聖女から魔女に③
「でもウォーレスが、ベルのことを魔女だなんて言うはずがないわ!」
アラキナが首を横に振る。
「そうね」
私は頷く。
ウォーレス = ホール。私と共に魔王を倒すために戦った勇者。
彼もまた、私が信頼する一人だ。
だから、アラキナの言うことは、間違っていないはずだ。
私の聖女としての力がなければ、魔王を倒すことはできなかったのだから。
「ただ……」
アラキナが瞳を揺らす。
「ただ?」
私が首を傾げると、アラキナが重そうに口を開いた。
「第一王女は、ウォーレスのことを気に入っているの」
その言葉に、私はドキリとする。
「それは……人間として?」
そうであってほしいと言う願いは、アラキナが首を横に振ることで否定された。
「恋愛対象として、よ。王様にも直談判していると耳に入ってくるもの。魔王を倒す勇者なのだから、王女の伴侶としてふさわしい、と。でも!」
アラキナの言葉に、私は小さく頷く。
「昨日も、ウォーレスからの手紙が来たわ。求婚の」
私の言葉に、アラキナがホッとした顔になる。だけどすぐに、表情が硬くなる。
「だから、ベルのことを邪魔だと思っているはずなの」