#6 新しい仲間?
ほんとに序盤、ちょいエロというほどでもないですが注意。
朝日がカーテンの隙間から部屋に差し込む。
昨日は色々とあった。そのせいかまだ眠たい。
今日くらい二度寝をしても怒られない。というかパーティにも入っていないんだから誰かに迷惑をかけることはない。
朧気な意識でもぞもぞと布団の中を動いていると、
ムニュッ
右手が何かを鷲掴んだ。
何だろう、これ以上のものはないくらいとても柔らかい。すべすべて肌触りもいい。人肌に近い暖かさで安心する。ずっと触っていたいくらいだ。
「ひゃっんっ!」
何やらたまたま突起物のようなものに指を引っ掻けてしまったのか、女性らしき声が聞こえた。
未だに瞼が完全に開かないが微かに開けてみると、ボヤけているが金髪の少女? 何処かで見たことあるような……。寝起きで脳がうまく機能していない。
「もうっ、ポルカ様ったら。まだ朝になったばかりですよ。でも、ポルカ様がそういう気分でしたら私は朝でも構いせ……」
彼女の声を聞いた途端、僕の意識は完全に覚醒した。
「フレデリ、ぐぁ、あだっ!」
そして、驚きのあまりベッドから転げ落ちた。
何故だ、何故彼女が、フレデリカがここにいるのだ。しかもほとんど裸同然の格好で。
いや、ここは落ち着けポルカ。冷静さを欠いてしまえば状況理解が出来なくなる。
一呼吸したところで順を追って思い出してみよう。
まずは昨日、『ポーションの秘伝書』で作ったポーションの効力を試すために西の森に行った。初めて自力で魔物を倒せたことに喜びと達成感を感じていたのは今でも覚えている。
それで……途中でフレデリカと出会ったんだよな。
彼女は傷だらけで毒も受けていたから僕のポーションで治してあげた。奴隷痕もポーションで消してあげたっけ。ここだけの話、僕のポーションは何でもありでは、と思っていたのは秘密である。
その後は泣き出すフレデリカを慰めて街に戻った。
既に日も暮れていたしフレデリカもろくに休息も取れていなかったから疲れも溜まっているだろうと僕が借りている宿に泊まったんだよな。
確か男女二人が同じ屋根の上で寝泊まりするのは色々とまずい──特に僕が──と思ったから部屋をもう一つ借りようとしたけどフレデリカが今日は側にいたいと言ってた。
まあ、部屋代が浮いたことには感謝している。しかし借りている部屋は一人用なのだからベッドも一人用のものが一つだけ。お陰でフレデリカと寝ることになり現在はこんな状況になってしまった。
ふぅ、大体こんな感じか。
結構鮮明に思い出せたじゃないか。
では、僕にはやらなくてはいけないことがある。
「この度はっ、大変申し訳っございませんでしたぁっ! フレデリカさんのその……胸があまりにも良く、つい僕の右手が暴走してしまいましたっ!」
僕は床が頭にめり込むのではないかと思えるほど強く謝罪する。
フレデリカは昨日、奴隷時代は男に無理矢理胸やお尻を触られていたと言っていた。故意ではないが、同じことをやってしまったことには変わりない。
彼女が嫌がることをしてしまった。どんな罰でも潔く受け入れよう。それが僕に出来る最大限の償いだ。
「あ、あのポルカ様、頭を上げてください。私は気にしてませんし……私の方からこの身を捧げたいと思っておりまして……」
フレデリカは頬を赤らめながらモジモジと喋っていたが後半は何て言っていたのか聞き取れなかった。
まあ、今はそんなこと別にいい。
「……フレデリカは怒ってないの? その……結構触っちゃったし……」
「そんな、怒るなんて。確かに前は男の人に触られるが嫌でした。でもポルカ様は特別です。ポルカ様から私を欲してくれて嬉しく思っていますよ」
ど、どうやらフレデリカは許してくれるらしい。
それにしても僕が特別という意味はどういうことだろう。
彼女に何かしたとすれば、毒を打ち消して、怪我を治して、奴隷痕を消したことぐらいか。
でもこれは僕がというよりはポーションが全て解決してくれたに等しいだろ。僕自身が彼女にやったことと言えば泣き出す彼女を慰めたぐらい?
