64 有真国で色々とね……その二
後日。
有真国(ユウマ国)の樹海の横の湖。以前クルルが氷の球体で運
び込まれた場所だ。
神々との祝勝会と四大神との会合によって提案された魔法神の喜
びについての最終調整の会議をする為に、ここに集まったのだ。参
加者はこの国の王クルルとクルルツマーズに三大神、四大魔法神、
コノハサクヤビメと東のエリア以外の子供に関わる女神の面々であ
る。
ディアーナ、クニナ、クバ、アレモニア、オルボーナなどなどで
ある。
すでに根回しや、こんかいの主旨を伝えたうえでの集まりである、
なごやかに話し合いは進んでいる。
後はシステムの問題といつから<喜び>を与えるのか、魔法が使
用できるようになる年齢はなどである。
「はーい、それでは最終案を発表します……」
集まった皆がゴクリッと喉を鳴らす。代表して発表するテラスは
薄らと頬を赤くしている。紅潮している……なんでだろ? 注目さ
れるのが好きなのだろう。
「こほん、発表します……」
その最終案とは。
三日後の朝九時頃に四大神の巫女へ神託を伝える。
内容としては魔法神の祝福持ちからの洗礼を廃止する。今後はM
Pを保有している場合は<魔法神の喜び>が授かった状態で誕生し
てくることになる。
子供へ<喜び>を授けるのは神だが東西南北という分け方をせず
に、協力して対応する。
まずは、コノハサクヤビメと子供関係の女神で世界中の生まれてく
る子供達からMP保有者のリストを魔法神へ渡す、そのリストを元
に生まれる前の子供に<喜び>を授けるという訳だ。
そして開始する日程は、このことが神託が伝えられてから世間に
広まるまでを考えて、三カ月後の午前十二時に生まれた子からシス
テムを組み込んでいく。
まあだいたいこんな感じだ。なので! 子供に関する女神も魔法
神も東西南北のエリアとか関係なく皆で協力していく事になったの
だ。そして今回の事で魔法神も増員する事になったのだ、これはリ
リーノ達の負担を減らす上で必要な処置であった。
「ご意見のある方はいますか? もしこの内容で大丈夫の場合は拍
手で賛同して下さい」
パチパチパチ――――わあああああああ! パチパチパチ。
「ふふふ〜。これから私達も魔法神達も大変ですわ〜。なにかご褒
美が欲しいです〜コロンのように」
「ふう、ご褒美って……コロンのは褒美なんですかね?」
「あら、最高で最強で人であり神である旦那様なんて褒美なんてレ
ベルじゃないわ〜」
「…………」
「わ・た・し! 頑張ったし〜これからずっと忙しくなるし〜。ご
褒美〜」
「分かったよ。なんでも言ってくれ」
ふふふと唇に指をあててから、その指をクルルの唇へ! そのま
ま耳元へ近づくコノハサクヤビメ……。
「ゴニョゴニョ」
「はああ、そうなるのかあ。許可取るの大変なんだぞ!」
「よろしくね〜。ダーリン」
◆◇◆◇
おめでとー! コロンーこっちむいて〜。コノハサクヤビメ様〜!
リリーノやっとねやっとなのね! でも西南北の魔法神もなの?
ご褒美ななの? なんでヴィヴィアンも!? アメリアきれいよ
〜! あの女神様って南のマケマケ様? などと歓声が聞こえてく
る、ここは有真国の樹海の中。結界で囲われた空間にログハウスが
建っている場所だ。
今日は、コロン、コノハサクヤビメ、リリーノ、西南北の魔法神、
ヴィヴィアン、マケマケとクルルシアン・ザ・ミドルクラウン・ユ
ウマの結婚式である。参加者は現クルルツマーズとユウマ国の森羅
万象の神々、ゼウス、オーディン、ミライラ、ガルムにフレイと信
長に千である。
信長は、この結婚式に参列後にオリヒメと修行の旅に出るので来
てもらったのだ。それに別件もあったので千にも同席してもらって
いる。
結婚式は? といえば、めでたくクルルからの誓いのキスが終わ
り披露宴へと進んでいる。
なんでこんなに急いで式をあげたのかというと、新しいシステム
の取り決め後に神託として〈魔法神の喜び〉の件が伝えられたのだ
が、話が広まり……予想はしていたが……それ以上に。
今この世界は混乱の真っただ中なのだ。二カ月後の初の<喜び>持
ちが生まれるまでの間に、クルルは各国を回って魔法協会を説得も
しくは解体する仕事ができてしまったのである。
神からの信託は「洗礼の制度がなくなりますよ」程度の情報だっ
たので、今までその利益の恩恵を受けていた協会や関係者などから
の反発も多く嘘の情報だと取り合わない協会と、これを機に目の上
のタンコブだった協会を潰してしまおうという者などの目論見で戦
争にでもなりかねない……そんな状況になっていた。
ミーコからの提案もあり、新しい国と国王のお披露目をかねて西
南北の王へ手紙を出したのだが、そんな新国など認めないので話が
あるなら来い! そういった内容の返事が来ていたのだ。
神託でも出してしまえばいいのだろうが、それでは恨みや妬みな
ど後々の為によくないとの事でクルルが直接に伺うことで決まった
のだ。
一応、新しい国王とは必ず会いなさいと神託を出したのもその結
果のひとつであった。
そんな訳で、結婚イベントを先にすませてから支度してクルルは
世界を回る旅にでるのであった。
と言ってもだ、転移魔法でいきなり相手の玉座の間にだって行け
てしまうので日程はタイトではないのだけど。
それと、オリヒメはこの式の後に、信長と修行に行くことが決ま
っているのである。場所は蝦夷の地で、修行をするならってことで
ミーコからこの地を紹介されたのだ。
どうせ有真国の中だし、自由に使ってもらって構わないのだし信
長にはこの国でやってもらうこともあったのでオリヒメの修行後も
ここに滞在してもらうので調度いいって感じである。
「おめでとう……クルル君……いや、義弟で義息子で可愛いコロン
の旦那君」
「……ガルム兄さん、すごく感じが悪いですよ」
「そうかな……私は可愛いコロンの旦那君と楽しく酒でも飲もうか
と思ってますけど」
「あなた、さっきから大人げないですよ。コロンが、今をトキメク
荒人神で王様のクルルの妻だなんて……すばらしいですのよ」
「分かっているが……コロンはまだ子供だぞ」
「パパ、ママ、喧嘩しないで。コロンはクルルお義兄様の妻として
がんばります」
そう言いながらもチラチラと様子を伺うコロン。
だがコナハサクヤビメは近くにはいなかったようだ。
「それに、しばらくはレディになる為の教育をしっかり勉強する為
に家にいるから、パパとママの傍にいられるもん」
「コロンを迎えに行くときは連絡するし、それまでは護衛もつける
からね。安心してね」
「あのう、お義兄様? 護衛って?」
「ああ、ごめんね言ってなかったね。巫女教育とレディ教育と護衛
ということでコナハサクヤビメには、コロンと一緒に生活してもら
うからね。よかったね〜」
「…………」
フレイに泣きつくコロンであった。
「まあ、その前に引っ越しやらで忙しいからね。こっちも受け入れ
は二カ月後かな。とにかく、コロンを宜しく頼みます。クルル君」
「はい、お任せください。お義父さん」
「うう、こんなに早く結婚するなんて〜」
※※※
「やっぱりコロンも、アメリアも……妻になったワン」
「……なぜヴィヴィアンも……旦那様……」




