65 東の国……大改革
これは、クルルが有真国に戻る数日前の話である。
クルルは、自国での会議と結婚イベントの為に帰国準備をしなが
らミライラとガルムの手伝いをしていた。
信長はというと……。
「信長様……いえ、殿! 本当に宜しいのですか?」
「くくくっ。ああ我々の悲願であったからな、俺が行かないで誰が
行くんだよ」
「なら、我らも! お供に……ご一緒させて下さい」
「ありがとな政宗。いや、政宗・伊達・フリード」
「……それを言うなら、殿は信長・織田・尾張様じゃないですか」
「くくくっ。ちげえねえな……お互い貴族になっちまったしな。ま
ったく婿殿が全面的に介入した東の国の改革には驚いたぜ……」
クルルが介入したした改革とは……。
スラントが起こした反乱を制圧したことで、ミライラが正式に東
の国の女王として即位したのだ。それに伴い国の名称を【ラミライ
ラ】に変更してしまったのだ。これはクルルの一言で決まってしま
った。
「もうブランガランはやめようぜ! なんかミソがついたしな……
ラミライラにしよう」
だった。
なので王都ラミライラでありラミライラ城になり。ミライラ・イ
ーストクラウン・ラミライラが女王の正式名になる。
そして、貴族の中で一番の立役者に……された……ガルムが宰相
に就任した。
それに伴い現在の貴族の大幅な改定を実施したことで政宗、家康、
信玄、謙信が新しく貴族として領地を授かったのだ。まあ、今回の
働きを考えれば当たり前である。
ガルムは領地を王都の近くで与えられ、フリード領は政宗が引継
いだ。
そして滅びの森を四等分され周辺を家康、信玄、謙信が領地とし
て拝命し四人は男爵となったのだ。
ちなみに、東村は新領地として家康が引継いだ。
もちろん、他の貴族達も領地変更や相続などでバタバタしたがス
ラントが玉座の間で謁見の際に、かなり殺してしまったし……前の
国王ブランガランや便乗して脱出した貴族は家ごと、おとり潰しに
したから貴族の数も減ってたからね。
今回の討伐で成果をあげたハンターや国民からの志願兵などにも
恩賞として貴族の位と領地を授けることで国としてのバランスを取
ったのだ。
えっ? ブランガランと取り巻きの貴族が帰ってきたらだって?
その時に……考えよう。
で! 信長だが。
彼にはクルルが建国した有真国に来てもらうことにしたのだ。
役職はもちろん征夷大将軍だ。
名前も、信長・織田・尾張にしてもらい有真国の最初の貴族なの
である、信長もクルルも自国に貴族なんて制度を取り入れたくはな
かったのだが、今後他国と交流していくにあたって信長が馬鹿にさ
れないようにする為の対策の一貫なのだ。
有真国の全ての窓口は尾張の地で統一し入国するのもこの地の港
しか使えない。
潮の流れを調整して絶対に、尾張の港にしかたどり着けないよう
になっているし、空においても許可されていない人や魔物などが飛
べないようになっている。
でだ。
先程の二人の会話に戻るのだが……。
「たしかに、御先祖様の暮らしていた地に戻れるのは喜ばしいかと
思いますが……生活面での不安があります」
「たしかにな。婿どのにも言われているんだがな、仙人みたいな生
活でもいいか? だってよ」
「……仙人って……どんな生活ですか?」
「自然の恵みに感謝を捧げ、お許しを頂き狩猟を行い作物の恵みを
頂く……贅沢はなく食べていくだけ生きていくだけの糧を譲って頂
くらしいぞ」
「自給自足と言う意味でしょうか?」
「いや……神々給自足だな。くっくっく」
「神々と暮らす巫女のような……そして国の窓口をこなす仕事って
感じでしょうか?」
「ああ。神々は国と国なんて関係ないからな、そして王様といって
も婿どのは忙しいからな、俺が色々と壁になるのさ……黒姫、白姫
の為にもな」
「……殿! なにかあれば、いつでも政宗を呼んで下さい」
「お前も忙しいだろ? 落ち着いたら来賓として呼んでやる」
「はっ。ありがたき幸せ」
「さてと、こんな仙人暮らしをしてみたいって人員を募集してみる
かな」
「……では、ご一緒に家康男爵の東領へ向かいましょう」
「くっくっく、家康男爵か……よし。いくぞ政宗男爵」
「はっ! 有真国、公爵様っ」
◇◆◇◆
そんな会話から一ヶ月が経過した。
でも30日ではない。この世界の一ヶ月は100日なのだから。
東の国はラミライラとして復興に力を注いでいた。新しい貴族達
も平民出身だけあって傲慢なダメ貴族とは動きも違い、民の声を聞
きながら領地を元の姿に戻そうと頑張っていた。
ミライラ女王の依頼で、クルル達も物資の補給や食料、種籾など
を転移を利用して他国へ買い付けに行ったりと貢献していた。
その中でも白姫とルルによる聖獣と竜の運送組は、かなりの役に
たっていたのだ。
これにより10年はかかると思われた復興が一、二年で成せるの
では……とまでになっていた。
まあ、こっそりと植物や森林に関わる神様にも協力をお願いした
クルルのお陰もあるのだけれど、とにかく目処はたったのだ。
そんな復興を真っ只中に事件が起きた。
――――トントン。
「ガルム宰相、すみません、今宜しいですか?」
ガルムのいる執務室に慌てた感じの声が聞こえてきた。なんとな
