表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/82

21-2

 ルナール公爵の件は公爵への配慮から、大部分の国民には詳細を伏せられて伝えられた。


 それなのに、リュシアン様を陥れようとしたことも、二十年前にベアトリス様に冤罪をかけたことも、瞬く間に王国中に広まってしまった。



 公爵が甥である王太子を陥れようとしたこともかなりニュースになったが、人々はむしろ二十年間悪女だと思われていたベアトリス様の件の真相に熱狂しているようだった。


 今さらになって当時から公爵は怪しいと思っていたとか、国王に対する不満が顔に現れていたなんて意見が出てくるのだから、呆れてしまう。


 しかし、そのおかげでベアトリス様は公爵家の子供を殺そうとしてなどいなかったということが国民中に広まってくれた。今では誰も彼女を悪く言う者はいない。


 むしろ同情と敬意の声が多数寄せられている。この前、フェリシアンさんに呼ばれて旧裁きの家を訪れたときは、お屋敷の前に大量のお花が供えられているのを見つけた。



 そう、裁きの家には現在フェリシアンさんが住んでいるのだ。


 死亡したはずのフェリシアンさんが生きてお屋敷の監視係として働いていたことはお役人方を相当驚かせたけれど、手続きの末に死亡届が取り消され、彼は本名のまま生きられることになった。


 ルナール公爵から没収されたお屋敷は、慰謝料の代わりとしてベアトリス様の息子であるフェリシアンさんの手に渡り、彼はそこで静かに暮らしている。


 ときどき私のことも呼んでくれるので、遠慮なく遊びに行かせてもらっている。


 最初に訪れたときは、ベアトリス様の冤罪が公になった件で何度も頭を下げてお礼を言われた。


 しかし、私は会議に乱入しただけで、冤罪が認められた主な理由は証言をしたドミニクさんと彼を連れてきたリュシアン様なので、なんだか申し訳なくなってしまった。


 ちなみに、フェリシアンさんはドミニクさんにも屋敷に来ないかと連絡しているみたいだけれど、ドミニクさんのほうは過去のことが後ろめたいようで遠慮しているらしい。


 いつか、お屋敷に行ってベアトリス様に姿を見せてあげて欲しいな、なんて考えてしまう。



 フェリシアンさんからは、今月もお屋敷に来ないかと言う手紙が届いた。


「リュシアン様、私今週末にお屋敷に呼ばれているので、ちょっと王都を留守にしますね」


「は? また行くのか?」


「だって、せっかく呼んでくださったんですもの。ベアトリス様にも会いたいですし」


「一人暮らしの男の屋敷に一人でか」


「一人暮らしじゃないですよ。ベアトリス様もいます。それに侍女にもついて来てもらいますし」


 そう答えても、リュシアン様は納得のいかなそうな顔をする。リュシアン様は不機嫌な顔も素敵なので、ついじっと見惚れてしまう。


「俺も行く。フェリシアンにそう伝えておけ」


「え……っ! リュシアン様も来てくださるのですか!?」


「文句あるのか」


「いえ、ばっちりお伝えしておきます! 楽しみです!」


 思ってもみなかった言葉に、明るい声が出る。リュシアン様はしかめ面をしていたけれど、私は忙しいリュシアン様とお出かけできるのが夢のようで、浮き立つ気持ちを隠せなかった。



 そして週末。リュシアン様と一緒にお屋敷を訪れると、フェリシアンさんが元気な顔で迎えてくれた。


「ジスレーヌ様! それに、本当にリュシアン殿下も来てくださったんですね! お待ちしておりました。どうぞ中へ」


「お久しぶりです、フェリシアンさん。お邪魔します」


「……邪魔をする」


 フェリシアンさんはにこにこしながら中へ案内してくれた。


 お屋敷の中は私がいた頃よりも随分綺麗になっている。壁も床も綺麗に磨かれて、余分な草を刈り取られた庭からは明るい光が差し込んで、幽霊屋敷と呼ばれていたころの面影もない。


 それでもやっぱり懐かしく、私はきょろきょろ辺りを見回しながら廊下を歩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