その11
〜パパの夢の続き〜
ナディアは小さいころから俺の前世の話を物語を聞くかのように聞くことが好きだった。
俺は、ネズミーランドも箱庭大涌園もTSAにも有牛温泉にも行ったことはなかったけれど、夢の世界のようにナディアに話してやった。
近くの温泉旅行は何度も行ったからな。温泉のよさはナディアも知っている。
話だけだけど。
『トルエバ王国がほしい』と言われたときは何をしたいのかさっぱりわからなかったが、ナディアはこの事業を大成功させた。俺が話した夢物語を実物にしてみせた。嫁の言うように規定に囚われない商才があったようだ。
俺はというと、社長を長男に譲り三男が未開拓地を切り開いている大陸へ来た。
そこで、念願だった米農家をやっている。俺の秘書クレトとイシドロは優秀なので次男に預けてきた。
会長という権限を使い田んぼになるまではかなり金を使ったが、生涯稼いだ額の数%なので問題ないだろう。
やっぱり、俺は最後には農家に戻ってきた。俺のきゅうり! 最高!
嫁はついてきてくれた。
が、最近この大陸にナディアが来たらしく、娘とともにそちらへいってしまった。俺はうまい牛丼が食べたくて、田んぼだけでなく大豆畑と大豆発酵工場と酪農も始めたから、いくら奴隷たちがやってくれるとはいえ放っては行けない。
俺だってナディアにも孫娘にも会いたいよ。
え?
『嫁が娘とともに』はおかしいって?
ハハハ。
こちらに来てから俺が元気でなぁ。嫁が六人目を生んだんだ。それがまた女の子。ナディアにそっくりで天使ちゃん。
かぁちゃーん、天使ちゃんと帰ってきてくれよぉ。
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〜長男の現実〜
こんにちは、長男です。
無茶な父親と豪快な次男と奔放な三男と神経質な四男と可愛いナディアと優しいかあさんが実家の家族です。
父親である社長から、鉄道業全般を継いだ後、海岸線に沿った大回りの円も開通させました。
社長の夢アイディアで、線路を二本にしたらさらに効率的になり、汽車と汽車との事故も減りました。汽車と動物との事故はできるだけ金網をしてますが、ある程度諦めています。
そして、私の息子たちも成人したので業務はほとんど任せています。
先日、会長となった父親から無茶な連絡がありました。
「ナディアとミディアに会いたいから、新大陸に鉄道通せ」
ミディアは末の妹です、私の息子たちより年下の。
さすが会長! 規格外!
は、置いといて。
豪快次男に人材の手配を頼みました。
「えー、結局、秘書のクレトとイシドロをオヤジに返すのかよ」
即戦力のいい人材を紹介してくれます。私のおとなしい次男とともに、線路用鉄と汽車一式を船に積んで、新大陸へ行かせました。
これは後の話ですが、おとなしいと思っていた次男は、地味に力を貯めるタイプだったらしく、新大陸で鉄道王を目指しているようです。