63 有真国で色々とね……その一
コロンを後ろから抱きしめる女神様は、儚げでほっそりとした…
…壊れちゃいそうな感じの女性だったが、ああこの細腕が子供達を
守るんだろうと思わせるそんな感じだった。
後ろからコロンの耳元に顔をづけて何かを囁いている。
みるみるうちに、コロンの目から涙が溢れてきた。
きっと「もう大丈夫よ」とか「私が来たから安心して」などと囁
いたのだろう。
なんとも微笑ましい……素敵な光景だ。
「……めんなさい……うっうう」
「う〜ん? どうしたの〜。よく聞こえないわ〜」
「ごっごめんなさい……ごめんなさい」
「あらあら、なにを謝っているのかしら〜? これぐらいのことで
泣くの〜? 泣いちゃうのかしら〜?」
ニヤッと口角をあげて微笑む女神様。
(えっ……微笑ましい光景じゃないのか?)
「あ〜ら。フフフフ。初めましてクルルシアン・ザ・センタークラ
ウン・ユウマ様。私がコノハナノサクヤビメよ〜。よろしくね〜う
ふふ〜」
「ああ、宜しくっと言いたいとこだがな……コロンにいったい何を
してるんだ? 場合によっては許さないぞ」
「何をですって〜? きょ・う・い・く! で〜す。私はね〜子供
たちには強く生きてもらいたいと願ってま〜す。その為の教育です
よ〜。ねえ? コロンちゃん」
「はううう、はい。そうですコノハサクヤビメ様」
「コロンは私の大切な大切な巫女で〜す。どんな困難にも耐えられ
る強い子に、どんな人が相手でも意見できる強い子になってほし〜
の。だから……コロンちゃん、あなたのここでのビビりかたは減点
で〜す」
「ひいっ、ご、ごめんなさい」
ブルブルっと震えているコロン。だがそれすらも減点ですよ〜とい
った目で睨む女神コノハサクヤビメ。
「ふふふ〜、ゆるしません。罰として今日の夜から七日間は一人で
寝ること〜。いいですね?」
「そっ、そんなー。ママと一緒じゃないと寝れないです……うう、
ぐすん」
「だ〜め。約束ですからね」
「うう、分かりました、ぐすん」
コノハサクヤビメがコロンの頭をワシャワシャと撫でている。コ
ロンを巫女として鍛えたいからの教育なのか意地悪なのか……微妙
に後者っぽい。
「ところで〜。四大神も集まってるこの場に私を呼んだ理由を聞き
たいですわ〜。クルルシアン様」
四大神が傍にいても、まったく動じずに「うふ〜」と話してくる
コノハサクヤビメ。すこし圧倒されそうだったが、コロンが泣きな
がらも呼んでくれたのだからありがたく本題に入らせてもらうこと
にした。
「すでにテラスから他の大神へは話がいってると思うが、<魔法神
の祝福>の件なんだよ」
すでに席についているコノハサクヤビメと横で震えているが、我
慢している可愛いコロンと四大神であるテラス、ゼウス、オーディ
ン、マケマケが黙ってクルルの話に耳を傾けている。
「俺の話は……」
クルルがもう一度説明するよと、今回の件について語る。もとも
とは、この世界に来たきっかけの一つでもある魔法協会と<魔法神
の祝福>を授かっている者からの洗礼そして東の魔法協会総帥だっ
たリリーノを殺害したスラント。クルルは自分が呼ばれ関わってし
まったこの世界での魔法協会の権力を無くしつつ、神々への信仰を
失わないインフラの整備をしたいと考えていたのだ、王様や国をも
上回る権力と武力を悪しき人間に利用させるわけにはいかない。そ
れがクルル(ユウマ)の思いなのだ。
たしかに、魔法使いを確保する為に必要な機関であり有事の際には
と国も認めていたが、トップ次第では悪の機関へと成り下がる……
それは許されない。
その為には、洗礼の廃止と全てのMP所有者に魔法が使える仕組
みをこの世界に確立させたいのだ、だからこそクルルの案では子供
に関わる神様の協力が必須なのだ。
その事を四大神とコノハサクヤビメへ理解してもらう為にこの場
を設けたのだと説明したのだった。
「ふうん、言いたいことは分かったわ〜」
でもね! と席を立ちクルルへ近づくコノハサクヤビメ。なんで
こんなに儚げな雰囲気を醸し出すのだろうか? それなのにコロン
を苛めるかのような態度……全く理解できない女神である。
「私一人の力では無理よ〜。そうね〜、子供に関わってくる神様が
もう少し必要だわ〜。それにね、東西南北のエリアでこの案件に対
応できる神が同じ数いるとも思えないのよね〜。そこのところは…
…どう考えているのかしら〜」
「それは簡単だよ! エリア分けなんて撤廃しちゃえばいいのさ」
『『ええっ!? えええええええええええ』』
ダン! 四大神が一斉に起立したのだ。
「ん? そんなに驚かなくてもいいじゃん。一度このメンバーと数
人の神に協力してもらって仕組みを作ってしまえば、あとはシステ
ム的になんとでもなるでしょ? そもそも八百万の神々が住まう世
界を四つに分けるってのに問題があるのさ」
『その話は、今ここでする話じゃない……ムリムリ』
「マスター、いつも平然と難しい内容を提案するところが素敵です
が……さすがにミーコ様にも相談しないと厳しいのでは?」
「そうだね……じゃあその話はまた別の機会にね。それでさっきの
話はどうかな?」
「それも私の一存では決められないわ〜。それに魔法神達とも相談
したいし……四大神しだいかしらね〜」
「……そういう訳だから、どうかな? テラスにゼウスにオーディ
ンにマケマケがオッケーなら魔法神と子供に関係する神と打合せす
る機会を設けたいのだけど……」
一応テラスが根回しをしてくれていたので四大神からの了解は得
られたのだが問題はシステムの構築だ。そこはコノハサクヤビメか
らの提案で別日で集まろうってことでお開きとなった。
残った時間は四大神とクルルの懇親会にあてるとのことで、コロ
ンとコノハサクヤビメは退室となったのだが、退室間際だった!
「言い忘れてました〜。クルルシアン様、コロンの事をお願いしま
〜す。分からない振りとかしないでいいで〜す。お嫁さんにしてく
れないなら……この話はなかったことに」
(もうそんなの嫁にするしかないじゃんか……)
四大神がいた部屋から胸を張って出てくる二人に注目が集まった。
まあそうであろう、四大神との打合せに参加した女神とその巫女な
のだから、そして分かっていて実施する爆弾発言。
「近々、魔法神達と打合せを開催しま〜す。日時などはクルルシア
ン様から連絡が入ると思いますので。それと、私の巫女のコロンが
クルルシアン様の元へお嫁に行きま〜す。うふふ〜」
――――バタッ! 会場で倒れた男がいた……ガルムであった。
でもその横で喜んでいたのはフレイだった。
※※※
「うう、一人で寝れないのに……結婚だなんて。でもクルル義兄様
となら」
「ポッなのかワン?」




