表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/68

52 ペンダントの秘密

ミライラとアメリアは、またも地下牢に放り込まれた。

 さきほど、スラントに何度も蹴られたミライラの顔は腫れ上がり、

呼吸をするのもやっとな状況だった。

 心配したアメリアが医者を呼ぶように言うも、牢の前で監視して

いる兵士からは返事すらなかった。

 やがてミライラは痛みからか、気を失ってしまう。

「母上様、母上様ああああ、今すぐに回復魔法をかけますわ」

 そう言ってアメリアは、魔法具に手を伸ばそうとしてハッとした。

「捕らえた時に……奪われたんでしたわ……母上様ごめんなさい」

 アメリアの側で痛みに気を失った母を見ながら何も出来ない自分

に涙が溢れてくる。

(アマテラス様……)

 ◇◆◇◆

「たいへんよー、ユウマー、テラス様ー」

 額に汗しながら、走ってきたのはリリーノだった……そういえば、

今までいなかったなと思い出したクルルである。

(やばい……すっかり忘れていた……結婚のこと、なんて言ったら

いいかな……)

「やあ、リリーノ、あの、ああ久しぶりだねー」

「ユウマ? なに、なんかへんよ?」

 あからさまに様子がおかしいクルルをジト目で見るリリーノ……。

「ユウマ、なにかありそうね、でも後で聞くわ。大変なことが起き

てるのよ」

「リリーノちゃん落ち着いてくださいな」

「テラス様あああああ、やっぱりこの太陽の輝きは、お隠れから出

てこられたのですね」

「色々と迷惑をかけちゃいまいたね。ごめんね」

「私は大丈夫です、すぐに高天原に戻ってこれずに申し訳ございま

せんでした」

「それは、気にしないでね。私がリリーノちゃんにお願いをしてい

たんですから」

「んん? そういえば、リリーノはどこに行ってたの?」

 クルルが、すっかり忘れてしまうくらい最近はリリーノが登場し

なかったのはテラスからの特別任務を受けていたからだ。

「北、南、西の魔法神に会う為にそれぞれのエリアへ行ってました」

「そうだったんだ」

「ああああ、また脱線してしまいましたね。詳しい話は後程話ます

ので、今はスラントのことです」

「スラントだってええええ?」

 思わずクルルは大きな声を出してしまった。

 久しぶりに聞いたその名前が、しかも高天原で聞くことになるな

んて……あいつも出世したものだ。

 額に手をトントンと当てながら溜息を吐くしかなかった、それほ

どに嫌な名前だ。

 リリーノもいぶかしげな顔をしながら、スラントの話を続けた。

「スラントが、東の国ブランガランを武力で制圧したみたいなの…

…私の聞いた話だと闇に乗じて攻め込んだそうよ、さらにはテラス

様のお隠れと闇の責任は、女王であるミライラと巫女であるアメリ

アのせいになっているみたい」

「二人は? 無事なのか……」

「ミライラは降伏し、スラントが新王になったわ。二人は大罪人と

して牢屋で監禁されているみたい」

「……あっ、でも、テラスが戻ってきたんだから、闇は祓われたじ

ゃないか、ミライラやアメリアに責任はなかったってことにならな

いのかい?」

「タイミングが悪かったみたいなのよ」

「タイミング? タイミングってなに?」

「スラントが、新王を宣言したとたんに……闇が消えて太陽の光が

差し込んだの」

 クルルはその話の意味をかみしめると、テラスのことが気になっ

た。

 案の定、テラスは項垂れた様子でウツロな顔をしている

「私が……隠れたりしなければ、アメリアもミライラも……私の、

み、巫女たちが、ああああ、私ったらなんてことをしてしまったの

でしょう」

「テラス、おい、テラスったら」

 クルルがテラスの肩のに手をかけ、軽くゆすりながら声をかけた。


「テラス、しっかりして、アメリアとは連絡がとれないの?」

「はっ、そうですね、アメリアに呼びかけてみます」

 そういうとテラスは目を閉じて、意識を集中し始める……やがて

ブツブツと小さな声で誰かと会話をし始めたのだった。

 数分後、目に涙を溜めたテラスの顔がクルルに抱きついてきた。

「うわあああああん、ユウマああああ、お願いよアメリアとミライ

