第十四話・火事と喧嘩は『エドハルマ』の華
超異世界女型要塞【プルシャ】姉型が跳躍航行で現れた、前方空間に浮かぶ惑星には変わった地上絵があった。
ピンク色をした丸の中に、尖った部分が中央で接している三つのピンクハートマークの紋章が人工的に描かれていた。
その地上絵紋章の大きさは宇宙から見て、惑星の半分を占めていることから、とんでもない規模の地上絵だとわかる。
仮想体プルシャが惑星の説明をする。
「あの惑星の名前は【エドハルマ】……エドハルマ家が全統治している惑星です」
カミュが鉄拳同士を打ちつけて言った。
「惑星を丸ごと統治しているってのは、とんでもない統治力の星だな……あの星に着陸するのか?」
「ええっ、要塞船の休憩を兼ねて……異世界人のみなさまには、惑星時間で一週間──自由に過ごしてください、短期間の労働で賃金ふを得るもよし。エドハルマの観光をするもよし……リフレッシュしてきてください」
惑星に向って下降をしていく、超異世界要塞──白い雲の層を抜けると、エドハルマの町並みが広がっていた。
昭和時代と江戸時代が混ざり合ったような文明惑星だった。
船橋の巨大スクリーンには、プルシャの船影に怯えて逃げていく民衆の姿や、緊急事態を知らせる半鐘[火の見櫓などで、災害や火事や怪獣襲来時に打ち鳴らす鐘]が打ち鳴らされている様子が映し出されていた。
メリノが言った。
「なんか、アタイら歓迎されてねぇんじゃないか? 子供がこっちに向って石投げているぞ」
「そんなコトはありませんよ……エドハルマの人たちは、未知のモノに怯えているだけです……パイ、船体の色彩変化を」
「オッケー、この前来た時みたいな色彩に」
要塞船の船体が、黒地に黄色い虎縞模様に変わる。
集音されたエドハルマの人々の「災いの虎船が来たぁ! 呪われた虎船が降りてきたぁ!」の声が船橋に響き渡る。
メリノが言った。
「やっぱり、アタイら嫌われてねぇ?」
プルシャはメリノの言葉への返答を無視して、小山に着陸した。山の山頂にあった山神の社が鳥居ごと、プルシャに押し潰されて大破する。
なぜか、女神のメロンが手を叩いて喜ぶ。
「ざまぁみろ、異星の邪教偶像崇拝者ども! 崇拝するなら、あたしの立像で決まりでしょうが」
メロンの言葉を無視して、プルシャが言った。
「滞在時間は、この惑星時間で一週間です……一週間後には離陸しますから遅れないように、乗り遅れたら置いていきますから」
こうして、魔具の手入をするから船内に残ると言うリズムを除いた異世界人たちは、エドハルマの町へと繰り出した。
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メリノ・ウールが浮かぶ大鍋に乗ってやって来たのは、エドハルマの町にある『旗屋』だった。
「〝モフモフ珍走団〟の暴走団旗も、ほつれが目立ってきたから新しい団旗を新調したい」