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15-4

 王都まで向かう最中、リュシアン様にこれからのことを説明された。


「今回は急いでいたから、正式に幽閉を解く手続きをする前にお前を出したんだ」


「まぁ、私のためにそんなに急いでくださったなんて……!」


「本当は幽閉を解いた後で、きちんと令嬢たちの証言が嘘だったこととお前が無実だったことを証明するはずだったんだが……結局犯人はお前だったから、ものすごくやりづらくなった」


「す、すみません……」


「もういい。何とかお前が毒を盛った件はごまかして、屋敷の持ち主の叔父上にも早めに幽閉を解くと伝える」


「あの、その叔父様……ルナール公爵のことなのですが」


「叔父上がなんだ?」


 リュシアン様は不思議そうな声で尋ねる。


「実は……お屋敷で二十年前の事件の真相について知ってしまったんです。ベアトリス様が幽閉された本当の理由は、ルナール公爵が陛下を暗殺して王位簒奪しようと目論んでいたのを知ってしまったからのようでした」


 リュシアン様は馬に足を止めさせ、こちらを振り返った。


「どういうことだ?」


「ルナール公爵は、侍女として働いていたベアトリス様に計画を聞かれたことで、隠ぺいするために彼女に罪を着せて幽閉したんです。もしかしたら、あの方は今でも計画を諦めていないかもしれません」


「……その話、詳しく聞かせろ」


 リュシアン様は馬から降り、私も馬から降ろす。近くにあった岩の上に腰を下ろすと、私は屋敷で知ったことを説明した。


 ベアトリス様の幽霊については半信半疑だったリュシアン様も、監視係が彼女の息子だったという話を聞いたときはさすがに驚いた顔をしていた。



「それは、茶髪にオレンジの目のロイクという青年か?」


「そうです! ロイクというのは偽名で、本当はフェリシアンさんと言うらしいのですけれど、彼は十四歳のときに死を偽装してから、別人として生きてきたそうなんです」


「あの男が魔女の息子……。お前の定期調査の結果を聞くために時折連絡を取っていたんだ。今日、事務所から屋敷の鍵を受け取ろうとしたとき、渋る責任者を説得してくれたのもあの男だった」


「まぁ、フェリシアンさんが……。彼が二十年前のことについて色々教えてくれたんです。それに、見てください。この日記を読めば当時のことがわかるはずです」


 私は鞄から取り出した日記をリュシアン様に渡した。実は、証拠になるかと思いお屋敷から持ち出したのだ。


 本当はベアトリス様に持っていっていいか確認してから持ち出すつもりだったのだけれど、呼んでも彼女は現れなかったので、勝手に借りることになってしまった。


 リュシアン様は難しい顔で日記のページをめくる。


「……やけに詳細だな。読む限りでは嘘をつくための日記には見えない……」


「ええ。それにこの日記の鍵、私が来るまではお屋敷の隠し棚にあったんですよ。ベアトリス様が教えてくれなかったら私も見つけられないままでした。偽造のための日記だとは思えません」


「……ベアトリスの幽霊はともかくとして、調べる必要がありそうだな」


 リュシアン様は日記をじっと見ながら言った。


 私はその言葉に強くうなずく。


 もしもルナール公爵が今も恐ろしい計画を企んでいるのならば、絶対に阻止しなくてはならない。


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