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13-2

***



 昨日、処罰が正式に決まった。私は十年間この屋敷に幽閉されるのだと言う。


 取り調べの後、随分体が弱ってしまった気がする。十年も持つのだろうか。せめて、日記にこれまでの経緯とここでの生活を記録しておこうと思う。



 私はセルジュ坊ちゃんを殺そうとしてなどいない。


 ルナール公爵は、私が彼が王位簒奪を目論んでいることを知ってしまったから、告発されるのを恐れたのだろう。


 私はうかつだった。公爵の話を盗み聞きしてしまって以来、警戒されていることはわかっていたのに、セルジュ坊ちゃんと散歩に行くように命じられ、言われた通り湖の周辺まで行ってしまった。


 坊ちゃんは私の顔を見ると三歳の子供とは思えない冷たい笑みを浮かべて、自分で湖に飛び込んだ。急いで湖に入って岸にあげようとしたが、坊ちゃんは暴れて抵抗した。


 気を失ってしまった坊ちゃんは、目を覚ますとはっきりした声で私に背中を押されたのだと主張した。


 三歳の子供がこんなことを思いつくわけがない。きっと公爵に命令され、言われるままに湖に飛び込んだのだろう。


 ほかの使用人たちは、私は以前からセルジュ坊ちゃんに冷たかっただの、隠れて叩いているのを見たことがあるだの言い出し始めた。彼らは私と目が合うと、気まずそうに視線を逸らす。公爵にそう言えと命じられたのだとわかった。


 私のやっていないなんて言葉は、信じてもらえるはずもなかった。ただちに役人に連れて行かれ、身柄を拘束された。そして数ヶ月の後、ルナール公爵の「温情」によってこの屋敷に幽閉されることが決まった。




 そもそもの始まりは、公爵様が国王様の命を狙っていると聞いてしまったことからだ。


 国王様の生誕祭が終わった翌日のこと、公爵様が奥の客間で誰かと話しているのが聞こえた。


 そこは複数ある客間の中でも滅多に使われない場所である上、その日はお客様を呼ぶ予定もなかったため、不思議に思って思わず廊下で会話を盗み聞きしてしまった。すると、中から暗殺、毒、なんて物騒な言葉が聞こえてくるのだ。


 失礼なことだとは思いつつ耳を澄ませると、どうやら公爵様は一部の貴族と結託して国王陛下の暗殺計画を企てているらしい。


 陛下は数ヶ月に一度、国民の暮らしを調べるためにいくつかの街を回っている。次の月の訪問先には、海の近くにある小さな田舎町が含まれていた。


 公爵様は、陛下がその町を訪問した際、訪れる予定の店に暗殺者を向かわせるという。陛下の護衛のうち数人はすでに買収してあることが、会話の内容からわかった。


 私は散々迷った挙句、王家にこのことを伝えようと決めた。


 しかし、態度には出していないつもりだったのに、公爵はいつからか私に不審な目を向けるようになった。


 ここにいるのは危険なのかもしれない。しかし、家も職場も捨てて逃げるのは、一人で子供を育てる私には簡単なことではなかった。


 準備が整い次第フェリシアンを連れて、別の街へ引っ越そう。王家への報告は遠くからでも手紙でできる。信じてはもらえなくても、計画の詳細を記しておけば警戒くらいはしてくれるはずだ。


 しかし、その日が来る前に私は、公爵がセルジュ坊ちゃんを使って仕掛けた罠に嵌って捕まってしまった。


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