三十路手前で事件です
第1章レイナ
快晴だ。
「起きて、隼人。」2年付き合っている恋人の声も清々しく聞こえなかった。
隼人の頭は昨日の夜中まで続いた麻雀の敗北で埋め尽くされている。
カーテンを勢いよく開ける恋人の行動一つですら、隼人には不快この上なかった。
開け放たれたカーテンの向こうからは目障りな程の陽の光が隼人の目を細めさせた。
暑苦しいお節介な友人が朝から部屋に凸してきたような気分だった。
「早く起きて。」
迷惑そうにしたのがバレたのか、ぶっきらぼうにそう言われた。
隼人がリビングに行くと恋人は何やら忙しなく出かける支度をしている。
「なに。出かけんの?」
すると、何を今更、という顔でこっちを見てきた。
「そうだよ。言ったじゃん。」
「お洒落しちゃって。浮気か?」
からかうつもりで笑いながら投げかけたのだが、予想に反して真顔でこっちを見てきたので戸惑ってしまった。
「女友達と会うだけだよ。」
こいつに女友達なんていたのか。2年間一緒にいても知らないことってあるもんだな。
隼人は恋人の新しい一面を見たようで、少し新鮮な気持ちを感じていた。
「女友達ね〜何て子?」
隼人が質問し終わる前に、被せ気味で相手の名前を言った。
「レイナ」
隼人はその名に覚えがあった。
〜続く〜
読んで頂きありがとうございます。
連載小説ですが、一話ずつはコンパクトな量にまとめていきます。
隼人はレイナと言う名前を聞き何を思うのか。
覚えがある、というその理由が今後のストーリーの鍵となっていきます。