それで彼女の特別になっているのだからよくわからないな。
それはさておき、フレデリカも起きたのであれば昨日は話せなかった問題をどうにかしなくてはな。
「なあ、フレデリカ。君はもう自由になったがこれからどうするんだ?」
「もちろんポルカ様のお側にいますよ。それに、ポルカ様が良ければ私はポルカ様に一生を捧げるつもりです」
即答だった。
冗談……ではないよな。あの真っ直ぐな瞳な真剣そのもの。冗談で片付けることはできない。
「えっと……一生を捧げるって……フレデリカは僕みたいな人と結婚しても構わないと?」
「はい! 私を奴隷から解放してくれたポルカ様の勇姿はとても素敵で、その……一目惚れというものでしょうか。この人となら幸せな家庭を築いて、子供も沢山授かって、毎日を楽しく……って迷惑ですし気持ち悪いですよね。昨日初めて会った女が一目惚れだからとポルカ様と結婚した様子を妄想しているなんて……あははは…」
ああ、もう。急に悲しそうな表情をしないでくれ。乾いた笑いをしないでくれ。こっちが見ていられない。
彼女の言葉は本気だ。嘘偽りでもない心から出た本心。少なくとも僕はそう感じ取れた。
……結婚かぁ。考えたことがないわけではない。
しかし、残念なことにこの街に来て出会いという出会いはしていない。
関わった女性を挙げるならば、クズパーティの魔法使いメディア、それと同族の回復師エレン。ギルドの受付嬢数名、あとはギルドマスターぐらいか。
メディアとエレンはまず無理。あんなの付き合っている姿を想像するだけで反吐が出る。こっちから願い下げだ。
受付嬢もほとんどが年上のお姉さんって感じだ。年下の僕なんか相手にされないだろう。
ギルドマスターは……付き合える男がいるのなら見てみたい。容姿端麗なのは認めるがあれに物理で勝てる奴などいるのだろうか。強すぎるが故に婚期も逃しつつあるのでは。
一瞬悪寒を感じた。まさかギルドマスターが聞いてる訳ないよな。
──話が逸れた。今はフレデリカの話だ。
率直に言うと、彼女が僕のお嫁さんになることはとても嬉しい。当然疚しい気持ちは無しで。いや、正直言うとちょっとだけある……。
だが、出会って一日も経たないで結婚に至るのは彼女の人間性も理解しきれていないところもあるからな。
ここは一つ案を出そう。
「う~~ん。フレデリカ、提案だ。君が僕に好意を抱いているのはわかった。でも僕は君のことをよく知らない。君だって僕のことをよく知らないだろ? だからしばらく一緒に暮らしてお互いのことを知ろう。結婚の話はそのあとでも遅くない」
「なるほど、同棲ですね!? それはもう結婚しているも同然」
ニヤニヤしているところ悪いが少し違うと思うぞ。
「わかりました。これからはポルカ様のことをもっと深く、身体の隅々まで知れるように精進します!」
こうして俺とフレデリカの同棲生活が始まる。
新しく出来た仲間までは良かったが、僕のお嫁さん(予定)になるのは予想外だった。
まあ、出会いはいつも突然にやってくるものだと母さんから聞いたことがある。これがそうなのだろう。
「じゃあこの話は終わり。とりあえず服を買いに行こうか。さすがにあのローブ一枚じゃ生活できないだろ」
「はっ! これはもしかしなくてもデートというものですよね!? であれば幸せな時間を一秒足りとも無駄にはできません。さぁポルカ様、早く行きましょう!」
服屋に到着するまでにあのローブ姿が人の目につくのは仕方ない。特に男性関係のトラブルが生じるかもしれないから、しっかりと隣にいてやらねば。
テンションが上がったフレデリカを追いかけて僕は街へ買い出しに向かった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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