表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/68

66 ミライラ……暴走!?

 城内の地下牢である。

 クルルは、城に到着したとたんにアメリアに案内されたのが地下

牢だった。

 手を引かれて連れてこられた時には、ミライラとガルムが牢の前

に立っていた。

「クルル様、申し訳ございません。お忙しいところお呼び立てして

しまいまして」

 ペコリと頭を下げるミライラを制して「気にしないで」と言うと、

こちらですと案内された先には牢の中でつながれている一人の老人

がいた。

「えっと。この人がミライラのお父さんで元東の国の王様かな?」

 きっとクルルに余計な悪態をつかないようにしたのだろう、元ブ

ランガラン王には猿ぐつわがされていたのだ「モガ―」とか「フゴ

ー」としきりに顔を赤くしている。声に出してはいないが、これで

はクルルに対して敵意が丸出しであった。

 そんな哀れな? 老人をクルルは、さっきからジーッと見つめて

いる。見る人が見れば睨んでいるようにも写る。その光景に少し焦

りを感じるミライラだ「クルル様……物凄くお怒り? ですか」そ

う言いかけた時だった。

「ふう、話はついたし……えっと! ミライラのお父さんの件だけど、任せるよ」

「そうですかって!? えっ?」

 ミライラがびっくりしてクルルの傍に駆け寄った。

「本当に宜しいのですか? もし私の父親だからって遠慮されてる

のであれば、そんな事は気になさらないで下さい」

「大丈夫だよ。そういう事じゃないんだよ」

「もしや……話がついたって……ああ、そういう事ですわね」

 何かを悟ったようにアメリアが手を叩いた。それに反応したミラ

イラは意味が分からないって顔をしている。アメリアも母親にそん

な顔をされて困っていたが、クルルの許可がなくては話すことはで

きないだろうしと、さらに困った顔をしていたのだが、そんなアメ

リアにクルルから助け舟が出されたのだ。

「ミライラ、少しいいかな?」

 ここではなんだからと、クルルの転移でミライラの部屋へと移動

すると、アメリアの気がついた事について説明をするのだった。

「……という訳なんだよ。まあ、ミライラの父親がやらかした事が

巡り巡って俺が、この世界に転生してしまったのかもしれない……

でも、それだけが俺とクルルの未来の原因だとも思わない。だから

気にしないでいいんだよ」

 そう、二人だけで話していたのはユウマの秘密であった。

 クルルとユウマの秘密をしったミライラは、自分の父親のしでか

した事にズーンと重くなっていた。

ガクガクと膝を震わせて黙りこんでいる。なんだか顔色も青ざめて


おり何度か深呼吸をして落ち着かせようとしている。

 さっきまでは、クルルという少年への申し訳に気持ちだったのが、

クルルの中に転生したユウマへの謝罪も追加してしまったのも、父

親の悪事のせいだと思えばいくら本人が気にするなと言っても……

素直に分かりましたとはならない。

「あのう、さっき話がついたとおっしゃられたのは? もしかして

黄泉のクルル様とお話をされたのですか?」

「そうだよ、ちょっと加護をつかってね。黄泉で転生の順番待ちを

しているクルルと話したのさ。クルルも今更だから気にしないでと

言ってたよ。それにリリーノとも話したけどね、色々あったし、辛

い思いや悲しい思いもしたけど、今は三人共に幸せなんだからいい

よねって」

「ですが……リリーノ様もユウマ様も早くに亡くなってしまいまし

たし。いくら神様になっているとはいえ……それにクルル様は、生

き返る順番待ちだなんて……」

「それも了解の上だから! 本当ならねクルルはすぐにでも転生で

きたんだけどね、本人の希望で俺とリリーノの子として生まれたい

って言うからさ、もう神様になるのは決定してるしね。順番待ちっ

ていってもあと三ヶ月もすれば会えるんだよね」

「……そう、だったんですねって! リリーノ様っ懐妊!」

そこの部分は軽く無視して話を続ける。

「だから、俺達はミライラに父親に対しての要求はないからね。あ

とは女王としてミライラが決断するんだよ」

「はい。分かりました。えっと、ユウマ様? クルル様? どちら

でお呼びすれば?」

「ああ、そこはクルルにしておいてね」


 そう言って二人で笑いあうのだった。

 アメリアも待たせているし……ガルムは……挨拶すらし忘れたし。

急ぎ牢へ戻ろうかと思ったが、ミライラから、これ以上は大丈夫な

のでと言われたので牢には行かないことにした。

 問題も一応解決? したので帰ろうとするクルルにミライラが傍

によって腕を組んで来た。

「せっかく来たんですし、アメリアと少しお話でもしてって下さい

な」

「ああ、そうだね。ミライラはどうするの?」

「はい。私は退位の準備をすすめようかと思いますので、ガルムと

話をしてきますわ」

