健康でいる
冬の寒さの厳しさと共に流行り出すのは、
「のんちゃんの学校でも風邪とインフルエンザが流行してます」
風邪の季節である。うがい、手洗い、マスクの着用。
現実的な予防手段と、医学的に適切な予防接種も良いだろう。病気を避けるというため、と考えるよりも毎日の健康を意識して、その日のケアを心がけるのは健康な生き方。
「怖いよね~。小学校の頃、それで学級閉鎖あったよ」
「のんは風邪ひくなよ。小学校ってのはガキからガキへの感染が多い。俺とかミムラは、そーいうところ行かねぇから大丈夫だが」
小学生、大学生、その他。というどーやったら、そんな組み合わせができるのか分からんが。阿部のん、沖ミムラ、広嶋健吾の3名は、遅くなったが今年の無病息災を願うため神社にお参り。この手の事が好きなミムラの提案で行く事になった。
験担ぎ程度のこと。10円ぽっちで、気分的に健康を願うくらいでいい。
並んでもいない神社に来て、投げ銭する3人。
「とぉー!十円だけに~」
チャリーン
謎の掛け声と理由と共に、楽しそうにミムラが投げ込む。今年も良い一年を願っているんだろう。満面の気持ちだ。
『今年も広嶋くんとみんなと、健康で仲良くできますように』
そんな事を思ってそうだったか。広嶋はちゃちを入れた。
「ミムラ、十円は遠縁になるぞ」
「えぇっ!?あ、そっか!あーーっ!財布落した!」
焦ってもう少し追加しようと思ったが、財布を落して銭が転がってしまう。相変わらずだなと、呆れている広嶋とのんちゃん。そんなミムラに気を遣って、広嶋はのんちゃんの方にお願いした。
「のん、五円玉あるか?」
「あ、あります!」
「じゃあ、俺が百円、ミムラが十円、のんが五円。3人で百十五円で行くぞ」
のんちゃんとしたら、ホントはその額を1人で出したかったが。広嶋に言われたらしょうがないかって、気持ちで堪えた。やっぱり、これくらいの関係の方がいいんだろう。
チャリーンッ
◇ ◇
賽銭が終わって帰路の途中。
やっぱりこの時期は、どこでもマスクをつける人を見かける。
「そーいえば、広嶋くんって風邪とかひいたことある?」
「……ねぇな。普段からそーいうところは意識するタイプだ」
「さすが、元野球っ子だね!体は資本って言うし!」
「体調管理のできる選手って、もっと評価されるべき指標だぞ」
生まれつき弱い人間もいるが、常に心がける人もいる。
「のんちゃんもそーいうのは無縁ですね」
「わーぉ」
「好き嫌いせず!なんでも遺さず食べて、栄養にすれば健康だって!お母さん言ってましたし!」
単純だが、正しい言葉と行動だ。ホントにこの子はできてる子だ。
「ま、私もそーいう病気は一度も罹ったことない!だって、”体の作り”が違うもん!健康以外ありえない!」
えっへん。でも、大して偉くもないと謙遜の態度。
自分が特に健康な理由が分からないので、もう完全に生まれつき無病宣言をしているドヤ顔のミムラ。そんな彼女と、広嶋やのんちゃんの心がけを比べ。
「なるほど、”頭の作り”が俺達と違うもんな」
「納得しますね。頭が違うから、ミムラさんは健康なんですね」
「あれ?広嶋くんとのんちゃん、私の言葉を聞いてなかった?”頭の作り”が違うって言ってるんじゃないんだけどなぁ~」
まったくもう、失礼である。