいが、海外の電話ボックスには警察・消防・救急のダイヤルの下に平然とスパイ報告用ダイヤルが記載されている。
ステルス戦闘機もレールガンも当然存在しておりそれは少し軍事に詳しい者なら誰でも知っていることだ。
だが、そこに隠さねばならない秘密があることも当然だ。
そういうことだよ」
「つーかなんでお前はんなこと知ってんだよ!
そんな面白いことならもっと早く俺達にも話せよ!」
「3人まとめて記憶処理されるのは避けたかったからな。
サダコ姉は言わずとも気付いていたようだが。
こないだ僕がわざわざ休日を取って1人で鬼ヶ島原子力発電所にUAP撮影に行こうとしたのもそういう理由だ」
そんな剣呑な会話をしつつブリッジに通じるメインシャフト入った2人を待っていたのは。
「じゃ~ん」
何故かノリノリの痴女と。
「うぅ……恥ずかしい……」
明らかにいつものビキニアーマーの方が露出の多いエルフだった。
「もうお前らが何のコスプレをしようが別に構わん。
ナイノメ! なんなんだ奴等は!」
「神々が高次元生命体であることは察している。
だが奴等は大天使とは違う。
おそらくあのエージェントはこの世界の住人ではなく、神々と同じ高次元生命体のはずだ」
「その予想だと部分点しか上げられないわ。
黒いスーツってあたりから気付かない?」
「赤の神々と黒の神々……
奴等は、お前たちと同じ外なる神々の一派ということか?」
「満点正解」
ため息をつきつつも理解できた様子のヨッシーと、なんのことだかさっぱりのユウキ。
「赤の神々はただのペットとしてコントロールのしやすい善ベースの人類を作った。
その設計思想と運用目的を考えれば、別に彼らは人類に情報検閲を行う必要も意味もない。
しかし、黒の神々がシミュレーション実験として悪ベースの人類を作ったのなら、時として検閲を伴う介入が必要になるということか」
「そういうこと。
そして私達も一枚岩ではないの」
その解説でユウキも納得する。
そして改めて、地球人が黒の宇宙人に作られた存在であることも予期するのだが、それはここでは口に出さない。
「まぁ戦争なんてのはそんなもんだろ。
どうせお前が無茶をやらかしたもんで、上からも尻尾切りされたってとこなんじゃねぇの?」
「違うわと言いたいわね」
「言葉の表現って面白いわね~」
ため息をつきつつ壁際のコンソールを操作するナイノメ。
すると、突然メインシャフトが斜め20度傾いた。
「少し傾いてないか?」
「そりゃシャフトですもの。傾きもするわ」
「シャフト違いじゃねぇの?」
傾いたまま上昇していくメインシャフト内エレベーター。
まもなくドアが開き、メインブリッジに出る。
「前と随分見た目が変わったな」
「N-アルゴー号は今から2000年は前の船よ。
その技術も3世代は前の物になる。
改めて最新技術で作り変えたわ」
「そういう話聞くたびに思うんだが、絶対にゼロから作った方がコストも安く抑えられるのよな」
「ロマンのないことを言わないでちょうだい~」
「私からもそうだそうだと言います!」
このごますりゴールデンレトリバーが。
「姐さん。成層圏上に」
「メインモニターに出して」
クルーに指示を伝えるナイノメ。
天井のモニターに、三角形のUAPが映された。
「こちらに気付いたわね」
放たれる光弾。
再建されたばかりのビッグブリッヂがまたしても破壊されてしまう。
大天使達がスクランブルに動くが、所詮はこの世界の人類。
技術レベルが違う故、成層圏に攻撃出来る手段は限られている。
「姐さん! 補助エンジンの出力が99%から上がりません!」
「始動回路受け付けません!」
「ほらみろだからゼロから作った方がいい」
「補助エンジンが動かないんじゃ、弱すぎてなんで絶滅してないのか意味不明な珍獣と呼ばれる鈍臭いし肉は硬くて臭いしちんちんだけやたらでかいへなちょこマスコットのタヌキね。瀕死状態の」
「タヌキへの風当たりが強すぎる!」
ともあれ混乱していてのも最初だけ。
「補助エンジンチェック完了。
エネルギー充填100%」
「回路よし。始動シリンダー準備よろし」
改めて順調に進んだ報告を聞くナイノメ。
ゆっくりと落ち着いて瞳を閉じて息を吐き。
そして改めて大きく目を見開く。
「総員配置につきなさい!
補助エンジン始動5秒前!
砲雷撃戦用意!
