さよなら私のクライマー
サッカーの話ではありません。
のぼり坂の地平線は頂上で
そのさきは まだ見ぬ世界をかけおりてくんだって
目を輝かせた顔を こちらに振り向きもせずに
かけのぼってくあなたの背中が好きだった
苦しそうなときには 押しあげてやりたくても
リーチのないこの腕がうらめしいや
てのひらをあてるどころか
指が触れることもかなわず
私はその背中の広さを だれよりも知っているのに
私はその背中のかたさを なにひとつ知らない
そうこうしているうちに
のぼりきってしまったあなたは
頂上に足をかけて 地平線のあちらへと姿を消す
あいかわらず
こちらからじゃ たしかめられない顔には
いままで以上に目を輝かせて
まだ見ぬ世界をかけおりてゆくのだろう
さよなら私のクライマー
そのときのあなたが
どんな背中をしているのかなんて
私には想像すらつかないけどね
さよなら私のクライマー
つぎの のぼり坂まできっと
あの背中を失くさないでいて
タイトルのわりにまじめ。