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聖女から魔女に⑥

 私はウォーレスを一目見ようと、通りに目を凝らした。

 だけど、目を凝らした時に感じたものに、体が震えた。

 まさか。


「ベル、どうしたの?」


 私の異変に気付いたのか、アラキナが尋ねてくる。

 私は信じたくなくて、呆然と王女一行の馬車を見つめる。


「おお! エメリナ様が手を振って下さった!」


 私の周りは、私の気持ちとは無関係に盛り上がる。

 エメリナ様と呼ばれた王女のその横に、良く知っているウォーレスが手を振っていた。

 だけど、私の視線はウォーレスの奥の人物に向かっていた。


「ま……おう……」


 私のこぼした言葉は、歓声でかき消される。


「王国万歳! 勇者様万歳!」


 世界がすっかり平和になったと信じている人々は、喜びを爆発させている。


「え? ベル、何か言った?」


 アラキナが心配そうに私を覗き込んでくる。


「ベル、顔が真っ青よ」


 私は首を激しく振る。

 そんなはずはないのに。

 あの時、きちんと倒したはずだったのに。


 どうして、あの魔王が存在しているんだろう。

 勇者の近くに。

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