聖女から魔女に⑯
人の気配にハッと目を覚ます。
体力温存のために横になっていたけど、魔王討伐の旅の時と同じように、気配は察知するように気を張っているからだ。
「ベル」
その声に、驚く。
「ウォーレス?」
牢の外に視線を向ければ、そこにはウォーレスとアラキナがいた。
「ベル、お前魔女だとか言い出しただろ。やめろよ」
「ウォーレス、言いたいことがあるのは私も一緒だけど、早く出してあげましょう?」
二人の言葉に私はまばたきをする。
「どうして?」
「何を言ってるんだか。助けに来たに決まってるだろ」
「あら? ベルは私たちのこと、疑ってたの?」
二人の答えに、私は首を横に振る。
「疑ってない。でも、助けに来たって?」
「言葉通りだよ」
「そうそう、もうこんな国に忠誠を誓うなんて真っ平よ」
肩をすくめるウォーレスに、アラキナがうなずく。
「真っ平って……」
カチャカチャと牢の鍵が開いて、中に入ってきたウォーレスが、私を抱き締める。
「魔女だとか言い出して、無茶しやがって!」
「本当よ、ベル。その話を聞いたとき、すぐに処刑されちゃうんじゃないかって、ヒヤヒヤしたんだから!」
ウォーレスの温もりにホッとしたし、私たちを見るアラキナの目は優しかった。