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#3 ポーションの秘伝書

※9月7日 一部加筆

 ゴレアスさんのお店でポーションの素材を買って、街中をぶらぶらしてから拠点としている宿に戻った。


 一人で落ち着ける空間になってから改めて考えてみると僕は本当にパーティを追放されたんだよな……。

 

 これから僕はどうするべきか。


 一応まだ生活できる金はある。だがこのままではダラダラ生活してても一方的に減っていくのみ。

 魔物討伐以外の依頼をこなして金を稼ごうにも僕の実力からして一日で一人分を稼ぐので精一杯。その日暮らしは確定だ。


「はぁ……今日は溜め息しかでない」

 

 頭を悩まされるが金銭の問題は後回しにしよう。ポーションの素材費、宿代とかも考えて、うまくやりくりすれば一ヶ月はどうにかなる。


 それよりもこれだ。


 僕は隣に置いた本に視線を合わせた。

 ゴレアスさんから無償で貰った本。『ポーションの秘伝書』と書かれているが今思うとかなり怪しくないか?


 そもそも何だよ『ポーションの秘伝書』って。凄い剣術とか魔術が書かれた秘伝書が存在していることは知っている。その技で有名になった冒険者も多い。


 でもポーションって……ポーションを使った凄技でも書かれているのか? いや、ポーションを使った凄技って何だよ!


 一人ツッコミするのも馬鹿らしい。

 まあ、いいや。ここに書いていることが真実であれば、ポーションを使った凄技なんて馬鹿げたものは俺にとってもお似合いじゃないか。


 自棄になってきたから少し落ち着こう。

 それにしてもあの時はパラパラと軽く見て内容までは深く理解していなかったな。 

 せっかく貰ったんだから読まなきゃゴレアスさんに悪いよな。どうせ依頼を受けに行くのも今は難しいし時間は腐るほどある。


 僕は『ポーションの秘伝書』を手に取りページを(めく)った。

 やはり文字は所々廃れて読めなくなっている。ダンジョンに相当放置されていたのだろう。

 しかし、解読は不可能ではない。何せ、最初に書かれているのは『ポーション』の作り方だから。


 ポーションは『ヒポシ草』と呼ばれる薬草の成分を水に溶かすと作れる。

 だが、その成分を抽出することが難しい。()()()であれば抽出することすら不可能。

 クソメディアみたいな魔法使いでもできないことはないが、意外に繊細な作業だし魔力も使う。出来たとしても一日一本が限度だろう。


 それに成分を抽出してそのまま水に溶かしてもヒポシ草特有の強い苦味が残る。この苦味を消すには〝浄化〟と呼ばれる技法を使わなければならないが当然これにも魔力を使う。


 結果論を言えば苦味があってもポーション自体の効果は変わらない。ただ飲んだ時に苦味に苦しむか苦しまないかのそれだけ。


 しかしながら【ポーション職人】はその過程を飛ばし、魔力を大して使わずにポーションを作製することができる。もちろん強い苦味の効果もない。


 これだけ良いことずくめなのだから周りが言うように生産系の仕事に転職すれば間違いなく金には困らない。そうしないのは僕が冒険者に憧れているから。


「普通のポーション作り方か。なんだか拍子抜けだな。もっと特別なポーションの作り方が書かれていれば得した気分になれるんだけどなぁ」


 不満を漏らすがゴレアスさんが何の意味もなく僕に『ポーションの秘伝書』を譲ったとも思えないな。

 

 絶対に役に立つという言葉を思い出して更にページを捲る。

 それを繰り返していると気がつけば二時間が経過していた。

 時間の経過も気にせず熟読していたのか。

 いや、今はそんなことどうでもいい。この本、実はとんでもない代物だった。


「材料が足りないな。確かゴレアスさんのお店でも取り扱っているって言ってたよな……」


 僕は急いで宿を出た。

 そしてゴレアスさんに事情を説明してポーションになる素材を大量に買い込んだ。

 ゴレアスさんは今朝とは違った僕の生き生きとした顔に大変喜んでいた。


 生き生きとなるのも当然だ。ゴレアスさんのおかげで希望が見えたのだから。

 笑顔で感謝を告げると何故か知らないが涙目になっていた。


 そして、魔術が組み込まれた魔道鞄なんてものまで譲って貰ってしまった。

 一見普通の鞄だが収納できる容量は一メートル四方までの大きさだと言う。

 もともと魔道鞄は高価だ。決して僕が手を出せるものではないが、


「昔使ってたけど新しいのがあるから使わないのよ。それにそんなに買い込んで持って帰るのは大変でしょ? だからそれもあげちゃうわ」


 もう頭があがらない。あんなアレスたち(クズども)とは違う。いくら恩を返したところで返しきれないのは明白だ。

 僕は最大限の感謝を伝え、ポーションも欲しい時に欲しい分だけ入荷させることを約束して宿に戻った。






「よし、早速作ってみよう」


 手元の『ポーションの秘伝書』を見て素材を並べる。


 ポーションには欠かせないヒポシ草。

 できるだけ効力を高めるために用意した上質な水。

 今回作るポーションの決め手となる『パワル草』。


 この三つを一つに集めて魔力を流す。

 すると素材たちは光輝き、次の瞬間には細長いガラス瓶に入った赤色のポーションが出来上がっていた。

 ちなみに何故用意もしていないガラス瓶に入っているのかは謎である。僕はもうそういうものだと割りきっているが。


 それよりも、だ。

 ポーションが完成した。これは『ポーションの秘伝書』によると『パワフルポーション』というみたいだ。そのままの意味であれば力が増加するのかな。


 こういう時は試した方が早い。


 キュポン、とポーションのコルク蓋を引き抜き中身を一気に飲み干す。


「見た目の変化は特にないな。もしかして失敗? いや、普通のポーションは赤色にはならないから成功はしているはず……」


 ここで思い付いた僕は魔道鞄から拳より一回り大きい『アプル』という果物を取り出す。効果を実証するために事前に買っておいたものだ。

 

 僕はそのままの握り潰してみる。

 本来であれば僕の腕力では潰すことはできない。


 しかし、今の僕の目に移っているのは握り潰されたアプルだ。ゼリーみたいに潰れるのだから衝撃だ。


 でも、これで確信した。


「この秘伝書は本物だ。ここに書いてあるポーションがあれば僕も冒険者を続けられる」


 喜びのあまり叫び出しそうになったが宿を使っている人達に迷惑をかけてはいけないとここは堪える。


 そして僕は他のポーションの製作にも取りかかった。

 

 ちなみに握り潰したアプルは責任をもって食べました。

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