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こんな事になるなんて

小型竜がハルのいる方向に振り向き、振りかぶる。

折れそうなほどしなった角は鞭のように振り下ろされた。

逃げようとしたハルは、両手両足を縛られていることに気付いてのたうち回る。


「ぎゃああああ! しまった!」


ビターーーーーーンッ!


思っていたより衝撃が少なかった。

でもすごく重い。

内臓が潰れそう。

薄目で様子を伺うと、アランがハルの上に覆い被さって庇ってくれていた。


「く……くるしぃ。早くどいてください」

「……お前な。命の恩人に向かって、感謝はないのか」

「も……ちろん感謝はしていま……が、おも…」


ハルの顔が赤黒くなってきたことに気付いて、アランは慌てて体を移動させた。


「ふぅ……潰れるかと思った。ありがとうございます」

「これくらいのこと、市民を守る対策課の者として当然だ。っ」

「どうしましたか!?」


アランの背中を見ると傷ができていた。

角が倒れてくるのを見て防御壁をつくったが、咄嗟のことだったので硬度が不足していたようだ。


その時、広場の結界の外側から対策課の出動部隊の攻撃が始まった。

お師匠さまの姿も見える。

そして、2本の指を立て、こちらに向けている。

あれはお師匠さまとハルで特訓した魔弾を打つための指示だ。

指が1本なら直径1センチの魔弾を放ち、指が3本なら直径3センチの魔弾を放つ。

直径の長さで威力が違うのだ。

今回の指示は指が2本なので、直径2センチの魔弾を放てば良い。

お師匠さまのいる方向を目掛けて、魔弾を放つ。

ハルは大きさと速さを同時に操作できないので、ゆっくりフヨフヨと飛んでいく。

結界まで飛んでいくと、目がくらむほどの強烈な閃光が走った。

大地を轟かせる爆発が起こる。

煙が引き、爆発が起こった場所を見たアランは驚愕の表情を浮かべていた。


「あれだけ巨大な結界が跡形もなく消えている……」

「へへ。やる時はやるんですよ?私」


アランは自作した罠からハルが脱出できた理由をここで知った。

ここの広場にかけられた結界は、巨大竜を召喚するため外から邪魔が入らないように強固にはられていた。

おそらくこの結界を破壊できるほどの魔法使いは、この国の上位数人ほどしかいないだろう。

それをハルはやってのけた。

魔弾でこんな結界を消せるくらいだから、あの罠を破壊するのなんか簡単だ。


「嘘でしょ? 何でこんなに簡単に結界が破れるのよ? ここに集めたのは、魔力量がそこそこの奴らしかいないはず……」


吊り目美女は、魔石が埋め込まれた連絡用の端末を手に取り、どこかに連絡しようとしている。

だが、耳に当てた途端に砂になって地面に流れ落ちた。


「やられた! 私を切り捨てたんだわ! あいつら」


激しい憎悪を顔に浮かべながら言葉を続けようとした女は、突然現れた大型の蛇型の魔物に飲み込まれ消えた。



目を覚ますとお師匠さまの自宅にいた。

周りには誰もいない。


「もう少し寝ても良いよね」


幸せな気分で眠りにつこうとすると、いつのまに現れたのか豚型の魔物がいた。


「あわわわわ、おししょうさまーーーー! 魔物がまものが」


何事かとお師匠さまとアランが、扉を開けて入ってきた。


「何だ、ピンブタか」

「何なんですかこいつ!」

「この子は君を守るために僕が使役している魔物だよ。いつもは姿を消して気付かれないようにしてもらっているんだけど、君が心配だったから出てきたみたいだね」

「勝手に私のプライベートに干渉するようなことはやめてと言ったじゃないですか! 大体、こいつのおかげで罠にかかったり、食べられたり散々な目にあったんですよ!」

「だって、以前渡したネックレスは捨てられてしまったし……」

「当然です! 24時間私がどこにいるか、何をしているかを監視できる代物でしたからね! 」


2人のやりとりを見ていたアランが口を挟む。


「先輩、こいつは一体何なんですか?」

「アラン。女性に対して”こいつ”呼ばわりはいけないよ。ハルは魔力量が常人のそれをはるかに超えているんだ。だから暴発させないように僕のそばに置いている」

「それほどの魔力量があるなら、魔法学校で訓練させて、然るべき機関で有効活用すれば良いのでは……」

「ところがね。彼女は学ぶことに興味がないんだ。遊びとしてなら覚えられるんだけど。人にもあまり関心を示さないし。そうなると無理にそういう場に連れて行っても、彼女に苦痛を与えてしまうのではないかと思って」

「……」

「それに僕の大事な人だしね」

「でもこいつ、ときどきクズですよ?」

「……それでも、僕のそばにいてくれるから」


アランは天を仰いだ。

文武両道で眉目秀麗の先輩がこんな女にいれあげているとは。


ハルを見るとニカっと笑っている。

何度見てもムカムカする顔をしている。


「そんなことより、広場で起こったことについてです。女は計画が失敗したと焦って、どこかに連絡をとろうとしていました」

「ふむ。実は数ヶ月前から国の結界に穴がないにも関わらず、魔物被害が増えてきている。召喚士が裏で手を引いているのかもしれない」

「警戒のために魔物対策課の人員を増やす必要がありますね」

「ああ」

「しばらくは僕の大事なハルが自分で身を守れるようにする必要もある」

「ん?」

「君、僕の弟子になりたがっていたよね?」


その後、お師匠さまの弟子になったアランからハルがスパルタ教育を受けるのは、また別の話。



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