59 マケマケちゃん……
「さあ、皆さん始めますよ。サタンを血祭りあげましょう」
テラスの掛け声で、登場した女神たちがサタンを取り囲む。
「ユウマ、危険だから女神以外は避難させてって……あらっ、ユウ
マはいないのか……あそこにいる男性は誰かしら?」
テラスが女神達から離れ、クルルの方へやってくる。
「こちらはどなた? ちょうどいいわ。あなたもサタンを倒すのを
手伝ってくださいな。ちなみにヴィヴィアンは強制ですからね」
「ちょっと、って、えっ? テラスさん……あなた分かってないの
かしら?」
「なんの話ですか、よく分かりませんが今は忙しいので後にして下
さいな。ほらほらミーコ様も手伝ってくださいね」
テラスが強引に、クルルの手を引っ張るとサタン討伐へ参加させ
ようとしている。
「あなた、どこの神なのかしら? ゼウスちゃんの所かしら? フ
フフ私の旦那様には適わないけど、あなたもなかなかいい男ねって、
あら、いやだわ。私は、ひ・と・づ・ま! ですからね」
「…………」
「それにしても、ユウマに雰囲気が似ているのね」
「テラス、本気でいってるの?」
「あらミーコ様も気になるの? フフフそれって浮気ですわよ。ユ
ウマ以外の男性に興味をもつなんて」
「……私は、ユウ一筋だよ、それを言うならテラスの方が、いい男
だとかなんとか言ってたよね……浮気者」
「ちょっ、ちがいますよ。なんか雰囲気がって言ってるだけです」
「はあああ、もういいですから早くサタンを倒しにいきますわよ」
サタンの討伐を誘いに来たのはテラスなのに、ヴィヴィアンに連
れられてクルルはサタンの元へ向かうのだった……すでにサタンを
取り囲み女神達が、じゃっかんあきれ気味にテラスを待っていた。
「お待たせしました。神力攻撃は数が多い方がいいですからね」
魔力を使いまくって膝をつき睨みをきかせているが、ピンチに立
たされているサタンに向かってテラスが微笑んだ。
「四大神でサタンを拘束します! 皆は神力を光に変えて攻撃して
下さいね」
『はいっ!』
「オーディンちゃんはサタンの北側へ」
「しかたないのう、やってみるのじゃ」
「ゼウスちゃんはサタンの西側へ」
「はいはーい、僕にまかせてね」
「それで、マケマケちゃんが南側ね」
「……嫌だよ」
『えっ!?』
「あたし、南の大神も仕方なくやってるだけだし……じゃんけんで
負けたし……戦うの怖いし」
「とっとにかく、私が東側に行きますから! 皆で神力の糸をだし
て拘束しましょうね」
マケマケ神も渋々と移動する、そんな打ち合わせをしてたせいで
サタンの体力が少し回復したのだろう、東西南北に魔方陣を展開す
るとベルゼバブがサタンを庇いながら逃走のチャンスを伺いだした!
「テラス、それから大神様達! 早くしないとサタンが逃げるぞ」
「わっ、わかってますよ……ちょっと、あなた私を呼び捨てにして
いいのはダーリンだけなんだからね」
「いいから、早くしろ! ちょっテラス危ない、気をつけろ」
クルルが魔方陣から発せられる気配を感じてテラスに注意を促す。
ゴゴゴゴと地鳴りのような音と共に現れた悪魔達。
「もう、だから嫌だって言ったのに」
マケマケが半べそでサタンへ神力糸を発射するが、それを体をは
って受けとめたのが魔方陣から召喚された悪魔だった。同じように
残る三人の神力糸も防がれている! 四人の悪魔がサタンとベルゼ
バブから、四大神を引きはなそうと動きだした。
他の女神達は、予定と変わってしまった為に呆然としている。
「俺は悪魔レビアタン。きさまは南のマケマケだな……死んで俺の
名を上げろ」
「えっ、えー。嫌だよ来ないでよ」
すでにマケマケは、レビアタンから逃げる気まんまんだった。
「きさまが、アマテラスか。悪魔アスタロト様の力を見せてくれる
わ、ハアハア……負けたら俺の女だからな」
「おあいにくさま! 私は、ひ・と・づ・ま」
テラスは神力糸を何本も出して、アスタロトを縛り上げている。
「ハアハア……ハアハアハアハア」
テラスに任せておけば大丈夫だろう。縛るほどに力が弱まってい
くみたいだからな……。
オーディンとゼウスは、すでに糸を切られてしまったのかコンビ
で戦闘をおこなっていた。
「ほう。相手はバールとヴェルフェゴールか、おもしろいな」
「ミーコ……おもしろいって、やめなよね。後さ女神がたくさんい
ると、偉い神様のふりして話し方を変えるのやめたら?」
「ユウ……それは言ってはならんぞ」
「……まあいいや。じゃあ俺はマケマケを助けに行くよ」
クルルは、戦闘を嫌がっているマケマケ救出に向かう。
「ヴィヴィアンは、他の女神とサタンにプレッシャーをかけて!」
「はーい。ハニー」
「ハニーって……まったく。リリーノ、黒姫達のガードを頼む」
「わかったわ」
(そういえば……オリヒメはどこにいったんだろ)
「きゃー、もうむりだよー」
その悲鳴にクルルは、急ぎマケマケの元へ……その時だった。
――――――――ドスドス、バサッバサッ!
「ぐおおおおーっ、いったいどこから……くっ」
オリヒメの輝く剣が、レビアタンの両腕に突き刺さり、両足を切
り捨てた。
「ブツブツ……ブツブツ」
「ナイス、オリヒメって……オリヒメ?」
オリヒメは、ひたすらにブツブツと呟きを繰り返しながらレビア
タンに近づくと、問答無用とばかりに首を切り捨てた……はずだっ
たが、間一髪で躱された。
「何者だ? 俺を追い詰めただと」
「くっ。まただ甘かったの……なぜ避けられたの」
「オリヒメどうしたんだ? さっきから変だぞ」
そんな会話の一瞬の隙をついてレビアタンが、サタンの元へ逃げ
た。他の大神の戦いも、悪魔が押されている。
「サタン様! 全員で撤退しましょう。あらかた作戦は進んでいる
のです、ここで被害を出すのは得策ではありません」
「うむ。しかし今となっては、脱出も困難だぞ」
「フフ。そこはベルゼバブにお任せあれ」
ベルゼバブが戦闘中の三人に後退を命じると、手の中から数匹の
蠅を飛ばした。
ブーンブーンブーン、耳障りな音を立てながら高速移動した先に
は……死体があった。
数匹の蠅が死体に群がり肉を食い破り体内に侵入していくと、ピ
クピクと痙攣を開始した死体が起き上がった。
「ぶはぁあああ、ブヒャヒャヒャヒャヒャアアア」
辺りに臭い息を撒き散らしながら下品な笑いをする死体。
「スラント……ゾンビ、スラントゾンビだワン。臭いワン、キモい
ワン」
白姫が、ワンワンやっている。その声に女神達も四大神も振り返
る。
ピカピカビカーッ――――――――サタン達が消えた……いや!
転移してしまった。
「しまった! 逃がしたか。くっしかし、今は、あのゾンビが先だ
ぞよユウ。放置すれば世界がゾンビウィルスに汚染されるぞ。この
玉座の間から出してはならぬぞ」
※※※
「ミーコ……キャラぶれてるぞ」
「ええい。黙れユウ、わらわは霊峰富士であるぞ」
「……それにしたんだね」
「…………」