重動力線コンタクト!
メインエネルギースイッチオン!
傾斜復元! 船体起こしなさい!」
「船体起こせー!」
「補助エンジン、両舷全速!
取り舵いっぱい!」
揺れるメインブリッジ。
船が動き出していく。
「昇平丸、発進です!」
「何その名前!?」
「ナイノメさんがつけていいって言いました!
この船はこれより薩摩所属の昇平丸です!
生まれ変わった姿です!」
「松前沖で座礁遭難しそうな名前つけやがって!
昇平丸慰霊碑って心霊スポットになってなかったか!?」
「ユウキ、戦闘部門を助けて。
ヨッシーはパイロットの席へ。
この船はまだ作業員しかいないのよ」
「なんで俺達にできると思ってんのこいつ?」
「だからただの動画配信者だって言ってるだろ」
「私やりたい! 私やります!」
「バカにやらせるよりマシか」
「そんなー!」
擬装が解かれていき、表面汚し加工のパテが剥がれていく。
甲板の上からは酒瓶が転がり落ち、ポケカが風に吹き飛んでいった。
反重力機能なのか空中に浮かび上がる船体。
「出力100%、動力伝達」
「そこのセリフ120%じゃねぇの?」
「そういうものだとわかりつつもここだけは我慢ならん」
「目標はUAPよ。
主砲全自動射撃!」
「距離12万! 上下角45度!
降下速度秒速1000km!」
「えーと、各砲連動、仰角9時から9時5分へ。
自動追尾セット20、45。
ほらよ、スイッチ渡すぜ」
「なんでユウキさんはただの動画配信者なのに火器管制ができてるんですか?」
「私達は親と子の世代通してこのシーンに脳を焼かれてるからセリフが暗唱できるのよ~。
だいたいの日本人は宇宙戦艦の火器管制ができるし、独裁者の弟が死んだ時にプロパガンダ演説ができるし、宇宙人として身バレした時にもキラキラした光をバックに恋人に事情を説明できるのよ~」
「なるほど。そういうものなんですね」
そんなわけあるか。少なくともZ世代は無理だ。
「む。第三砲塔0.2秒遅れてますよ。
しっかりしてくださいね。
訓練と同じだから慌てないで」
「訓練なんかやってねぇんだよ!
むしろ0.2秒の遅れでやってることを褒めろよ!」
必死の突っ込みもスルーされ、改めてスイッチに力を込めるナイノメ。
「全員ショックに備えなさい! 発射!」
こうして一同はもう引き返せないところまで来てしまうのだった。
ノリと勢いだけで行動してしまった動画配信者の明日はどっちだ。
宇宙滅亡の日まであと111万4710日。
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
「西暦1854年。
宇宙戦艦昇平丸は全攘夷派の期待を担って遥かなる旅へと飛び立った。
昇平丸には愛があった。
青春の姿があった。
侍の持つ優しさを、勇気を、感動を教えてくれた。
壮大な幕末浪漫!
蘇る鮮やかな感動!
SYAKUDAIのプラモデル、宇宙戦艦昇平丸!」
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
「あれがルルイエの半分よ」
「もう半分はまだ海の底か?」
「いえ、衛星軌道上にあるわ」
――このチャンネルは。
「黒騎士衛星……」
「ただの宇宙ゴミじゃなかったのか!?」
「黒軍の名は伊達じゃないのね~」
ゼウス
オーディン
イシュタル
「あなた達が好きになった。そう言ったら信じてくれるかしら?」
「信じられんな。だが、信じてもいいな」
「後先考えずに楽しむあたり、似た者同士だったのかもね~」
天照大神
ポセイドン
イルルヤンカシュ
「やっぱり奇跡は起きなかったわね~」
「土下座したら天照大神許してくれるかな?」
「案外後悔していないのが不思議だな」
――ご覧の神々の提供でお送りします
「いいえ! 奇跡は起きます! 起こしてみせます!」
「さよならは言わないわよ、キリヤちゃん」
「ごめんなさいお姉様! もう会えません!」
――異世界オカルトチャンネル7! ~空想魔撮シリーズ~
「エルフの、勇者……とはね」
――この後すぐ! 衝撃の結末を見逃すな!
「…………」
――キンッ!
「…………」
――キンッ!
「…………」
――キンッ!
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――キンッ!
「……男は黙って、黒ラベル」
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※いいね条件付が強化されると実験に使用しているゴールデンレトリバー(上写真)が賢くなります。
※過度な餌付けはご遠慮ください。
挿絵にはPixAI、Harukaを使用しています。