光の粒子と、あなたと
街が真珠色に輝きはじめる頃、デパートの大きなガラス窓に映る自分の姿が、夕暮れの中でぼんやりと揺れていた。真っ赤なコートの裾が、十二月の冷たい風にはためいて、小さな波のように踊る。巨大なクリスマスツリーの光が、通り過ぎる人々の頬に淡い虹を描いていく。
待ち合わせは七時。まだ少し早い。雨上がりの石畳に映る街灯が、水たまりの中で揺れる星のよう。私のヒールの音が、路上のサックス奏者が奏でる優しいジャズに溶けていく。その音色は、まるでこの街の切ない鼓動。深く息を吸うと、シナモンの甘い香りが心を温める。
誰もが何かを追いかけている。約束の時間に追われる恋人たち、最後の買い物を急ぐ家族連れ。その中で私だけが、時間が作る小さな渦の中で静かに佇んでいる。スマートフォンの画面は、まだ闇のように沈黙したまま。
高層ビルの谷間から、夕暮れの紫色の雲が夢見るように浮かんでいる。ネオンサインが、その輪郭を淡い光で縁取る。誰かのバニラの香りが風に乗って通り過ぎ、そっと降り始めた雪が、街の喧騒をベールのように包んでいく。
突然、心が知っている足音が背後から響いてきた。振り向くと、そこには懐かしい笑顔。少し息を切らせた彼の頬が、冬の空気で薔薇色に染まっている。「待たせてごめん」という言葉が、白い息となって夜空に溶けていった。
その瞬間、世界が静止した。雪は歌うように降り続け、二人の肩に小さな宝石を散りばめていく。周りの喧騒も、ネオンの光も、すべてが遠い宇宙の片隅へと消えていく。ただ、隣で響く彼の心臓の鼓動だけが、この世界で一番確かな音として響いていた。
「行こうか」という彼の声は、雪の結晶のようにきらめいていた。行き先は決めていない。でも、それがすべてを特別にする。この夜はまだ序章。私たちの前には、冬の星座のように無数の可能性が瞬いている。
私たちは歩き出した。彼の手が、そっと私の手を月明かりのように包む。その温もりが、凍えた指先から心まで溶かしていく。周りでは誰かが笑い、誰かが歌い、誰かが永遠の愛を囁いている。すべてが魔法にかけられたような、一度きりの夜。私たちもまた、この街が紡ぐ物語の、かけがえのない一編になっていく。
ショーウィンドウに映る私たちの姿が、街の光を纏って、ゆっくりと詩になっていく。この夜は、きっと心の奥で、永遠に輝き続けるだろう。そう思いながら、私は彼の手をそっと握り返した。まるで、大切な約束をするように。




