その8
国王はアホポンを病死させると言った。
でもなぁ、殺しはダメだろう。
「へぇ、跡取り一人なんだろう?」
「クアドラ公爵家は元王族だ。クアドラ公爵家から養子をもらってもいい」
「ああ、学園最下位クラスの令嬢な。あの令嬢が婿さんもらったら、簡単に乗っ取られそうだな。ハハハ!!」
「なっ!!」
クアドラ公爵が赤い顔をする。
へんっ! 今さらわかったのかよっ!
「可愛い娘をバカにされるってどうよ?
えっ?
クアドラ公爵家には三ヶ月前にうちの娘をバカにするようなことされてんだっ!
俺のは娘さん本人には、バカにされたことを知られてないだけマシだろうがっ!」
クアドラ公爵は赤から青に変化した。器用な男だ。
「社長。論点がズレていますよ」
「あ、悪い悪い。で、なんだっけ?
あ、そうそう、アホポン王子な」
「ポンシオ王子です」
「殺すことは、許しません!
ナディアが夢見悪いのは、可哀想だろう。
それにな、あんたら夫婦の教育のせいだろうが?
十二歳には、悪癖がわかっていたんだからさっ。その時になんで、叩き直さなかったのかなぁ?
ナディアがどれほど傷ついたと思ってんの?」
「社長。またしてもズレていますよ」
あーもー、長男がうるさい。
「とにかく、再教育がんばって!
それであんたらが道連れ没落しても、それはあんたらの責任ってことだ」
「わ、わかった」
「私はいつでも相談に乗りますよ」
長男がまた追い討ちかけて、話し合いは終わった。
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鉄道が機能しなくなって通行税がとれなくなったトルエバ王国は、馬車で作物などを売りに来たが新鮮じゃないので買う者がいない。
二年後『トルエバ王国』という名前はなくなる。
「なぁ、トルエバ家ってどうしたんだ?」
「土地と城を買い取りましたから、そのお金持って夫婦で船乗りましたよ」
「は? アホポンは?」
「さあ? 聞くつもりもありませんでしたし。あ! ビビアナさんはアリロナ近くの小さな町で店に出ているそうです。あの夜会の翌週から」
「アホポンはふっつうのヤツだったもんなぁ。城下町に溶け込んでいるかもなぁ」
「そういえば…。ビビアナさんが皿洗いの男を食わせてるって噂もあるみたいてすよ」
「まっさかぁ。ハハハ…」
「まさかですよね。ハハハ…」
「じゃあ、ナディアの結婚祝い、よろしくな」
「はい。でも、ナディアは何であんなとこ欲しいんでしょうね?」
「嫁曰く、オヤジの商才を継いでるのは、ナディアだそうだ。やらせてみたくなるだろう?」
「それを聞いたら、商船継いでる四男が泣くので他言しないでくださいよ。あいつ、プライド高いから」
「わかった。三男から連絡は?」
「新しい大陸を見つけたそうですよ。指定された辺りに奴隷を百人ほど送っておきました」
「食料は、充分に用意したんだろうな?」
「もちろんですよ。奴隷は宝ですよ。彼らほど優秀な従業員はいません。大事にしますよ」
俺は子供の時から奴隷を買うことをよくやった。買った奴隷は決して奴隷扱いしない。普通に人間として従業員にする。
奴隷たちはそれに感謝して一生懸命働くし、こちらは安価で人口増えるし、いいことだらけ。
さらに、時々すごい拾い者もいる。今、俺の秘書クレトとイシドロも元奴隷。どこぞの貴族だったとかで五ヵ国語くらいしゃべれる。貴族だったから奴隷がどんな扱いを受けるかをよく知っているので、本当に俺に尽くしてくれる。
『奴隷を奴隷扱いしない』これ、ソラナス家の鉄則!
子供たちにも浸透している。