40-終:おとうさんを訪ねてみた。
■Quantum
・作詞:猫長明
・作曲:いつかやりたい
・歌:ヨッシー
・謝らないといけない人達:たくさん
・感謝したい日本の畜産農家の数:5万8360戸+1戸
君の筆で解き明かせ 「第二波! 行け!」
残された宿題 「意外に遅かったですわね!」
オカルトの息の根を止めてくれよ 「当たるのじゃぁぁ!!」
さあ 数に溺れた真理導け 「魔法の中に核があった? やりますわね」
月昇るはずの夜空見て 「アテナ! サラダを作って待っているぞ!」
首を傾げる日々を繰り返してる 「行くのじゃ! 緑の月よ!」
木から知恵の実が落ちていく 「わたくし達の腐れ縁と共に!」
誰か悪魔に囁かれたのかな 「まだですっ! まだもう一撃……!」
なあその肩に俺も乗せてくれないか 「アイギスの盾をお捨てなさい!」
そして等式結ぶ手前で 「イルルヤンカシュの警告を無視するからじゃ!」
置き去りにして解法から遠ざけて 「ふふっ、来ますわ来ますわ!」
君の筆で解き明かせ 「作戦成功ですわ! 落下予測地点は!?」
残された宿題 「神の国、イェール・カーンじゃ!」
オカルトの息の根を止めてくれよ 「直撃ですわ! ざまぁないですわ!」
さあ 数に溺れた真理導け 「これで戦争も終わりなのじゃ!」
「ん……?」
「あれ~? どうかしたの~?」
「行かないと……おかあさん達のとこに……」
「あ、ちょっと待ってよ~!」
追いつけないアキレスは膝ついて諦める 「私達の娘を感じるのじゃ!? いつの間に産んでいたのじゃ!?」
消えていく二重隙間にわずか光る 「流石に娘は守りますわ! たかが石ころ一つ粉砕して見せますわ!」
今 月が被る可能性生み出すのさ 「「母の愛は伊達ではないのじゃ!」ですわ!」
大気圏突入間際、落下予測地点に何故か自分達の娘の命を感じた2人は、月を粉々に破壊した。
その破片は世界中に降り注ぎ、結果的に星に予想よりも大きな被害を与えることになる。
しかし、何故かその破片は1つもイェール・カーンに落下することがなく、ヨッシーは数式を最後まで書き上げた。
後に彼の出した本は全世界8000万人の人々が知るところとなり、ここに世界は戦争を続ける理由を失い、平和がもたらされた。
尤も、そんな本がなくとも、二度とこの世界で戦争が繰り返されることなどなかったのだろうが。
「どうして……こんなことに……」
「わざわざ僕のために作った世界だろう。
どうでもいいことだ」
「あなたはねぇ!」
「といっても僕が月を落としたわけではないし、
僕に月を止めることなんかできるわけがない。
僕はただ確定された未来に至る道で最善を尽くしただけ。
戦争も虐殺も許せることではないが、己の領分を超えた主張を叫ぶのは愚かな徒労だ。
そもそも世界平和を訴える活動を続けても世界は平和にならない、
真に世界を平和にしたいなら活動家ではなく政治家になるための勉強をして組織の中で耐え忍んで成り上がり、最終的に一国の首相となり責任を背負うべきで、それが嫌でただノー・モア・ウォーを叫ぶくらいなら何もしない方が世のため人のためだ」
「それはそうですけど!」
思わず拳を振り上げようとして、深くため息をついて肩を落とし、左手に握ったツインテールを頭に取り付けた。
「本当なら、強く印象に刻んだ記憶だけは持ち出せるようにしたつもりでした。
しかし、優しいヨッシーさんがこんなになってしまったなんて、私には認められません。
記憶はすべてブラックホールに捨てて行ってもらいます」
「それは残念だ」
「できれば教訓にしてもらいたいんですけどねぇ。
二度とこんな形でパンドラの箱を開けないように」
「はっはっはっ!」
そのルチの言葉にヨッシーは笑う。
「……今の、笑うとこじゃないと思うんですけど」
「それなら心配いらない。大丈夫だよルチさん」
「次はもっとうまく開けるさ」
異世界オカルトチャンネル7! 錬金科学編、完! (パパンッ!)
……と、勢いで「完」を書いてみたものの。
「ボルジャーノ博士親方、無事に娑婆に戻れて良かったな」
「シャバが隠語でもなんでもないわ~」
「しかしあの人は本当に天才だな。
まさかこの1ヶ月あまりで数学を覚えて帰って来るとは」
「やっぱり数学を極めたいなら犯罪に手を染めるべきなのかね」
・数学を極めたいなら犯罪に手を染めるべき
クリストファー・ヘヴンズ服役囚のこと。
2011年に殺人罪で25年の懲役がくだされた彼は、刑務所の更正プログラムの一環で数学を学び、そこから数学の才能が開花。
コンピューターはおろか電卓の所持すら認められない独房の中で手書きにて計算を進め、超難問として世界の数学者達を苦しめていた問題を解いてしまった。
彼は獄中で論文を書き上げ、現在査読付きの国際ジャーナルに掲載されている。
2025年現在、残りの刑期は11年。
彼の収監されているワシントンの刑務所では囚人達の間で数学が流行しており勉強会が開かれているとか。
毎年3月14日はお祭り。
「しかし数学を覚えるどころか、まさかこの世界の4つの月の影響も踏まえた六体問題を解決してしまうとはな。これだから天才は」
「お前も死ぬ気で頑張ればいけたんじゃねーの?」
「いくらなんでも買いかぶりすぎだよ。
僕には無理だ。ところでキリヤさんは?」
「そういや10日目についに騙されていたことに気付いて(※正確には、賞味期限があるため無限には食べられないと気付いて)から後見てないな」
「あっ」
さっと扉の前に移動し、そっぽを向き、口笛を吹く(吹けていない)サダコ姉。
「お前、また……」
「大丈夫よ~! 大丈夫だから~!
今回は前より酷いことにはなってないから~!」
「相対的な問題ではない! キリヤさん!」
「あ、ちょっとぉ~!」
強引にサダコ姉を押しのけ、強引に扉を開いた先では。
「あっ!! 助けっ……」
「ごゆっくり」
「そんなーーーー!!」
トールキンのおじきの前で土下座して指を詰めるよりはマシだと思う。
「ごめんください」
「おや、誰だろう」
サダコ姉を扉の向こうに蹴り出し、ドッタンバッタン大騒ぎの後ろを全力で無視して来客の対応に出る2人。
「おや、君は確か、この前の大会で……えーと、ホムンクルスの」
「パラミです」
「パラミさんな。
はじめまして……というわけでもないのか。
で、僕達に何か用か?」
「いえ。特に。
おとうさんの顔が見たくなっただけなので」
「は?」
何を言っているのか理解できず顔が凍るヨッシーに、ユウキは頭を抱える。
「お前、ロリコンなのは知ってたがついに……」
「誤解だ! 僕は何も知らない!」
無表情でジト目のパラミの前で殴り合いをはじめる2人。
「やっぱり、おとうさん達も仲が良い」
「「おとうさん『達』!?」」
今この時ばかりはサダコ姉に聞かれていなくて本当に良かった。
もしも聞かれていたら、また2人の弱みが追加で握られてしまう。
「ところでおとうさん達」
「「おとうさんではない!!」」
「藤子不二雄の短編で何が好き?」
その質問に2人は少し悩んで。
「気楽に殺ろうよ」「あいつのタイムマシン」




