ACT.2 引越しのご利用は計画的に
万が一、否。
億が一、この小説を気にしてくださった方がいらっしゃいましたら、
大変遅れて申し訳御座いませんでした。
土下座して、全力でお詫び申し上げます。
先輩が「バイトを紹介してあげる」と言ったあの日から数日後。
あの日以来、俺は先輩を見かけていない。
まぁ、あの先輩の事だから最初から期待してはいなかった。
きっと、また軽くあしらわれただけなんだ。
なんて思いつつも、やっぱり期待してたりして。
でも、俺の期待はいっつもあの人によって、木っ端微塵に砕かれる。
そりゃもう塵になるまで、徹底的に。
風に吹き飛ばされてもう見えやしねぇ。
そして、今回も期待は先輩によって見るも無残な物に成り果てるわけですが。
しかし、今回は何かが違うようでありまして。
「…何事?」
バイトからの帰り道。
俺は自分の部屋の前で呆然と立ち尽くした。
なぜって?
だって、俺の部屋の荷物が怪しいお兄さん方に運び出されてるんだもん。
………。
いやいやいやいやいやいや!
だもん。じゃねぇよ俺!!
緊急事態!
エマージェンシィィイ!!
これは絶賛窃盗中なのか?
それとも、某中学生のホームレスよろしくの差し押さえ?
田舎の父さん、「解散!」なんて言われても困るぜ。
ダンボール食うのは嫌だかんな!
……。
そうじゃなくって!!
「と、とりあえず警察っ」
俺は携帯を開き119を…、あれ117?
あれ、警察って何だっけアハハ!
警察なんてなぁ、結局政府の犬なんだよ。
いっつも名探偵の足を引っ張るへっぽこ警部ぐらいしかいないくせにぃ!
優秀な警部は右○警部だけで十分なんだよ。
てか、いつの間に亀○さんいなくなったんだ?
まぁ、落ち着け主よ。
黙れ、腹の虫め。
そうカッかするな。腹が減るだろう。
お前に窘められる日が来るとはな。
くそぅ、末代までの恥じゃ。
ほう、主よ。
お前、子孫ができると思ってるのか?
だあ!うるさいな!
どーせ、モテませんよ!“彼女いない歴=年齢”の童貞ですよ!
でも、いつか俺だって…
そう現実逃避するな。
お前は、顔はまぁまぁ良い。あとは、性格だけなんとかせい。
今更性格なんて変更できるか!
俺は、ありのままの俺を愛してもらうんだ!
ならば諦めろ。
畜生!!
妄想よ、現実と化せ!
…末期じゃな。
あ、そうだ。
後ろに気をつけろよー。
…はい?
「君」
「はひぃ!?」
携帯を持っていた手首を捕まれた。
後ろを振り返れば、怪しいお兄さん方の一人がいらっしゃる。
わぁお。
逃○中のハンターさんみたいなナイスガイ。
捕まったってことは俺は人生から強制失格的な?
…洒落にならねぇ。
「御安心を。我らは怪しい者では御座いません。
とりあえず、携帯を仕舞って下さい。事情を御説明します」
俺の予想に反して男は穏かな口調でそう言った。
しかし、その格好で怪しい者ではないって言っても全く効力無いのお分かりかな?
「篠井吉光様でいらっしゃいますね?」
「ぁ…は、はい」
「我らは翠川由希様より、貴方の部屋の引越しと御仕事に関する説明を承りました」
自分の名前がハンターさん(名前分からん)の口から出たことも吃驚だったが、
まさかの黒幕が先輩!
すんげぇ今更なのですが、あんた何もんだよ!絶対裏社会の人だろ!
「では、こちらにお乗り下さい」
数分後
ごっつぅ立派なリムジンに乗せられやってきたのは、これも立派なマンションだった。
この玄関ホールに到着した時点で俺は既に半泣きだった。
先輩はマジで何がしたいんすか!?
俺に何をやらせたいんですか!?
てか、先輩何処にいるんすかぁ!?
「篠井様、これが自室のナンバーになります。
それと何かお困りの際はここへ御連絡下さい」
そう言い残してハンター軍団は去っていった。
改めて俺が今いる状況を確認。
まぁとりあえず、外国に売られなかった事は良しとしよう。
しかしだ。
何なんだろうか、このハイスペックな管理システムは。
鍵なんて静脈管認証だぜ。俺は初めてお目にかかった。
どうも、はじめまして。これからヨロシク。
ハンターさんから渡された紙には電話番号と部屋番号が記されていた。
どうやら30階にあるようだ。
「とりあえず、行くか」
エレベーターに乗り、「30」の数字を探すとなんと一番上にあった。
最上階かよ。
スルスルとエレベーターは昇り、あっという間に到着。
指定された部屋はエレベーター乗り場のすぐ傍にあった。
因みにここでも静脈管認証。
ドアを開ければ、なんとも清潔な空気が流れてきた。
廊下があり、ドアが3つ並んでいる。
そして、何故か突き当たりのドアだけ明かりがついていた。
もしや、先輩か?
俺は靴を脱いで、急ぎ足でその突き当りのドアを開けた。
待っていたのは、先輩の呵呵大笑ではなかった。
俺の貧乏臭がする愛しい家具たち(どれだけ逢いたかった事か!)と、もう一つ。
異常に大きなダンボール箱だ。
正四角形で、一辺は1m以上はあるだろうか。
ビックリ箱か?
恐る恐る近づいていくと、ダンボールには白い紙が一枚貼ってあった。
「大切に扱ってね By翠川」
何故だろう。
こんな単純な手紙なのに、何故にこんなにも悪寒がするのか。
これは開けちゃ、ダメだろう。
開けたら、何か終る気がする。
何が終るかはあえて言わない。
しいて言うなら、人で始まり、生で終る漢字二文字のもの。
しかし、開けなきゃまずい気もする。
てか、話が進まない。
俺はダンボールに封をしているガムテープに手をかけた。
それをビリビリと引っぺがし、いざオープン。
後になって俺は思う。
その場のノリでバイトを受けました。
反省はしています。
to be continued...
次回、やっとヒロインがでます。
あぁ、長かった。長かった。