45-3:黒の反対は白ではなく別の色! 比較民俗学で解説してみた!
ともあれ、この宇宙が神々によって作られた仮想世界であるという事実を完全に受け入れはしないまでもある程度に納得を得たところで。
「それで、外なる神々なのね~」
「内か外かなど視点の問題でしかないわ。
宇宙では私達を、黒の神々と呼ぶの」
「なんともに二元論的な考え方ね~。
じゃ、いつもの私達が知る神々は白の神々かしら~?」
「シロって何?」
「え?」
ぽかんとするサダコ姉を前に再び頭を抱えるヨッシー。
「くそっ。宇宙人に色を説明する難易度は考えたくない」
「難しいことはわかった」
「ちなみに右を説明するのも難しい」
「意外とそういう単純なことが一番難しかったりするんだな」
このあたりは非常に理系な話になってしまうので、ガチ理系を自称する視聴者だけ「宇宙人に右を説明する方法」とかで検索してもらいたい。
おそらく後半になるに従い理解不能な内容になるはずなので、「とてもむずかしい」とだけ理解すれば良いだろう。
「ちょ、ちょっと待ってね~。
なら、もしかして~、もしかしてなんだけど~……
私達の知る神々って、赤の神々なの~?」
「そうよ」
「きゃ~~!! テンション上がって来たわ~~!!」
一人盛り上がるサダコ姉に嫌な予感を感じ、難しい話を無視するアホ面モードを解除して距離を取るキリヤ。
その判断は正しいかもしれないが、今この瞬間はただの杞憂だろう。
サダコ姉のテンションが上がるケースは2つ。
1つは自分の性癖に通じるえっちなこと。
そしてもう1つは、極めて民俗学的でアカデミックなことである。
「黒の反対って赤なんか?」
「少なくとも日本ではそうよ~。
というか、黒の反対が白だなんていうのはヨーロッパだけだし、そう考えた理由もヨーロッパに住んでいたのが白人種族で、地中海を挟んだ外に黒人種族が住んでいて、自分達が正義で向こうは悪と考えただけっていうわりと最悪な理由でその概念に至ったという説があるのよ~」
諸説ある。
「まぁその言及はほどほどにしてもらいたいんだが、ならどうして黒の反対は赤なんだ?」
「なら4つの理由から説明しようかしら~。
1つ目は人間の色を認識する仕組みからの説明ね~。
赤ちゃんが生まれて最初に認識する色ってなにか知ってる~?」
「俺は知らんが、もしかして」
「赤だな」
「その通り~。
では、死にゆく人間が最後に認識する色は~?」
「死の瞬間は目を閉じるだろうから、黒になるのか」
「そうよ~。
つまり、赤は誕生で、黒は死を意味するの~」
そんな様子に口を挟むことなく楽しそうに見守るナイノメ。
彼女もどうやら楽しみ方がわかってきたらしい。
「確かに、人を斬って流れる血は赤いですけど、少し経つと黒くなります!」
「それは違うんじゃないかしら~?」
人斬りがこんなにバカで本当にいいのか?
「2つ目の理由は太陽の色ね~。
何色かしら~?」
「白に見えるが、絵では赤で描かれることが多いな。
日本の国旗も赤い丸だ」
「それで夜はそのまま黒になると。
昼と夜の対峙か」
「まぁ太陽の色を赤と見るのは文化によるんだけど、日本とエジプトみたいに神話の主神が太陽神になる文化圏ではほぼ確実に赤と見ているという面白い特徴があるわ~」
「あ、それちょっと面白そうです! 民俗学ですね!」
怪談・科学・民俗学というマトリクスにおいて、キリヤは民俗学寄りである。
まぁ、実のところヨッシーは友情補正で怪談寄りだし、ユウキはユウキで科学寄りなのである意味でバランスが取れているのかもしれない。
「3つ目からは実生活での証拠ね~。
トイレのマーク、男と女の色は~?」
「黒と赤」
「トランプのスートは~?」
「黒と赤」
「ランドセルの色は~?」
「水色! 水色がいいです!」
「そこは空気読めよお前」
これでエルフの数え年で1万2000歳。
地球人換算で21歳なのだからもう終わりだ。
むしろその年齢設定自体が、いざという時にえっちな目にあわせても許されるためという確信犯に感じる。
キリヤに勉学を教えたのはプリング師匠で学校に通ったことはないはずだが、もしも通っていたのならこいつはヤツマ商科大学に通い留年5年目だったりするのだろう。(通称:やつましょーの5年生)
ソフ倫の人、早く来てくれ。
「4つ目は言語から~。
黒の語源はなんだと思う~?」
「なんだ……くろい……KURO……KUR……
あ、もしかして『くらい』か?」
「正解~。
ならもう赤の語源もわかるでしょ~?」
「『あかるい』なのか。なるほどな」
「ね~? 実は黒の反対って赤なのよ~。
RGBとかCMYKなんて概念が生まれる前、人間は直感的に黒と赤を対抗存在と見ていたわけ~。
これを世界全体の比較民俗学で見ていくとめちゃくちゃ面白いのよ~」
「確かに面白そうだな」
「じゃぁ白の反対はなんなんだ?」
「灰色よ~」
「なんで?」
「多分直感的な理解が難しいしそれほど面白くもないと思うから説明は省くわ~」
と、話が一区切りしたとこで拍手をするナイノメ。
「流石ね。聞いていてとても楽しかったわ」
「それはどうも」
「改めてあなた達には答えを教えるべきじゃないとわかったわね。
私ができるお手伝いもあまりないみたい」
「頼むから何もしないでくれ」
「ということで本題なんだけど」
「あ、やっぱりちゃんとした目的があったのね~。
なにかしら~?」
ごほん、とわざとらしい咳払いを挟んでから。
「このままだとルルイエはまた沈むし私達も皆殺しにされるの。助けて」
「「断る」」「断るわ~」「お断りです!」
異世界オカルトチャンネル7! 第12章、外なる邪神編(後)異世界・イン・ブラック、完!




