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聖女から魔女に②
「ベル。あなたが魔女だって噂、知ってる?」
深刻な表情で私の家に尋ねてきたのは、アラキナだった。
アラキナ = リリエンソール。勇者と共に魔王退治を一緒に戦った女性剣士。
私が信頼する人間の一人だ。
私は肩をすくめる。
「ええ。知ってるわ。でも、下らない噂よ」
私は苦笑して、大丈夫だとアラキナに告げたのに、アラキナの表情は硬いままだった。
「……それが、そうでもないかもしれないの」
私は眉を寄せる。
「どういうこと?」
「……王女の口からも、その話が度々出るの」
アラキナは、魔王退治から戻った後、その腕を買われて、第二王女の護衛として雇われている。
「……あんな下らない噂が、王室の人間の耳まで届いているってこと?」
だけど、アラキナは首を横に振った。意味が分からなくて、私は眉を寄せる。
「どういうこと?」
「第一王女が、言っているそうなの」
「……第一王女が?」
にわかに信じられなかった。
今、第一王女のそばには、護衛として勇者がいる。
私の聖なる力を、間近で見ていたはずの、勇者が。