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20-6

 ドミニクさんはそう言って言葉を止めた。


 ルナール公爵は目を血走らせ、唇を震わせてドミニクさんを睨んでいる。腕を押さえられていなかったら、すぐにでも掴みかかりそうな様子だった。



「今のドミニク殿の話を聞いた上で尋ねたいのだが、ジスレーヌの持ってきたベアトリスの日記。あれを検証せずに斥けていいものだろうか」


 リュシアン様の言葉に反対の声を上げる者は、誰もいなかった。


 一人が賛成するとほかの人たちも一斉にそれに続く。止めようと喚くルナール公爵の声が、一層ドミニクさんの話の信憑性を増した。


 会議の中心にいた貴族によって、ベアトリス様の日記は読み上げられた。


 日記が読み進められるごとに、貴族たちの顔に驚きの色が浮かんでいく。


 小さく呟かれる声に耳を澄ますと、ベアトリス様の日記の内容が二十年前に起こった出来事とぴったり一致していることに動揺しているらしかった。


 ベアトリス様の日記に書かれていることの中には公になっていないことがたくさん記されていたらしい。


 正真正銘ベアトリス様の日記なのだから当然なのだけれど、信じきってはいなかったであろう会議の参加者たちの顔は、みるみるうちに驚愕と困惑に染まっていった。



 日記が全て読み上げられる頃には、会場はそれまで以上の混乱状態になっていた。


 ルナール公爵を糾弾する者に、リュシアン様と私が仕組んだのではないかと公爵を擁護する者と、皆がそれぞれ大声で主張する。


 リュシアン様と私が仕組んだのではないかと言う言葉には、私達が反論するまでもなく、「ドミニク殿の話と日記の内容はあまりに詳細過ぎる上、昨日の今日でここまで準備をするのは不可能のはずだ」と切り捨てられていた。


 話し合いはますますヒートアップしていく。もう収拾がつきそうになかった。


 最後は進行係が無理やり話し合いを打ち切り、二十年前の事件を改めて調査し直すこと、ドミニクさんの証言とベアトリス様の日記を重要な証拠として検証すること、その件を踏まえた上で今回のオレリア様が襲われた件を判断すると結論づけた。


 はじめに会場に入って来たときは、ルナール公爵を支持する者のほうが優勢に見えたのに、今は会議室にいるほとんどの人間が、疑わしげに公爵を見ている。


 反対にリュシアン様を疑う声はすっかり消えていた。




 それから数週間後、正式にルナール公爵が二十年前に国王を暗殺しかけたことと、それに気づいた侍女を幽閉して死に追いやったことが認められた。


 それらを踏まえ、オレリア様の件も王位簒奪の計画の一部だったと判断された。


 国王暗殺未遂に侍女への不当な扱い、さらには現王太子を陥れようとした罪で、公爵は爵位剥奪の上、王家所有の屋敷に幽閉されることが決まった。


 公爵を擁護する者は、その頃にはもう誰もいなくなっていた。


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