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第七話・宇宙は謎と変と不条理でできている

 ヤゲンと狂四郎に体を斬られて、痛みに呻いているゴブリン星人に、腐った聖女ドール・ジが近づいてきて言った。

「あはっ、あたしの聖なる癒やしの力で、痛みを消してあげます」

 ドールが手の平を、ゴブリン星人の一人にかざすと、ドールの手の平からどす黒い何かがゴブリン星人の傷口に流れ込む。


 激痛に、のたうち回るゴブリン星人。

「いてぇ、さっきよりも痛みが増してきたぞ⁉ うわぁ、腐ってきている……やめろぅ、腐った臭い聖女!」

 ドールの表情と口調か変わる。

「今、おめぇなんつーた……臭いだと、ふざけるな! 毎日フロに入っているぞ、あたしが入った後のフロはドス黒くなって、湿ったゾーキンの臭いがするけれどな」

「おまえからは、ゾンビ臭がするんだよ……どっかに行け!」


 必死に微笑む聖女のこめかみに、青筋が浮かぶ。

 いつもの口調にもどるドール。

「あはっ、あたしの聖なる癒やしの力は、十回に一回は成功するんですよ」

「九回失敗しているなら、ほとんど成功してねえじゃねえか! この腐れ聖女!」

 ドールが微笑みながら、妖怪球体生物に命じる。

「モンスターボールさんたち……やっておしまい」

 ゴブリン星人に襲いかかる。ヴァンパイヤ、ワーウルフ、ミイラ男、カッパ。

 悲鳴を発するゴブリン星人たち。

「ぎゃあああっ!」


  ◇◇◇◇◇◇


 密猟者のリーダーゴブリンが、操縦席が剥き出しのロボット型の重機に乗り込み。

 三つ爪のアームを開くと、狂四郎たちに突進してきた。

「握り殺してやる!」

 その時──怪獣の太い尻尾が横殴りで、ロボット重機をゴブリン星人ごと吹っ飛ばして。

 重機はジャングル(密林)の彼方へと飛んでいった。

 狂四郎たちの頭上から声が聞こえた。

「大丈夫か? 密猟者ってのは、とんでもねぇ卑怯な野郎だな」


 見上げると二足歩行で恐竜型の、鋭い背ビレを生やした怪獣がいた。

 ジャングルの中から、隠れていたプルシャたちが怪獣の前に出てきた。

 メリノたちが、捕まっていた怪獣たちを檻から開放する。

 見上げるプルシャが親しげな口調で、助けてくれた怪獣に向かって言った。


「お久しぶりです、暴魂獣【アグラ】……この惑星には、トレーニング相手を探しに?」

 アグラが言った。

「もしかして、プルシャか? 前に会った時とだいぶ違う姿だな……おうっ、怪獣バトルに備えてトレーニング用の強い怪獣を探しに来たが、ライバルのアイツは一足先に惑星から離れちまったらしい……オレもそろそろ、故郷の星に帰ろうと思う」

「そうでしたか、大会頑張ってください」


 その時──最後まで隠れていたヘタレのイケニエが木の枝を両手に持って、姿をカモフラージュするように現れた。

「もう、密猟者はいなくなった?」

 転生者を見て憤怒するアグラ。

「まだ、この世界に残っていやがったか! クズ転生者! 口から何かが出る攻撃!」

 アグラの口から発射された竜巻きが、イケニエを空の彼方に吹き飛ばす。

 吹き飛ばされながら絶叫するイケニエ。

「なんで、オレだけぇぇ!」


 スッキリした顔でアグラが言った。

「やっぱり、パートナー(片割れ)がいねえと、本来の怪獣パワーは発揮できねぇな……じゃあな、プルシャ」

 そう言い残して、暴魂獣アグラは瞬間移動で、怪獣惑星から去って行った。


 プルシャが言った。

「この宇宙には、まだまだ不思議なモノがたくさんありますよ。宇宙海賊とか宇宙犯罪結社とか、謎の女王とか、宇宙を飛ぶ島とか」


 プルシャの言葉を聞いたカミュが楽しげに拳を打ちつける。

「宇宙ってのは面白えな、神は死んだ世界は不条理に満ちている……おっと、その前に竜巻きで吹っ飛ばされたイケニエのヤツを探さないとな」


 異世界人の宇宙の冒険は、今はじまったばかりだった。

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