ラを助けてほしいの」

 テラスは、グスグスと泣きながらもミライラと会話した内容をク

ルルに伝えた。

 地下牢に閉じ込められているが、二人はなんとか無事であった、

しかしミライラがスラントから受けた暴力により顔を張らし痛みを

うったえているそうだ、水も食料もなく怪我の治療もない……最悪

の状態みたいだ。

「アメリアとミライラには、俺も黒姫達も世話になっているんだ、

もちろん助けるさ……だがその前に……」

 クルルが目で合図を送ると初芽がコクっと頷いた。

「俺が城の付近まで連れていくから、様子をみてほしいのと、アメ

リア達の治療をお願いしたいんだ」

「……あるじは?」

「俺は初芽みたいに姿を隠すスキルを持っていないからね、潜入は

ちょっとまずいかな」

「ん? ユウには八百万の加護があるから、問題ないよ」


 ミーコがクルルの背中をパンパン叩きながらニコニコしている。

「八百万の加護だって? それはミーコが俺から抜いてくれたんだ

よね?」

「あれれ、言ってなかったかな……ユウが首に下げているペンダン

トには、八百万の加護のスキルが込めてあるんだよ」

「えええー、このペンダントにそんなスキルがあったの? 聞いて

ないよ」

「言ってなかったかも……ごめんね。だってユウは、八百万の加護

をスキルとして体に有しているのが嫌みたいだったから、特別に作

ってあげたんだよ。だからこれはユウだけのオリジナル魔法具みた

いな物なんだよ」

「オリジナルって? そもそも八百万の加護の元祖はミーコが作っ

たんだよね」

「まあ、私が作ったのは森羅万象の加護だけどね、今回はそれの八

百万バージョンだよ、さらにテラス達が作った貧弱なのとはレベル

が違うよ、ウフフフ」

 ミーコはテラスにむかって舌をペロッと出して笑った、テラスが

少しばかりムッとしているが、気にせずに話を続ける。

「今のユウなら、初芽と同じスキルが使えるし、他の加護と併用す

れば稼働時間も長くできるはずだから、二人で城内に潜伏するぐら

い問題ないはずよ」

「問題ありますよ、マスターと初芽ちゃんの二人でなんて行かせら

れませんよ。もちろん私も行きますからね」

 こうしてクルル、初芽、オリヒメの三人がアメリアとミライラを

救出する為の城内潜入部隊に決定した。

 他の女性陣からも参加したい旨の話はあったが、あまり多いと感

づかれてしまう可能性もあるので、この三人にしたのである。

 さっそくとばかりにクルルが、スキルを使う為にオリヒメを肩に

のせ、初芽と手をつないだ時だった。

「旦那様、まって下さい……あの、私も連れていって下さい」

「うーん、でもあまり多いと敵にも気づかれやすくなるしって、さ

っき話したじゃんか」

「ですけど……」

「どうかしたの? 黒姫らしくないよ」

「アメリアに借りた服を返したい……きっと着替えをしたいはず…

…」

 黒姫は、一組のジャージをクルルの前に出すとお願いしますと頭

を下げる。

 そのジャージは、以前に黒姫がアメリアから借りたものだった。

「ご主人様、黒姫を行かせてあげてほしいワン……本当はあたちも

行きたいワンでも、皆で行くのはさすがにまずいワンよね。なら黒

姫だけでもお願いだワン」

「分かったよ、皆もいいかな?」

 クルルの問いかけに、クルルツマーズの全員が頷いたのだが、一

人だけ頬を膨らまして怒っている女性がいた……リリーノだった。

「そういえば、ユウマさん」

「なにかなリリーノ……」

「あなた、神っぽい雰囲気があるんだけど……それとこちらの、も

のすごい神々しいオーラの持主はどなた様なの? あと森羅万象の

加護を作ったとか、ペンダントに力がとかいったい何のこと?」

「えっとね、その話は少し長くなるから……スクナビコナから聞い

てくれるかな?」

 そう言ったとたんにクルルはスキル≪転移の王≫を発動させると

四人で転移してしまった。

「ちょっとおおおお、ユウマあああああ、いったい何があったのよ

ー」

 狂乱のリリーノの肩をトントン叩いたスクナビコナが、ことの次

第を話す為にリリーノに落ち着くようにと言うと、残ったクルルツ

