45-2:宇宙創生の成り立ちに迫ってみた!
「な、なんでここにお前が!?」
「今はルルイエを浮上させてのティタノマキアの最中ではないのか!?」
「分霊にまかせて来たわ。
あなた達と居た方が楽しそうだし」
「真面目に働きなさいよ~!?
ナイの目なんでしょ~!?
い、いえ、働いて貰わない方がむしろいいのかしら~……」
思わずサダコ姉すらも突っ込みに回ってしまう狂気。
しかしキリヤだけは冷めた目で手を腰に回す、が。
「抜かない方がいいわよ、それ。忘れないで。
タルカコが放射線を吸収する性質を持っていたからこそ抜けた剣だし、あなたも含めて無事で済んだ。
今ここで抜いたら全員被ばくするわよ」
「ひばく?」
「その剣はもう返しなさい!」
「ペッしろ! ペッ!」
こうして物凄く後ろ髪を引かれつつも活火山杖を返却するキリヤ。
「むしろもう1つ回収してもらいたいものがあるんですけど……」
「エルフロボは安全よ。
動力の半分は縮退炉だし」
「ブラックホールエンジンのどこが安全だか言ってみろよ!
いつバニシングトルーパーになるかわからんぞ!
つーか、あれ、あのトンチキな見た目でそんなもんで動いてんのか!?」
「ちなみにもう半分はHEE粒子よ」
「HEE粒子?」
「ハイ・エルフ・エロ粒子よ」
「今すぐ関係各所に土下座して回れ!」
「本当に頭がどうかしています!
まだお腹の中に違和感があるんですよ!」
「大丈夫よ。乙女座外縁部絶対防衛戦は破れていない」
「いい加減にしろR-15タグをつけてないんだぞ!」
「セルフレーティングに意味なんかないわ」
最悪だよこの異世界。
「……ならせめてエルフロボじゃなくてもうちょっとかっこいい名前つけません?」
「妥協点はそこでいいのかしら?」
「あ、キリヤ。それはダメだ。
あれはエルフロボだ」
「なんでそこはダメなんです?
ユウキさんもかっこいい名前の方が良くないですか?」
「エルフ+ロボの安直すぎる名前は元ネタに忠実なんだ」
「知りませんよ! もう休ませてください!」
と、一連のトンチキを出し切ったところで……
いや、本当に出し切ったのか? 本当に?
「それで~? 目的は~?」
「だからただ遊びに来ただけよ」
「なら神々は、おそらく最高指揮官であるあなたが遊べてしまえるような事態を前にティタノマキアを宣言したことになっちゃうんだけど~」
「ティタノマキアの宣言はルルイエの浮上がただ世界を崩壊させてしまうだけに等しいからだけじゃないわ」
「世界の崩壊を些事みたいに言われても困るんだけど~。
それより大きな問題があるのかしら~?」
「そうね。これは箱庭の中の陣取りゲームじゃない。
今も宇宙の各所で発生している、種族間紛争なのよ」
その言葉に絶句するサダコ姉。
一方のヨッシーはやれやれとため息をつく。
「つまり、150年前までの大戦争はただの仲間内の陣取りゲーム。
元から仲の良い神々が自ら創造したキャラクターコマである人類を用いて遊んでいただけ。
しかし、ルルイエとの戦いはそんな神々と対立する別の同列存在、外なる神々との戦争ということか」
「そういうことね」
「どういうことだよ!?」
いろいろと腑に落ちた顔のヨッシーに食いつくユウキ。
「例えばだ。お前がハイキングをしているとしよう。
山道にふとスマートフォンが落ちていた。
どう思う?」
「誰かの落とし物だろうよ。
拾うとホラーが始まりそうだからスルーするが」
「自然環境の中で偶然スマートフォンが組み上がる可能性はゼロではない」
「いや、ないだろ」
「川沿いでスマホに似た形の石が落ちていることはある」
「そのくらいならある」
「吹き飛ばされた砂が土に突き刺さることもある」
「まぁあるだろう」
「ならばスマホの外角のした石が落ちていて、そこに各種基盤の形の金属が突き刺さって、最後にガラスが嵌まってスマホになる可能性はゼロではない」
「そりゃ理屈で言えばそうなんだろうが、スマホみたいな複雑な機械が自然に組み上がる可能性なんてゼロに等しい」
「そうだな。
それはこの宇宙に人類が存在する可能性にほぼ等しい」
「あぁ、まぁ、人間というか生命自体がそういう奇跡みたいな確率で生まれたというのはよく聞く話だが……」
意図を理解したユウキもため息をつき。
「だから科学者はみんな神を信じてるのか」
「そうだな。
量子力学の基本原則がありえないとか以前に、今ここに自分が存在していることが一番ありえないんだ。
宇宙が無限に広がるのならそんな奇跡が起きることも可能性としては現実的だ。
しかし宇宙の広がりは無限ではない。
ビッグバンとビッグクランチを無限に繰り返す時間軸の広がりを加えれば事実上無限かもしれないがな」
宇宙はビッグバンと呼ばれる爆発によって始まり今も膨張を続けているというのは今ではよく知られた事実だが、この膨張はやがて止まり、そこからは収縮に転じるとされている。
そして最小サイズまで宇宙が収縮してしまう宇宙の終わりをビッグクランチと呼び、現在予測されている宇宙終焉の1つのパターンである。
膨らんだ風船から空気が抜けていくと考えるとわかりやすい。
そして、しぼんだ風船は再びビッグバンによって膨らみだすという仕組みだ。
ちなみに、膨らんだ風船が破裂してしまうパターンも考えられており、これをビッグリップと呼ぶ。
このように、ビッグバンの以前にはビッグクランチの宇宙があったとする学説は一定の信憑性で評価されているが、ではさらにその前、その前、その前……
つまり、最初のビッグバンの前に何があったのかという問いに関してはSF以外で答えが出ていない。
「ならばもう、神々が人類を創造したと考える方が簡単になるのね~」
「そうだな。
そして2025年現在でも人類は世界を作ることができている。
VRメタバースは1つの宇宙であるし、シミュレーションゲームのAIはその世界の住人だ。
今現在トロフィーコンプリート目指して遊んでいるCiv7にしても、ゲームスタートと同時に操作国以外の人類が創生されているとも言えるだろう。
初代Civから比べれば7のAIはかなり賢くなったし、インターフェイスもリアルになった。
こうして進化を続けていく現実を見れば、この世界がCiv100の世界で僕らがその世界のひとつの文明のひとつのキャラクターに過ぎないことを否定はできないだろう」
「だがそれは禁じ手だろうが。
それを認めれば、ほとんどの怪談に答えが出てしまう。
意味不明な怪談の数々が、ただのゲームのバグで話がつくんだよ。
壁を抜ける幽霊だってただの壁抜けバグだ」
「それは僕は量子力学のトンネル効果だと思うんだが……
まぁそこは今話すと長くなるからやめておこう」




