【特報】第11章予告編
■異世界オカルトチャンネル7! チャンネル登録者数10億突破!
「どうした? なんか気に入らんのか?」
「いや、ぶっちゃけもう帰る必要ないんじゃないかな~って」
「まぁ……確かにそろそろ異世界スローライフの良さが理解できてきているのはある」
「間違いは起きる。争いも起きる。
それはこちらでも同じだ。
しかし、この世界では争いが連鎖せず、誰もが過去を許せる精神性を持っている。
それこそが、この世界に悪党がいない理由なのだろうな」
「許すのって難しいもんなぁ。
歴史を勉強してるとずっとそう思うぜ」
「そうよね~。
だから私はこの異世界が好きになってるのよ~。
このままこの世界で活動して、もっと誤解を消していきたいのよ~」
「なるほどな……」
「サダコ姉にしてはまともなことを言うな。
だが確かに、それは人を苦しめたりただ恐怖させるだけのオカルトを暴きたいという、僕達のチャンネルの理念とも一致している」
「そういうことなら私は当然協力します!
私だって異世界オカルトチャンネルの仲間ですから!
きっと、今日ここに集まったみなさんも同じです!」
■しかしこの異世界にも2人の『悪』は存在している!
「2人うちの片方は悪神ロキ。
奴は自分の享楽のためだけに行動する純粋な悪だ。
利用できるうちは頼りになるが、ほんの気まぐれで裏切ってくる。
私もミカエルに偽の聖剣を握らせた後は奴との関与を避けてきた。
まぁ、仮にも神の一柱だ。
遭遇することはまずないと思うが、もしも絡まれたらすぐに神々の助けを求めるべきだ」
「なるほど。
神話のトリックスターは伊達じゃない」
「というかむしろ、神々まで範囲を広げてもロキしか純粋な悪党がいないのな」
「神話の悪神なんていくらでも思いつくけど、それは所詮片方から見た悪ということね~」
「それで、そのロキと双璧を張るもう1人の悪党は誰なんだ?」
その問いに数秒の間があき、全員の声が重なった。
――傾国の九尾、ナイノメ
「しかし蜜月はいつまでも続きません。
幸福の絶頂に至る直前。
あと一歩で目的が完全達成されるその瞬間に。
ナイノメは正体を表し、すべてを台無しにします」
「どうしてです!? あっ! ていうか私のネオ・カゴシマ!!」
「だが、奴の行動はそうパターン化されている。
もはや『そういう癖』としか言いようがない。
こうしてすべては絶頂と同意に破滅を迎える。
後に残るのは絶望と、ナイノメの悪名だけだ」
「なんてやつだ……」
■広告案件! 商品はカワイイペット? それとも非常食!?
「野菜の芯を小皿にとりわけ、水をやるとまた芽が出て食べられるケースがあるでしょう?」
「あ、あぁ。豆苗とか4回くらい食えるよな……」
「タルカコも同じです。
すべての足を食べてしまっても、水を与えれば1週間で再生し、また食べられます」
「餌は必要ないんですか?」
「水だけで問題ありません。
雨水や泥水でも問題ありません」
「食糧危機が聞いて呆れるな……」
「そうですね。
しかもタルカコの場合は単なる食料ではありません。
タルカコは……」
「きゅっきゅ!」
「カワイイのです」
「多くの動物はカワイイによって擬態し、人間を騙している。
猫はその代表例だ。
彼等は自身の赤ん坊を守るためにプログラムされたカワイイテンプレートを利用しているのだ。
このような合理的進化を遂げた動物のカワイイから、僕達は逃げられない。
あえて言おう。カワイイは戦略。カワイイは武器。
そして、カワイイは、悪だ」
「カワイイが、悪……」
飛躍した発想に聞こえる。
しかし、今回の話のスタートラインを考えれば……
「そして赤ん坊や猫からさらに、頭身を低く、目を大きく、体を丸くのカワイイテンプレートを進めると……」
「結論を述べよう。タルカコはカワイイ。
故に、タルカコを喰らい、虐待に近い遊びをすることに嫌悪するべきではない。
奴等を壁に投げつけて頭を破裂させるのは、トマト祭りでトマトを投げることとなんら変わりない。
ミキサーにかけて体をバラバラにするのも、オレンジジュースやひき肉を作る工程となんら変わらない。
クーポンコードはまだ有効期間内だ。
是非、タルカコを買ってほしい。
そして、そのカワイイに、騙されるな」
■異世界を革新させる新技術、その名は原子力!
「ところで僕はフグが好きだ。うまいからな。
しかし、このフグを食べるために、どれだけの人々が死んだか、僕は具体的な数を知らない。
そして今なおフグは世界中で人の命を奪い続けている。
ある意味でフグと原子力は等しいんだよ。
なのに何故フグは好まれ、原子力は嫌われる?
