聖女から魔女に⑬
「どうなるのかしら」
静まり返った牢の中に、私の声だけが落ちる。
見張りは、時折私の牢を覗いていくけれど、その目には憎悪が光っている。
聖女の証が出てから王都につれてこられ、教会で預かってもらっていた時にも、私を興味深そうに見ている人はいたけど、私に好意的な視線を向けてくれる人はいなかった。でもそのときには、あんな憎悪の視線を向けられたことはない。だから、自分が本当に魔女なのかもしれないと錯覚してしまうほど。
あの二人だけだった。
私と普通に関わってくれて、私に好意を向けてくれたのは。
さっきだって、二人は堪えていたのだ。
ウォーレスの拳は握りしめられ過ぎて真っ白になっていたし、アラキナの目からは、今にも涙がこぼれ落ちそうだった。
二人は、私が聖女だと信じてくれている。
そして、きっと私がつれてこられるまでに、何度も抗議をしたんだと、信じられた。
だけど、私が孤児だから。ウォーレスは貴族とはいえ家督も継げない身分だ。そしてアラキナは没落してしまった元令嬢なだけだ。
王族に反論する力など、ほとんどその身一つしかないのだ。
だから、私はそれなら二人を助けるために引こうと思った。
聖なる力があるだけの無力な私は、魔王を倒すときにしか役にはたたないから。
だから、そのときのために、二人のために、私は生き延びたいと思った。
あのとき、私のために命をかけてくれた二人のために。