その7
〜社長の思惑〜
で、なんだっけ?
あ、そうそう独立な。これは、もう前から決まっていたことなんだけど、な。国王たちには内緒で。
もう『陛下』なんてつけないぞ。尊敬も畏怖もないからな。
アホポンが昨日ナディアに言ったことを聞いて、それだけで終わらせるわけにはいかない気分だった。
本当のアホだ。最後にまたやらかしてくれたよなぁ。
隣に座る秘書もとい長男に「トルエバ駅の交渉任せるよ」と呟いた。長男は、にやぁと嫌な笑い方をした。その笑いオヤジに似ているぞ。きっとこいつは大物になる。
「トルエバ駅は閉鎖します」
長男の一言で国王と偉そうな奴らは立ち上がった。
にしても、長男の決断すごい。
「そ、それだけは…」
国王はすがる。
「閉鎖しなくても、汽車を回さないので、同じようなものですよ」
国王含め五人は顔が白くなってる。
「なんとか他の条件はないか?」
国王、まだすがる。
「どうもあなた方はご理解が足りないようだ。南領地と東領地が我々とともに独立宣言をした。ということは、この国は約半分になった。今のこの国に何の価値があるんですか?」
長男…容赦ない。
「まあ、でも。そちらが望むなら、南領地と東領地は戻して差し上げましょう」
「ほ、本当か?!」
「ええ、本当ですよ。独立するのは、ソラナス領だけにしましょう」
傍聴席の貴族もびっくりしている。
長男が傍聴席に向かい話す。
「トルエバには汽車を回さないと言いました。流通のない領地は価値が半減ですからね。みなさんにそんな領地をお願いするわけにはいきませんから。
トルエバの領地より広くて発展している土地などいくらでもありますよ。
ソラナス家を信じてついてきてくれたみなさんに損はさせませんから、ご安心下さい」
傍聴席の貴族から歓喜の声が聞こえる。
「土地管理については次男が責任者ですので、次男と話をしていただきます」
次男が立ち上がった。
「これから、屋敷で説明会と領地決めをしまーす。領地が決まらないとご家族も引っ越しできませんもんねっ。とっととやっちゃいまっしょう!
では、行きますよぉ!」
こちらの軽いノリの秘書もどきは次男だ。長男が言ったように領地の統括をやらせている。貴族たちを連れて、会議室を出ていってしまった。半分の貴族がいなくなった。
「連判状に今から名前を書いてもいいのですよ。こちらに、おいておきますね」
長男の更なる追い討ちに、さらに半分の貴族が名前を書いて次男を追いかけた。
長男…えげつない。
「あらあら、ずいぶん寂しくなりましたね。でも正直言いまして、トルエバはこの人数で管理するのも狭いくらいですよ。僕たち兄弟が開発してきた土地に比べたら小指の爪程度です。
そんな国がどうして生きてこられたのか?
考えた方がいいですよ…」
長男は残った貴族に言ったのか国王たちに言ったのかわからない。ただ、どちらにも強烈なパンチだ。
にも関わらず、どちらも動けなくなってしまっている。
「トルエバ駅を封鎖しなくなるような案を持ってきてください。昨日、みなさんで話し合ったのでしょう?」
国王たちは動かない。
「トルエバ国王こちらは領地を返還しましたよ。そちらは、どうするんです?」
俺は暗に『アホポンをどうするんだ?』と聞いている。
「ヤツには病気になってもらう予定だ。病気が悪化することは、容易に考えられるだろう」
おっ! 国王! 俺が聞きたいことわかってんじゃん!