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7 クルルVSスラント その2

 衛兵に腕をつかまれかけた時だった。遠くから黒姫の声が聞こえた。白姫も一緒になって吠えている。


「受け取れ」

「ワオ ワオ」


 黒姫が三本の武器を投げる。俺の足元に正確に刺さった。ドスドス。黒姫がこっちを見ている……白姫もだ……二人の顔はお姉さん

だった。


使えって事なのだろう。

みんな金ぴかだ。


 その中で、気になる物を発見した。剣の柄の部分に、なにかがある。リング? 違う、これはっ? 時計だ。リ○ゴをかじったメーカーのに似ている。


「おのれー、小娘が……伝説の魔法具を投げるなど……殺してくれ

るわ」


 スラントは、怒りでプルプルしている。俺は、黒姫先生の魔法講座を思い出した。

 たしか、伝説の魔法具には、プリインストールされた、魔法があったな。

 黒姫も白姫も、お姉さんスマイルのまま、ブイサインを送ってくれてる。

 迷う必要など無い。このチャンスにかけてみよう。

 俺は、腕時計をはめた、剣を手に取った、刀を反対の手に、杖を腰に差す。


 ……。


「何も反応しない……」

「黒姫っ、どうすればいいんだ……?」


 しかし、黒姫には、さっきまでのスマイルはなかった……青い顔

で黙ったまま立っている。

 伝説の魔法具が、そんなに簡単に使える分けないか。俺は……項

垂れた。


「黒姫先生……魔法が使いたいです」

「ブヒャヒャヒャ。このクソガキが、色々と手間かけさせおって。死ね」


 スラントが、杖を掲げた時だった。

 ピンポンパンポーン! 俺の頭の中で曲が流れた。


「(インストール完了)」

「(空きスロットにスキルがセットされました。)」

「(スキル名 八百万の加護)」

「(詳細項目については、取り扱い説明書をお読み下さい)」


 俺は、一瞬意識が飛びそうな程の眠気を感じたが、すぐにおさまった。

 スキルがセットされた時の負荷だったのかもしれない。

 八百万の加護が、セットされた直後だ、伝説の魔法具達が……輝

き始めた。

 ものすごい光が魔法具から、出ている。会場からは、悲鳴のような声が聞こえる。


 スラントは、掲げていた杖を下ろし、目を塞いでいる。


「きさまー、何をした」

「持主登録完了……」


 四個の魔法具から、一斉に声が聞こえた。使えるのか? 俺は、

剣の魔法具を胸元で持った。

 黒姫先生の構えだ。意識を集中させると、頭の中にメニュー画面みたいなのが浮かんできた。


 魔法リストにようで、1つだけ魔法らしき名前がある。


「スラントさん。魔法を見せろって言ってたっけ?」

「見せてやるよ! 新総帥の魔法を」


 これで、使えなかったら逃げよう。


「召喚、ヒーリングドラゴン」


 ゴゴゴゴー、空気が振動する。会場が暗くなっていく。天井から一筋の光と、魔方陣が出現した。魔方陣の奥から、光が二つ近づいてくる。


「でかい!」


 思わず声が出る。ものすごいデカさだ、なんて言えばいいかな?大型のクレーン車が、がっつりクレーンを全部伸ばしてますって感じだ。そのままヒーリングドラゴンは、俺の後方辺りで浮いている。


