聖女から魔女に⑮
「魔女風情が、聖女の名を語るなど!」
ペッと見回りの騎士が私に唾を吐いた。
それまでの私は、何も反応していなかった。だけど、これは賭けだから。
私は顔をあげると、ニヤリと笑って見せた。
私の今までにない反応に、騎士が怯えを見せる。
大丈夫。私はやれる。
「魔女風情、か。そんなことを、騎士風情に言われたくはないな。私はれっきとした魔女だ。魔王討伐もできぬ騎士風情には、私の力などわからぬだろうがな」
私の侮蔑の言葉に、騎士がカッと顔を赤くする。
「何を!」
騎士が剣を牢に差し込む。
「ああ、私に害をなしてみよ。後悔するのは、そなただぞ」
「なっ」
騎士の剣先が、揺れる。
「私とて、この100年を無駄にしていた訳じゃない。前の轍は踏まぬ。おめおめと騎士風情に、いや、人間風情に殺されはせぬぞ」
目を細めると、怯えた騎士が剣を引いた。
とりあえず、ここは切り抜けた。
でも、私の目的は、長く生き永らえること。
「王に告げるがいい! 魔女が目覚めたと。これから私に触れるものは皆、呪いに苦しみ死ぬことになるとな!」
騎士はきびすを返すと、走り出す。
私は、生き永らえるだろうか。