「ん? 退位だって? なんで?」

「えー。クルル様が私にご自身の秘密を打ち明けて下さったのは、

私に妻になれってことですわ……いえ、すでに妻になりましたわ」

「なんですと!?」

「お待ちなさい、ミライラ。そんな意図はないと思いますよ」

 今まで口も挟まずに、ずっとクルルの肩で話を聞いていただけの

スクナビコナも思わず割って入ってきた。

「あらあら! ですけれど、このユウマ様の転生の秘密も知ってい

るのは、クルルツマーズのみですわよね? 先ほどそう伺いました

けど」

「たしかにそうですけど、今回はミライラが苦しんでいるみたいだ

から説明したのでしょう。これはクルル様のご慈悲ですよ」

「いいえ。違います……これは求婚ですわ……すでに婚姻は交わさ

れましたわ」

「ミライラ、いくらテラス様の巫女でアメリアの母だからって。こ

の話は許されませんよ」


「あら、いくらスクナビコナ様が女神様でも! 私とて求婚に応え

て妻になった身ですわ。同じ立場上ここは譲れません」

「「クルル様! 言ってやってくださいな」」

「……えっと、まずは落ち着こうよ」

そんな修羅場!?へ。

 ――――バタン! 激しく開いた扉。ツカツカツカと迫りくる足

音。

 お怒りのアメリアと、嫌々ながら着いてきたガルムだった。

「お母様、これはなんの騒ぎですの?」

「あら、アメリア。調度よかったわ、私ね、クルル様の秘密を教え

て頂きましたの。それで今さっき妻になったんですけど……そこに

いるスクナビコナ様が認めないって言うのですよ。あなたからも何

か言ってあげて下さいな」

「はぁ。いつまでたっても戻らないので心配してみれば……まった

く、なんなのですか。そんな事できるわけありませんわ。お母様ご

自重下さい」

 アメリアが仁王立ちでミライラに迫っている。

「それよりも、お祖父様と連れの元貴族の処分はいかがなさいます

の」

「ああ、それなら。極刑でいいですわ、後はガルムに任せて処理し

てもらって下さい。たしかに父親ですけど、王としてあるまじき姿

でしたからね。国民の前で最後は散ってもらいましょう」

 急に女王に戻ったミライラだったが、アメリアもまた「仕方ない

ですわね」の一言だった。


 こうして、ドタバタの中でガルムだけが面倒な案件を抱えたまま

退室して行った。

 ◆◇◆◇

 樹海の中のログハウス。

 クルルを中心にしてツマーズがいる。今回の事の顛末の説明と新

たな妻になる予定のミライラの許可をもらうためだ。

 で。

 なぜ樹海の中のログハウスかと言うと。今、クルルツマーズは懐

妊ラッシュなのだ。

 スクナビコナとオリヒメ以外は現在、妊娠中なのである。

 ちなみに、この世界は種族にもよるがだいたい三ヶ月程度で出産

する。

 でも、この世界の三ヶ月は300日だから……まあ計算上はいい

のかもしれない。

 有真国そのものがミーコによる結界で守られているが、樹海の結

界で更に安全なこの場所にツマーズが、集められているのだ。

 ちなみに、高天ヶ原でクルルが繋がった女神達は妻ではないので、

ここにはいないがこちらも懐妊ラッシュなのだ。

「うう。久しぶりの登場……こほん。旦那様、私は構いません」


「あたちもワン。うう。おえええっ。うぷ」

「大丈夫かい白姫? もういつ生まれてもおかしくないのに……ま

だツワリなの?」

「違うワン。食べ過ぎワン」

「……主、白姫はお腹の子供が〜などと言っては、いつも食べてま

す」

「そうだよパパ、白ママはいつも食べてるよ」

「ルルは体調は大丈夫かい?」

 そう聞くと、ルルはニコニコで「うん」と答えた。最近クルルに

買ってもらった白いワンピースから膨らんだお腹をさすっている。

「あのさ、ルル。俺とルルの子供が、俺をパパって呼ぶじゃん。そ

れでルルもパパって俺を呼ぶのかい?」

「うん。やっぱりパパって呼びたい」

「…………」

 まあいいやと思うクルルだった。

 今は修行中のオリヒメの許可は取れなかったが、後で連絡すると

して……ツマーズの許しを得たミライラは、はれてクルルのお嫁さ

んになったのだった。

「あっ! ミライラ。しばらくは女王でいてね、まだ他の国も行っ

てないし。色々片付くまでは退位は禁止だよ」

「うう。分かりました……あのう、それまで子作りは?」

「禁止です」

「ぐぬぬ。なぜスクナビコナ様が言うのよ」

「ちゃんと片付いたらです」

「分かってますわ」


そんなやりとりを微笑ましく見ながらミーコがクルルに囁く。

「ユウマ。子供が産まれたら部屋も足りなくなるのう……ここに王

都でも作るかのう」

「王都は少し大げさだけど、住むところを広くしないとな〜」

「妾に任せるのじゃ」

 ※※※

「おええ。しただけだったワン」

「……食べすぎだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