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聖女から魔女に⑤
「でも、王城でウォーレスに会うと、いつでもベルベルって、五月蠅いんだから!」
アラキナの言葉に、私は苦笑する。
「それは、嬉しい話ね」
最初の頃は、ウォーレスの私に向けた気持ちに戸惑っていた。
でも、魔王を倒したころには、私の気持ちは固まっていた。
だけど、その後からウォーレスには会えなくなったから。
だから、直接この気持ちを、ウォーレスに言ったことはない。
「……ねえ、ベル! 気分転換に、街に出ましょう!」
私の表情に気づいたのか、アラキナが提案してくれる。
私はすぐに頷いた。
*
「今日は、いつもにも増して、人出が多いわね」
アラキナの言葉に、私も頷く。
最近は人の目が煩わしくて、たいていフードをかぶっている。
「エメリナ様御一行だ!」
通りが突然湧く。
アラキナがハッとした表情になる。
「そうだわ。今日は第一王女が視察に行く日だったわ。だから、王女とウォーレスを一目見ようと人が集まってるわけね」
アラキナの説明に、なるほど、と納得する。
国民にとって、王族は当然のこと、勇者も崇拝の対象になっているからだ。
聖女とは、違って。