くノックの音も急いでいるようにも思えた。
「どうかしましたか? 大丈夫ですよ。入って下さい」
ドアを開けて入ってきたのは城の入口で入場者をチェックする検
問の部門長だった。慌てながらもガルムへの礼を忘れずに部屋へと
入ってくるなり「前王……ブランガラン様です」と言ってきた。
「ブランガラン様だって!?」
思わずそのまま復唱するとガルムは額に手を当てて、女王ミライ
ラから言われている事を思い出していたのだ。もし前王が戻ってき
ならば拘束して審問にかけ罪を償ってもらうと……娘であるミライ
ラが下した決断である。ここで手を差し伸べれば今後の内政に悪影
響を及ぼすし、国を捨てて出て行ったのに身内として招き入れては
民への示しがつかない。この場合の罪を償うとは……極刑であろう。
「至急、ひっ捕らえよ」
「よっ、よろしいのですか? 前王ですよ」
「構わん! 私は女王へ報告に行く。捕えた輩は牢へ放り込め、も
し取り巻きもいるなら全員だ」
普段温厚なガルムが険しい顔で指示を出した。
「かしこまりました」
ドタドタドタ――バタン。
激しくドアが閉じられるとガルムからの指示を実行すべく部門長
が走って行った。
城の入口にある検問所には、身体調査や荷持つ検査をする小部屋
が数か所ある、その中でもわりと広めの部屋に前王ブランガランと
取り巻きの元貴族達が待機させられていた。
ブランガランは、すでにこの対応に怒り心頭の様だが、現状が理
解できていないのだから仕方がないところか。
「遅い! 王であるワシをこんな部屋に閉じ込めて、いつまで待た
せるつもりじゃ」
「まったくでございます。後で王様のお力にて、この部門の連中を
全員処刑して頂きたいです」
「フォフォフォ。任せておくのだ」
「「「さすがブランガラン王」」」
そんな会話の最中だった。たくさんの兵士達と伴に部屋に入って
来たのは、検問所の部門長だった。
前王が「なにごとか?」と言うよりも早く、兵士達が取り囲む。
その対応に眉をひそめながらギロリとブランガランが睨む!
「おい、ワシをブランガランの王。ブランディ―ズ・イーストクラ
ウン・ブランガランと知っ」
「そう言うのは後で伺いますよ。あっそうですね、ご存じないよう
ですので言っておきましょう。この国はブランガランではありませ
んよ。女王ミライラ様が統治するラミライラ国です。こいつらを拘
束せよ」
その指示が飛ぶと、「うおおおお」と威勢のいい声と同時に兵士
達がブランガラン達を羽交い絞めにすると、両腕を後ろにして縛り
あげた。
「きっ、きさまらー、このワシに、フゴフゴッ」
怒りまくって怒鳴っていたが、猿ぐつわされると「ふーっ、ふー
っ」と顔を赤くして連行されていったのだった。
そんな大捕り物が行われていた頃、ガルムはアメリア女王にブラ
ンガラン前王の件を報告に来ていた。
今、ここには三人しかいない。玉座の間の更に奥に隠された秘密
の部屋である。本来は女王の緊急避難用にクルルが最近作ったのだ
が、防音の効果もあるこの部屋なら盗聴の危険もないのでと選んだ
のだ。
ガルムからの報告で父であり、前王であるブランディーズ・イー
ストクラウン・ブランガランの帰還に青い顔をしながら頭を抱える
女王ミライラと寄り添うように母を心配するアメリアがいる。
「本当に……宜しいのですか? このまま審問を開けば極刑は免れ
ないでしょう」
「…………」
「……馬鹿な……おじい様」
ガルムの問いかけに、ミライラは沈黙しアメリアは覚悟を決めた
上での呟きを漏らす。
「もし……お望みであれば、どこかに幽閉して罪を償わせることも
可能かと」
「……いえ、お父様……前王のした事は民を裏切る行為です。王族
であり国の王が取って良い行動ではありません。それに……」
うううっと顔を伏せて泣き崩れたミライラは「クルル様に何と言
っていいか……」そうこぼした。
ミライラを抱きしめながら、頭を撫でるアメリアだが二人とも前
王の処分で悩んでは……いなかった。
そう、父親の事などで泣いているのではないのだ。この時、ガル
ムは初めてそれに気がついた。
全ては、ミライラの愛娘アメリアが愛する旦那様クルル様に父親
であるブランディーズがやってしまった呪いと幽閉へのお詫び、謝
罪、懺悔の事しか頭になかったのだ。
国を救い、娘を救い、自分も救ってくれたクルルを幼少の頃に陰
謀企てて人生を台無しにしてしまった前王。
今、目の前にいるガルムに対してもそうだ……妻のフレイはクル
ルの姉であり娘のコロンもクルルのお嫁さんである「本当に、なん
て言っていいのか。ごめんなさい」と言うしかないミライラだった。
「ミライラ様、そんなに自分を責めないで下さい。全ては前王であ
るブランガランの悪行です」
ここまで言って慰めておきながらもハッとしたガルム……女王の
父を悪人呼ばわりしてしまった事へ、しまったといった顔をしてい
た。
「大丈夫ですよ。本当の事ですし、父に関しては不思議なほど慈悲
の感情が出てこないのです」
ミライラはあっさりと立ち直るとガルムとアメリアに微笑んだ。
まあ、仕方がない感情だろう。逃げ出した王の代わりを務めた後が
……災難続きだったのだから。だが……女王の発言にそれだけでは
ないことが!
