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聖女から魔女に⑱
「情報って?」
「ホール男爵家の家督が叔父にわたってしまった理由と、」
「我が家が没落してしまった理由の」
2人の目には、怒りがちらついていた。
「どういうこと?」
「それはおいおい話すよ。今は、逃げよう」
「そうよ。こんな腐った国に留まるのなんてまっぴらよ」
「……でも、魔王は」
魔王の気配は、今も消えることなくこの地下牢まで伝わってきている。
「いいの! 行くわよ」
「そうだ。ベルの言葉を信じない国に、忠誠など誓えるわけがないし、この国がどうなろうと、ベルが心配する必要なんてない。それだけのことをこの国は、ベルにしたんだ」
「でも、魔王は私たちを消そうと動き出すんじゃないの?」
「それは大丈夫だ」
ニコリ、とウォーレスが笑う。
「この国に未練はないし、この国がどうなろうと知ったことじゃない。だから、魔王がこの国にどんなことをやろうと、私もベルも、魔王を倒すことはない。だけど、ベルに害を及ぼすのであれば、今度こそ倒すってギャレスには言ってきたから」
え、と私は声を漏らした。
あまりにも荒唐無稽なことだと思ったからだった。