マーズからリリーノへの説明会が開催されたのをクルルは知らない

のだった。

 ◇◆◇◆

 クルルの転移スキルは、人物や場所の情報さえあれば行ったこと

がない場所でも辿りつけるのだが、今回は念の為に城の近くに一度

転移してから行動することにした。

 ブランガラン城の裏側といえばいいのだろうか、正面の入場門と

は反対側の堀の近くに転移すると、情報収集の為に初芽に偵察に行

ってもらう、いきなり牢屋の中に四人も現われてしまうと見張りの

兵士などに見つかってしまう可能性が高いので、その辺も含めての

情報を得る為の偵察であった。

 クルルから、気を付けて行くように言われた初芽が、シュッ――

――と軽やかに跳ぶとタタタタタットントン―――――と城壁を登

っていってしまった。

 あまりの軽やかな所作にクルルからは、溜息が漏れたほどだ。

(初芽が日本代表でオリンピックとかでたら、金メダル確実だなー)


 この非常時なのに、クルルの空気の読めない感想だ。

 ――あっという間に潜入した初芽の方は、城内の様子や兵士など

の数や配置や話し声のする部屋などを入念に調べていた。

 あらかた情報を得たあとは、地下牢まで足を延ばして状況を確認

する。

 薄暗く、すえた臭いのする空間を慎重に進んでいく、だが地下の

通路はシーンと静まり返っており人の気配も感じられなかった。

(あまり警戒をしていないのかな……?)

 そんなことを考えながらも進んでいくと、少しだけ広い空間にで

た。

 そこには、テーブルと椅子が配置されており燭台にはロウソクが

明かりを灯している、どうやら地下牢を監視する者達の待機所のよ

うな感じだが、ここにも誰もいる気配もなく、ただボヤッとした明

かりが、この先へと続くかもしれない扉を照らしていた。

(この先が牢屋のある場所だと思うけど……簡単すぎる……)

 初芽が、いぶかしげな顔で扉を見つめていると――――ガシャア

アアアアンと激しい音が鳴り響いた。

 とっさに音の方を確認すると、そこには鉄格子が通路を塞いでい

る。

「……やはり……罠か」

 初芽がポツリと呟くと同時に、いやらしい下品な笑い声がこだま

した……スラントであった。

「ブヒャヒャヒャヒャアアアア、やはり鼠が現れたようだな、おっ

と、動くなよ! 魔法も使うなよ、使えばこうだぞ」

 スラントの後ろには……首筋に剣先を突き付けられている二人の

女性がいる。

 ミライラとアメリアだった、リリーノの話の通りにミライラは腫

れ上がった顔で痛みを堪えているのだろうか、苦しそうな表情であ

った。

「……卑怯者、二人を離せ」

「ブヒャアア、離すわけねーだろが、ふん、よく見るとなかなか可

愛いじゃねーか、どうだ誰に頼まれてここに来たか言えば、このス

ラント王の側室候補にでもしてやるぞ、ブヒャヒャヒャ」

「…………」

「ふん、言わないなら二人を殺しすだけだ」

「あなたは、あの時の……彼は無事に?」

「はい、ありがとうございます、ミライラ様」

「なんだ、お前らは知り合いか、なるほどな」

スラントが、ミライラとアメリアの顔や腹を自分の持っている杖で

何度も殴りつけた。

痛みに耐える二人……。

「やめ、やめて」

「ハアハア、なら言え、誰の命令で二人を助けに来たのか、言えや

ああああああ」

「言う必要はありません、どのみち私達はここから出ることは叶い

ません」

「母上様、あまり話すとお体にさわります、あとは私が……」

「その必要はない、ブヒャ、この二人がいかなる理由であれ。俺の

前から姿を消したとあれば、東の国の全てを破壊する……嘘だと思

うなよ、俺の所有する魔法部隊がいれば、東の国どころか、この世

界を破壊することも可能だぞ、ブヒャヒャヒャ、よく考えてから行

動しろよ女」

「…………」

「ブヒャアアアア、今日はお前で楽しんでやるよ、女」

「おい、この女を捕えて俺の部屋へ連れてこい」

「はっ、スラント国王」

初芽が、兵士に捕えられ連行されていく……。

(あるじ……失敗しちゃった)

※※※

「初芽ちゃんが、捕まってしまったワン」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