「馬鹿な! そんなはずは……くっ。そのような紛い物、信じぬぞ

ー」


 スラントが杖を振り回しながら、突進してきた。


「ファイア、フローズン、サンダー」


 火の玉が氷の塊が、稲妻がヒーリングドラゴンに命中した。


「ブヒャヒャヒャ何が、ドラゴンだこのスラント男爵様の敵ではないわ」


 スラントの狂気とも取れる攻撃魔法にも、ヒーリングドラゴンは、びくともしない。


「ぐぬぬぬ、これならどうだ」


 スラントは、まだ攻撃するつもりだ……。俺は、もうひとつの刀

の魔法具を構える。魔法リストが浮かんできた。こいつにも、あるんだ。


「召喚、八岐大蛇」


 辺りを暗雲が立ち込める。稲光、轟音そして雲の中に魔方陣が現れた。

 上空の暗雲を割る、一筋の光が、そして巨大な大蛇が現れる。八岐大蛇……。


 召喚獣を後方に二頭待機させ、俺は、スラント目掛けて、杖の魔法具を突きつけた。


「こいつも、使うぞ、もう降参しろよ」


 スラントは、プルプルと震えながら、俺を睨み付ける。


「許さんぞ、許さんぞ、きさま、このの上手くいくと思うなよ」

「魔法親衛隊は、その位置から観客席を攻撃せよ」


 なんだ? 小声で指示を出す、スラントに俺は、嫌な予感がした。


「それは……なりません。スラント様、そんな事をして、どうする

おつもりですか?」

「親衛隊長を反逆罪で捕らえろ、副隊長、今からお前が隊長だ。みごと私の期待に応えてみせろ」


 さっき、俺を調べた魔法使いが拘束されてる。仲間割れか? 後

方の魔法使い達が、一斉に魔法を使った。大量の火の玉が観客席に激突する。


ドンドンドン!火の海とかす観客席。


「キャー、イヤー、あの大蛇が攻撃してきたー」


 会場は悪夢とかした。


「スラント、お前……」

「ブヒャヒャヒャ、観客達は何が起きたか分かっておらぬわ」


 ここで、起きている真実を知るのは、ごく一部だ、親衛隊の魔法使い達を口止めすればいい。

あの魔法使いの攻撃は、召喚獣の後ろからだった、大蛇の攻撃に見せるために、わざとか!


 観客に死人が出るのは、避けたい。俺は、ヒーリングドラゴンに全体治癒を指示した。みるみるうちに、観客の怪我が回復していく。

さらに、壊れた客席も修繕されていく、さすが、伝説の魔法具から、召喚されたドラゴンだ。火の海は消え失せ、会場が元の状態に戻っていった。ヒーリングドラゴンは、回復が終わると消えていった。


 ――天井もお願いすれば良かったかな……。――


 スラントは、この状況を見逃さなかった。チャンスとばかりに叫ぶ。


「本日、ご参加の皆様〜」

「治癒は御済みでしょうか?突然の侵入者の狼藉を、この式典を守る為、我慢して相手をしましたが、皆様への攻撃で、このままにしておけぬと判断しました。私の召喚したドラゴンが、回復に役立って光栄です」


