②
「も……申し訳ありませんでした……」
私が何度目かの謝罪を口にした後、リュシアン様はようやく髪から手を離してくれた。
「お前に言葉で注意しても無駄らしいな。幽閉室に入って反省しろ」
「え……っ、また幽閉ですか……?」
「不満でもあるのか。本物の牢獄に入れてやってもいいんだぞ」
リュシアン様は冷たい目で私を見据えて言う。リュシアン様の言う通り、王太子に薬物を盛るなんて本来なら牢獄に入れられるべき罪。
幽閉で済ましてくれるのは相当な温情なのだ。
「わかりました……。幽閉室で反省します……」
しょんぼりしながらそう言うと、乱暴に腕を掴まれてそのまま幽閉室に連れて行かれた。
扉が閉められ、ガチャリと鍵がかけられる。
私は扉の前で、遠ざかっていくリュシアン様の足音を悲しい思いで聞いた。
***
そういうわけで幽閉室に入れられて三日。
私はふかふかのベッドの上で毛布にくるまって、ひたすら時が経つのを待っている。
最初はこの部屋には毛布しかなく、固い床で縮こまって寝ていたのだけれど、今はベッドがあるのでありがたい。
以前、幽閉室で眠ると体が痛いとこぼしたら、リュシアン様に罪人のくせに贅沢を言うなと怒られてしまった。けれど次に部屋に入れられた時は、部屋の真ん中にやたらふかふかしたベッドが用意されていた。
「リュシアン様、早く会いたいわ……」
今回の幽閉期間は一週間。使ったのが毒物ではなく睡眠薬だったことで、期間を短めにしてくれた。
けれど一週間もリュシアン様と会えないのは辛く、私は開かない扉をひたすら切ない思いで見つめた。
「おい、ジスレーヌ。起きてるか」
突然扉の外から響いた声。私は飛び起きて扉の前に駆けて行く。
「リュシアン様!? はい、起きてます!」
「開けるぞ」
リュシアン様は冷たい声でそう言うと、扉を開けた。三日ぶりのリュシアン様の姿に私は歓喜する。
「リュシアン様! どうしてこちらへ!? もしかして幽閉期間を短くしてくださるのですか!?」
「そんなわけないだろう。図々しい奴だな。お前がちゃんと反省しているのか見に来ただけだ」
リュシアン様は不機嫌な顔で言う。
リュシアン様は、大抵の場合、幽閉期間が半分を過ぎると部屋まで来てくれるようになる。
駄目駄目な私がちゃんと反省しているのか確認するためらしい。それでもリュシアン様に会えることには変わりないので、私は嬉しくてたまらなかった。
「いいか? 勘違いするなよ。本当に反省具合を見に来ただけだからな。寂しくて来たとかじゃ絶対ないからな!」
「わかっております! ジスレーヌはここできちんと反省しております!」
リュシアン様に怖い顔で釘を刺されてしまったので、私は慌てて宣言した。