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1-3

「あの……、けれど、ジスレーヌ様が入れたのは本当に毒だったのかわからないではありませんか。だって婚約者様がそんなことをするなんて、考えられません」


 オレリア様が心配そうな顔でそう言ってくれる。しかし、リュシアン様はそんな彼女を呆れ顔で見た。


「毒でないのなら、わざわざ隠れて紅茶に何を入れたと言うんだ。つまらない擁護はやめろ」


「けれど……」


「おい、役人。これだけ証言があれば十分だろう」


 リュシアン様に顔を向けられ、役人は言葉少なに強張った顔で確認をしてきた。


「ジスレーヌ様、ここにいるご令嬢たちの証言は本当ですか?」


「違います! 誓ってお茶会で毒なんて入れていません!」


 私が答えると役人は難しい顔をする。リュシアン様が横から言った。


「本人に聞いたって素直に認めるはずがないだろ。こんなにも同じことを証言する者がいるんだ。ジスレーヌには何かしらの処罰が必要だ」


「それなら、『裁きの家』に入っていただくというのはどうでしょうか?」


 令嬢の一人がどこか楽しげに提案してきた。ほかの令嬢たちも、「それがいいわ」と賛成している。役人そっちのけで話が進んでいく。


 私は動揺を隠せなくなる。『裁きの家』。それは……。



「ああ、それがいいかもな。あそこに一ヶ月も入れば反省するだろう」


 リュシアン様はせせら笑うように言う。役人は顔を青ざめさせた。


「リュシアン様! あんな場所にまだお若いご令嬢を入れるのはあまりにもお気の毒です!」


「この女は俺に毒を盛ったのだぞ? 本来なら牢獄に入れてもいいくらいだ。それを屋敷に幽閉するだけで済ませてやると言うんだ」


「しかし、あの屋敷は普通の場所ではありません。どんな目に遭うか……」


「なんだ、幽閉くらいで大げさだな」


「そうですわ。確かに呪いの屋敷なんて言われていますけれど、そんなのただの噂でしょう? きっと少し怖い思いをするだけですわ」


 役人の声をリュシアン様とご令嬢たちが打ち消していく。オレリア様も慌てた様子でやめたほうがいいと止めてくれるが、リュシアン様は彼女の言葉にさえ耳を貸さない。


 リュシアン様はひどく冷たい目で私を見ると、黙ったまま部屋に控えていた兵士に命じた。


「ジスレーヌを連れて行け。ひと月の間『裁きの家』に閉じ込めるんだ」


 リュシアン様の冷たい声は、いつまでも耳に残った。私は必死で「その方たちは嘘をついています」と叫んだが、その声が届くことはない。


 その場にいる者で私に同情の視線を向けてくれるのは、オレリア様だけだった。


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