 スラントは、ニヤリと俺を見る。完全に形勢逆転だ今や俺は、式典を荒らした大罪人だった。


「あいつらを殺せー」


 観客達の中の魔法使い達だ、レベルやMPは分からないが……全

員で攻撃されたらヤバい。


 会場の魔法使い達、親衛隊、衛兵が襲ってくる。


「ワオーン、クンクン」


 白姫が俺を くわえて、飛んだ。


「あの天井から脱出する」


 黒姫……白姫が、急上昇を開始した。物凄い風圧で意識がもうろ

うとしてくる。


 …………。


  気絶した。


 目が覚めると、森の中みたいだ、日があまり差し込んではいなかった、泉が近くに見える。俺は、草むらで寝かされていた。

 体が痛い、あの上昇の時の衝撃か? 違うなもっとこう、骨がき

しむ感じの痛みだ。

 ボキボキボキ、起き上がろうとすると、全身がボキボキと鳴った。


「痛たたた」


 俺の声を聞いて、白姫が近づいてきた。ペロペロと舐めまわす。


「クルル……? なのか」


 黒姫は、少し離れたところから、俺を見ている……見てるという

か、伺っている感じだ。


「何を言ってるの? 俺だよ」


 黒姫が、腰にぶら下げた巾着から、小さな手鏡を取り出して、俺に渡してきた。


 顔を見ろってことだろう。さすがに空気が読めない俺でもわかる。


「なっ……なんだと?」


 顔を手で撫で回す。ホッペをつねってみたりもした。俺であることには間違いない。


 仮面をかぶってるわけでもない。


「成長してる」


 と言っても、23歳に等しい顔になったわけじゃない。中学生…

…いや小学校六年生くらいかな俺の顔は12歳くらいの雰囲気にな

っていた。すこし、ほんの少しだけ大人びた感じだ。少しだが体も成長したようだ、黒姫には……まだ届かないが。


「黒姫……俺はクルルだよ」

「分かってる。ビックリしただけ」


 黒姫にしてみれば、白姫が、成長した俺にも変わらずに、モフモフしてもらっているのだ。

 疑いようがないという事かもな。

 俺は、用意してくれた、飲み物を口に含んだ。しばし沈黙の時間が流れる。


 何が起きたんだっけ……色々ありすぎて整理が必要だった。

 時間が無かったのもいけなかった。だが俺の情報収集の少なさが今回の事態を招いていると、俺は思う。その後どうなったんだろう? スラントは? ため息しか出ないな……。


「おいで」


 黒姫は、そう言ったとたん、俺の頭を膝へ誘導した……頭を、柔

らかい黒姫の膝が受け止めた。


「少し大きくなっても、クルルは子供……お姉さんが必要」


 たしかに、黒姫から見れば、まだまだ子供に見えるのだろう。精神は28歳なのだが、ここは甘えてしまおう……。しばらく膝枕を堪能した。


「クルル、汚れ流す」


 俺は、言われるがままに、黒姫に洗ってもらった。お姉さんと…

…聖獣と……12歳少年の水浴びだ、端から見れば、兄弟だな……。


 水浴びで、スッキリした俺は、今後の事を考える。すると黒姫が、俺の横に座り、寄りかかった。


「クルル。何者なんだ?」

「伝説の魔法具が四個。全てクルルを持ち主と認めた……でもクル

ルが、何者でも、私も白姫も味方」


 俺は、黒姫、白姫に自分の事情も話さずに、甘えていた。

 何も言わず、聞かず、ついてきて、助けてくれて。

 最低だな俺は……。


「あのさ黒姫、聞いているかな?」

「後でになりそうだけど、聞く」

「グルルルツッ」

「ここも、危険」

 白姫が、追っ手に気がついた。まだ大分先にいるみたいだが、ここにいては危険だ。

 俺達は、休憩の痕跡を隠すと、白姫の背中に乗った。


 白姫が、ゆっくりと離陸した。黒姫のMPが回復してないので、ウインドウォールが使えない。高速での飛行は負担が大きかった。


「とと様に相談する」

「ワオン」

「とと様って、黒姫のお父さんの事?」


 黒姫は、コクっと頷いた。黒姫の住む村は、たしか、フリード領の外れ……。


 えっと。俺の世界での、ウルグアイの辺りだったかな……一応、

黒姫からも地理的情報は確認してはあった。ちなみに、東の魔法協会はブラジルの辺りだ、そこにある大きな街、ザッハトルテーズの中にある、この街は、貴族の領とも国とも関わらない、独立した街だ。

 ほとんど、国といっていいかもしれないが、国家としては認めらていない。さすがに、王が許さないだろう。世界のバランスが崩れてしまうからな。

 空が、暗くなってきた。さすがに白姫がでも夜間飛行は危険みたいだ。

 前に休憩した小川のほとりで、今日は野宿をする。

 黒姫が、焼いてくれたダガーウルフの肉を、みんなで食べた。

 俺の話をしようかと思ったが、MPの回復もしたかったので、寝ることにした。

 この辺りには、魔物は滅多にでないし、白姫が、いるから安心して寝ても大丈夫だ。今日の出来事を思い返しながら、満天の星空を眺めていると、白姫が、尻尾で俺を撫でる。

 その横で、黒姫が寝息をたてていた。そんな可愛い寝顔を見ているうちに、俺も眠りに落ちていった。

 翌朝、まだ二人が寝ていたが、俺は、一足先に起きると、体を慣らす為に、少し歩く。


 少し、違和感があるが、大丈夫だ。それどころか、歩幅も広くなり、背も延びてるからだろう、景色が違ったし、歩くスピードも上がった。5歳児の体よりは、ずいぶん動きやすい。

 だが、まだまだ問題もある。左右の腰に、剣と刀を差す。背中には、杖。全ての魔道具が地面を引きずってしまう……。背が高くなるのは、いつだろうか?


「クルル」


 黒姫が、走ってくる。朝練か……?違うみたいだな……俺の傍ま

で来たかと思ったら、抱きついてきた……。


「かった……よかった、無事で」

「あっ……ごめん、心配した?」


 黒姫が、コクコクと頷いた。何も言わず出てきてしまったからな。

 俺は、黒姫の頭を撫でながら、顔を見た、目が少し赤い。余程、心配させたみたいだ。


「黙っていなくなるな。約束」

「ああ、約束する」


 白姫のところに戻ると、尻尾をパタパタさせながら、迎えてくれた。

 足元には、ウサギのような獣が4〜5頭積んであった。


「朝食で食べる」


 白姫が、狩ってくれた獲物を頂いた。日が少し、高くなってきた。

俺達は、片付けをすますと、足早に出発した。


 黒姫の故郷、東村へ……。

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