聖女から魔女に⑨
それでも、私は騎士たちから魔王討伐の形ばかりの褒美をもらっただけで、王様の顔を見ることはなかったけど。
その後、ウォーレスとアラキナは、王族の護衛として働き始めた。
だけど、私は王都の中で、粗末な家を授けられ、腫れ物のように扱われているだけ。
それは、私が孤児で、ウォーレスは貴族の一員であり、アラキナは豪商の令嬢だったから生じる違いかもしれない。
私の掌に五芒星の聖女である証が示された後でも、私を見る王都の人々の目は、訝し気だったし。
どこの誰ともわからない人間の子供だから。
この国の孤児は、聖女であってもそんな扱いだ。
でも、ウォーレスは両親が亡くなったあと、その家督を叔父に譲ることになったらしいし、アラキナの両親は強盗に襲われた上に、そのことが原因でアラキナは借金を背負うことになり、身を落とすか、聖女の護衛役を決めるトーナメントで優勝すればチャラにしてやる、という借金取りの言葉に後者を選んだわけで、二人は恵まれているわけでもなかったけど。
それでも両親がわかっていて身分がある、という背景は、国民たちの信頼を得るには十分で、それは王族でも同じだった。
だから、二人を見捨てた罪で投獄されなかっただけ、マシだったのかもしれないと思っている。