本当に人間の感情というものはわけがわからないと思わないか?」
何故原子力は嫌われるのか? それは……
「原子力がわからないから。
原子力が、オカルトだからだ」
「そうだ。
人はわからないものに恐怖し、祟りや呪いと言って遠ざけてオカルトにしてその恐怖に尾ひれをつける。
原子力などもはやほとんどが尾ひれで構築されていると言っていい。
例えば、今でも福島産の米や野菜からは放射性物質が検出される。
これは事実だ。
そして、この地球上で育った限り放射性物質が検出されない米や野菜は存在しない。
問題はどれだけの量が検出されるかなのだ。
しかし、誰もその安全域を知らない。
現在の福島産の米や野菜の放射性物質検出量は基準を大きく下回る。
誰も放射線がどういうものか知らんのだ」
■急速に革新する世界の影で暗躍するのは……
「九尾の狐と原子力発電を繋げるには話が突飛すぎる。
しかし、それを繋ぐミッシングリンクが存在するなら」
「人類には早すぎる知識を授けるトリックスター。
核開発を進める物理学者」
「ナイノメね~。
九尾の『ナイン』から来ていると思ったんだけど~」
ほとんどの状況が出揃っている現状。
もはや推理を間違う要素もない。
■果たして異世界の『最悪』の存在は誰なのか!?
「炉心内のウランは臨界状態です!
炉心溶融は既に始まっています!
既に中央制御室の隔壁の外の放射線量は安全水準の600倍!」
「地獄は煮詰まっている。
一切の制御を放棄し、意図的に起こされた原子力発電所事故はこの宇宙全体でも例がない。
あとはこの原子炉を内部から破壊するまで暴走が進めば、この星は終わりだ」
「な、何をいうんですかユウキさん!
どうみたって師匠ですよ! あ、もしかしてユウキさん!
私が刃物に目がないの知ってて邪魔しようとしてますね!?」
『いきなりヤバすぎる異常性癖を吐露するんじゃない!
本物の師匠は里を守るために戦闘中だ! そいつは偽物だ!』
「なるほど。素晴らしい知識と想像力だ。
君たちは小説家になった方がいい」
『おかげさまで毎日投稿させてもらってるよ!』
「でもね~、今回私、ちょっとだけ楽しみなのよ~」
「嫌な予感しかしないが、何が?」
「今回こそキリヤちゃんの触手プレイが見れる」
■この冬、劇場で最悪と最悪が衝突する!
「そう。この刀身は、放射性物質で作られている可能性がある」
「ちょっとまて!
ということは、軽く傷がついただけで相手が死んだというのは!?」
「放射性物質が傷口に触れればそれはもう一瞬だ」
「青い光で目が見えなくなったというのは!?」
「チェレンコフ光だ。
核反応が発生している際に観測される青い光だな」
「ではキリヤよ。この剣はいらないのだな」
「う……」
『ダメよキリヤちゃん~!
大変なことになっちゃうわよ~!
絶対にダメ~! 絶対にダメだからね~!』
『振りにしか聞こえないしお前だけ目的が向こう寄りなんだよ!』
「なぁっ!?」
触手がキリヤに迫る!
もはや払いのけるための武器は手の中にない!
触手プレイ確定!
『よくやったわ九尾様~~!!』
『獅子身中の虫がぁぁぁぁああああ!!』
「ヒーローに倒された怪人が巨大化するのはお約束よ。
男の人ってこういうの好きでしょう?」
「「大好きだが!」」
「さぁ、これこそ異世界の叡智の結晶。
小娘の依頼で完成させた小娘専用のスーパーロボット。
エルフロボです」
「「「物凄く趣味的な見た目だ!」」」
「ねぇちょっと人工無能さん!?
確かに! 確かにデザインは私の要望通り!
パーフェクトな仕事と言って良いでしょう!
でも問題は中身なんですよ! 中身!
なんでこのエルフロボのコクピット!
全 裸
で乗らないといけないんですか!?
あとなんかイソギンチャクの触手みたいなのが見えるんですが!!」
(キリヤさん、頼む。乗ってくれ)
(お前も刃物が好きならわかるだろ? バカに刃物は危険なんだ)
(くぅっ……!)
――逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ……逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだっ!
「やります。私が乗ります」
異世界オカルトチャンネル7! 第11章
「でもそうね。気に入ったわ、あなた達」
「いや、正直未来永劫お近づきになりたくないんだが」
「夜這いして朝まで寄り添ってあげるわよ?」
「そういう這い寄り方はやめてくれ」
「私は最期まで主様に寄り添うつもりですわ。
ねぇ、終末はどこに出掛けましょうか?」
「トキメキを感じる言葉だが漢字変換した瞬間終わりなんだよ」
>>>>NEXT UP 41-1:改めてこの異世界は良い人ばかりだと実感してみた!