「私の愛するクルル様の人生をメチャクチャにした者には、極刑を
持って償ってもらいます。その前に……審問会ですわ」
「お母様……愛するクルル様って?」
「ごめんなさいアメリア。私……気づいてしまったの……クルル様
を愛していることに」
「ええええ!」
「あっ、そうでしたわ。アメリア達ツマーズってクルル様と遠方で
も連絡が取れるのよね?」
「ええ。取れますわ、常にクルル様の傍にいられる訳じゃないです
のでツマーズには森羅万象の神で通信を司る女神様のツウコ様の加
護によって特定の方とテレパシーで話ができるようになってますわ」
「アメリア、クルル様に通信を入れて下さいな。あなた様を陥れた
悪魔を拘束しておりますと。なにかやっておきたいことはございま
すか? と。審問も掛けずに、八つ裂きでも何でもご希望に答えま
すのでと伝えて下さいな」
ニッコニコのミライラである。ガルムは思った「もう俺ってここ
にいる必要ないよね……執務室に戻っていいかな」と。
◇◆◇◆
その頃。
「婿どの! 本当に、この辺りを開拓していいのか?」
「はい。全ては、この尾張を通さないとこの国には関われません。
そうしたいのですが、信長様にはオリヒメとの修行がありますので
……」
「ああ、オリヒメとの約束だからな。それまでは千に頼んである。
まずは港と居住先からだな」
「それなら、帰ってくるまでには完成させときますからね。彼女達
と打ち合わせしてから出かけて下さい」
そう信長に説明すると、クルルは有真国で土木建築に携われる神
々を紹介したのだった。
さすがにクルルとの付き合いで慣れてきたとはいえ、目の前には
森羅万象の神々が信長を待っているのだから、ちょっとびびってい
たが、オブザーバーとして参加していたクルルツマーズのスクナビ
コナとカナヤマヒメから完成予想図を見せられると「これはすげえ
な」思わず声が漏れるほどの内容だったのだ。
図面をしげしげと眺める信長の傍に女神達がよってきて慌てて挨
拶をしたぐらいだ。
「すまん、あっいや。すみません……挨拶もしないで」
「どうですか? なにかあれば言って下さいね」
そう微笑んだ女神達は、ヌノミ、モクミ、イシミ、スナミ、テツ
ミ……たくさんいたのだ。
「意見なんて……あっ。ここの壁は少し高めで、ここは……」
熱い打ち合わせは一週間程かけて無事に終わった……最後は台所
を千と女神がこりまくったので長くなったのだ。
しかし、町規模から内装に至るまでを決めたのだから最後は皆ヘ
ロヘロだったのだが、話が終わったし次の日には信長とオリヒメは、
クルルの転移で蝦夷へと出発する。
しかし……これだけの町を十日もかからずに作るというのだから
……さすが森羅万象の神々とクルルツマーズだと信長とクルルが思
ったかは不明である。
では! 出発とばかりにクルルが転移のスキルで信長とオリヒメ
を連れて蝦夷へと向かおうかという時だった。
ピロピロピロと頭に着信音が響く。ちょっと待っててとクルルが
二人に了解を貰うとテレパシーを送って来た相手に応答する。
(えっと、誰かな? 黒姫かな?)
(黒姫ちゃんの名前がでるとこは、少し悔しいですわ。アメリアで
す。クルル様、お話があるのですが……)
※※※
「いつまでたっても修行に行けないワンね」
「マスター。私……けっこう待ってますよ」




