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#7 冒険者ギルド

 フレデリカはこれからも僕の側にいると断言した。

 つまり、僕と同じ冒険者になると考えていいのだろうか。


 ギルドから依頼を受けてフレデリカにはお留守番をさせようにもついてくるよな、絶対に。 

 冒険者登録をさせた方が身分証も得ることが出来るし何かと都合がいいか。

 でもこれは僕の一存では決められないな。冒険者なんて常に危険が伴う仕事だからフレデリカがどうするか決めるべきだ。答えはもう察しているけど……。


「フレデリカは冒険者になる気はあるの?」


「それはもちろんですよ。何時如何なる時もポルカ様のお側にいるためには冒険者の資格が必要です。それに無一文の私にお洋服を買っていただけるのですからその代金も稼がなくてはいけませんし」


 服は僕がプレゼントするつもりだったがフレデリカはやはりそう捉えてしまうか。

 まあ、フレデリカが返したいなら別に構わないけど、どうせ共同の資金になると思うから必要ないんだけどな。


「そんなことより、どうですかこの下着は。気にいっていただけましたか?」


 ちなみに僕はフレデリカの服を用意する体で女性用の服屋に訪れている。

 街中を歩くための私服はもちろんのこと、冒険者用の衣服や装備などの商品が充実している。

 特に装備は女性用のものを売っているところが男性用に比べて少ないため、ここはフレデリカの衣服や装備を揃えるためにはうってつけだ。


 しかし、今選んでいるのはフレデリカの下着。

 楽しそうに選んでいるのはいいのだが、周りから向けられる女性の視線が痛い。ある意味ここは地獄だ。


 けどまあ、フレデリカはスタイルが良いだけあってどの下着をつけても魅力的に感じる。

 って、いかんいかん。こんなところで発情してしまえば通報される。ここは男の本能を嫌でも抑える。


「ポルカ様? もしかして、こちらはあまり好みではなかったですか?」


「………買いで…」


 俯きながらそう答えるとフレデリカは喜んで店員を呼びつけた。他にも洋服の相談をしているようだ。

 女の子の買い物は大変だと風の噂で聞いたことがあるな。フレデリカもあんな布の服で生活してたのだから洋服を選べることに楽しさを覚えているのだろう。

 彼女が満足するまで待つことにしよう。あと僕の財布が空にならないかも祈ろう。


 それから一時間近くが経過した。

 やっと終わった。

 フレデリカは初めて出会った時とは見違えていた。


 肌を露出させ過ぎないように作られた紺色をベースとする短めの上着。

 動きやすさを考慮したのかショートパンツに膝上のニーソックス。靴はロングブーツだ。


 元の美しさもあるが、服装も相まって目を奪われるほど綺麗だった。


「凄く似合ってる」


「ありがとうございます。でも私、はしゃぎすぎちゃって……それにポルカ様の所持金も半分近く使わせてしまって……」


「また稼げばいいことだから気にしなくていいよ。次は冒険者をやるなら武器が必要か。ところでフレデリカって魔物と戦えるの?」


 この間まで一人で魔物を倒せなかった男が相手にこんな質問をするとはな。

 でもこれはとても重要なこと。

 厳しいことを言ってしまうが戦えないのなら足手まといになる。僕が一番それを実感していたのだから間違いない。


「心配しなくとも魔物と戦えますよ。私が森の中で生き延びていたことをお忘れですか?」


 フレデリカの言葉で昨日、あのあとも詳しく話を聞いたら逃げる途中で魔物を倒していたと言ってたことを思い出した。この質問は余計なお世話だったか。


「そういえばそうだったな。じゃあ武器を買いに行こう」


 僕たちは近くの武器屋を訪れた。

 品揃えはそこそこで上等な武器を必要としなければここで買っても申し分ない。


 フレデリカは一通り店内を物色し二本の短剣を手に取った。

 刀身が少し反れている三日月のような短剣だ。沢山の冒険者を見てきたがあの短剣を使っている人は見たことがないかも。


「それがいいの?」


「はい。これが一番手に馴染みます。これを買っていただいてもよろしいでしょうか?」


 値段を見てみると今ある全財産の八割は持っていかれるが買えないことはない。

 何よりフレデリカが使いやすいのであれば買うべきだろう。


 僕は二本の短剣を購入した。

 これで残りの金は三日生活できる程度だ。しかも一人の計算だからフレデリカのことも考えると二日も持たない。


 購入した短剣をフレデリカは大事そうに抱えている。

 念のため危ないからと腰に携えるように忠告してギルドへ向かった。


「ここがギルドですか。大きいですね」


 ギルドの入り口に着くとフレデリカは上を見ながら呟いた。

 他の建物と比べれば大きい方の部類に入る。けど僕は見慣れているからフレデリカみたいな感想は抱かない。


 とりあえず入り口で突っ立っているわけにはいかないため、中へ入ることにした。


 相変わらず賑わっているな。

 時間的には昼だからギルドにある食堂に人数が集まっている。これが朝なら依頼を受けるため、夕方になれば依頼を終えた者が報告にと受付に行列ができる。夜になれば昼同様にここで食事を取る者の多い。


 周りを一瞥するがアレスたちはいないようだ。

 ちょうどいい。アレスたちに見つかったら何かと面倒ごとになりそうだから今のうちにやることは済ましておこう。


 フレデリカの冒険者資格を取るために受付の方に向かうが、


「おっ、アレスのとこのポーション坊主じゃねぇか。アレスはどうした、ってお前は無能だからって追放されたんだったな! ハッハッハ!」


 この前、あの場に居合わせていた冒険者か。アレスたちじゃないとは言え面倒な奴に絡まれた。

 そしてフレデリカの表情が怖い。今にも新しい短剣の錆びにしてやると物語っている。

 どうして僕の周りはゴレアスさんといいフレデリカといい血気盛んな人しかいないんだろう。


 こんなのは構わないのが一番だ。


「行こうフレデリカ」


「いいんですか? お望みとあらば首を跳ねさせますが」


 なにそれ、マジで怖いんだけど。どうしたらそんな発想に至るわけ?

 後で教えるつもりだったが、先にここのルールを教えた方が良さそうだ。


「ギルド内は特別な理由がない限り冒険者同士の私闘は禁止されているんだ。フレデリカはまだ冒険者じゃないけどギルドで面倒は起こしたくないから我慢してくれ」


「……ポルカ様がそう言うのであれば…」


 納得はいっていないようだが握っていた短剣の柄を離した。


「おいおい、よく見たら偉いべっぴんさんのダークエルフを連れてるじゃねぇかよ。しかも胸当てでよく大きさはわからんがなかなかの上物……。なぁ、そんなガキの御守りなんてしなくて俺たちに付き合ってくれよ」


 ったく、こっちが身を引こうとしているのに……。

 男がフレデリカに手を出そうとしていた。

 ルールがあるとは言え、そんな鼻の下を伸ばした男にフレデリカを触らせてたまるか。


 僕はフレデリカと男の間に入って止めようとしたが、


 ドンッ!


 入る隙もなく男は床に尻をついていた。

 やったのはフレデリカだった。

 あの一瞬で向かってくる男の手を引き、重心をずらし、体勢を崩したところに軽く足払い。華麗な早業だ。

 男は自分に一体何が起きたのかわからず驚きの表情を隠せていない。


「ポルカ様、これは正当防衛でいいですよね?」


 ニッコリとした笑顔で聞いてくる彼女の裏には相当怒りが溜まっているように見えた。

 そんな彼女を見て僕は「そ、そうだね」と答えるしかなかった。


次回、フレデリカ暴れちゃいます(ちょっとだけ……)


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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