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聖女から魔女に⑰
「ベル、行こうか」
ウォーレスが立ち上がり、私に手を差し出してくる。
「行くって、どこに?」
私の疑問に、ウォーレスとアラキナが顔を見合わせて、肩をすくめた。
「この国ではないどこか、ならどこでもいいわ」
「俺は、ベルがいれば、どこでも」
「私も……ウォーレスとアラキナがいれば、どこでも行くわ」
「あー。いちゃいちゃするのは、次に落ち着いてからにしてね」
「アラキナも、って言ったのに!」
私がムッとして否定すると、アラキナがクスリと笑う。
「いいわね。その方が、ベルらしいわ。やっぱり、誰かさんがいないと、ベルは元気が出ないわね」
アラキナの言葉に恥ずかしくて顔を伏せる。耳と頬が熱い。
確かに、こんな風に軽口をたたいたのは、魔王を倒す前夜にあったきりだったような気がする。
「でも、二人はいいの?」
私の質問に、二人は首をかしげる。
「何が?」
「二人とも……王族の護衛をしていたでしょう?」
「あれは……情報を集めるためだから」
ね、とアラキナがウォーレスを見ると、ウォーレスもうなずいた。