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47 クルル結婚しちゃいます

 ここは樹海の奥深く……カランコロンとチャペルが鳴り響く。

 真紅のバージンロードを六人の女性が、女神達に手を引かれなが

ら入場してきた。

 先頭の黒姫に続いて、白姫、初芽、オリヒメ、ミーコ、そしてル

ルも歩いてくる……! バージンロードの先には、クルルが白いタ

キシード姿で待っていた。

(……俺も結婚か〜。ユウマだった頃と比べたらダンチだな……彼

女もいなかった男が、六人の女性と結婚だなんてな、あの頃の俺か

らすれば想像もつかないなー)

 そんな回想をしながらバージンロードを歩いてくる、可愛い女性

達を見つめた。

 ◇◆◇◆

 昨日のことだ……ミーコと繋がったクルルは、とつぜん女神達か

ら結婚なんて話が出てしまった。

 クルルとしては、色々と片付いてからなんて考えていたが……魔

法協会の件にしてもスラントの件にしても何も話が進まないままに、

今度はテラスの引きこもりだ……これ以上待たせるのもクルルのエ

ゴかなと反省したのだった。

(こんなに、愛してくれてるのに待たせすぎだよな……それに獣人

種の寿命を考えたら、俺のワガママにこれ以上付き合わせる訳には

いかない)


 クルルは、黒姫達に謝罪すると式をあげることを提案したのだ、

テラスの件もあるけれど一日ぐらいの時間を使ってもバチは当たら

ないだろう。

 それにクルル自信にも、決めないといけない物があったのだ。

 それは、今後の生き方だった……ミーコが繋がった後に胸に浮か

び上がった有真印を見せると衝撃の一言を発したのだ。

「ユウ、あなたは私と繋がったことで荒人神として神になりました

よ」

「えっ!? あらひとがみ? 神様になっちゃったんだ……やっぱ

りなー……なんとなく俺の心から少し人間らしい感情が薄れた気が

していたからね……」

 クルルは、大きな溜め息を吐いたのだった。

 それを見たオリヒメが申し訳なさそうにクルルに話しかけてきた。

「ミーコ様は、マスターのことを考えての事です……怒らないでね」

「ん? 大丈夫だよ……うすうす変化には気がついていたからね」

 オリヒメが、すみませんって顔をしていたのでクルルは気にしな

いでと頭を撫でる。

 クルルの事を考えて……それには理由があった。

 クルルが氷の球体に閉じ込められていた時に、オリヒメは眠りに

ついていた為に紳各化する力を貯めることができなかった、更には

霊峰富士の力が入ってきたことで神格へのスピードが急加速したの

だった……そして目覚めてからの女神達との交流によってクルルが

神になるのは時間の問題だった……というよりも後小一時間もすれ

ば神になる……それぐらいのとこまできていたのだ。

 じゃあ仕方がない、神になってしまえばいいと思うかもしれない

が、神になるとは人ではなくなるということである。

 クルルシアンの肉体から離れて魂に戻り、神になるのだから……

人を辞めることになるのだ、今と同じような生活はできないのであ

る。

 ミーコはクルルが下界への未練を持ちながらもいずれは神格して

しまうことへの諦めの様なものに気が付いていたのだった、人とし

てまだやりたいことがある、きっとその思いはクルルにとって大切

な事なのだろうと……ミーコは、なんとかしてあげたいと思ってい

たのだ。

 その為には、クルルを人であり神である存在にするしかなかった

のだ。

 少しだけ寂しそうにしているクルルの腕にしがみつくと、ミーコ

が言った。

「荒人神は、神であって人である存在だよ。これでユウは下界でも

天界でも自由に暮らせるし、神と人の両方に介入できるし……」

「人には神としても力が使えるってとこかな……?」

「うん、ユウは嫌かもしれないけど一方的に神だけになるよりいい

かと思って……ごめんね」

 クルルはミーコを抱きしめると、ありがとうとお礼を言った。

 十分にミーコの思いが伝わったからだった。

「ありがとう……それじゃあ明日の結婚式の準備をしないとね」

 クルルは、女性陣に向けてウインクをすると皆がコクコクと頷い

たが一人だけ寂しそうにしていたのが……ルルだった。

 クルルはそれに気が付くとルルの近くに寄って声をかけた。

「ルル、どうしたの何か寂しそうな顔をして」


「んーん、なんでもないですよパパ……」

 どう見てもなんでもない顔ではなかった、それを見かねた黒姫が

助け船をだす。

「旦那様お願いがある、ルルもお嫁さんにしてあげてほしい」

「……黒ママ、そんな、こと」

「そうだワン、いつもいつも鈍感なご主人様にヤキモキだワン」

「あるじ……ルルの気持ち……気づいてない?」

「マスター」

「ん? 竜の娘もユウに惚れてたのね、私はこの先ユウが他の女性

を連れてきても可! だよ」

「……ミーコ、そんな人聞きの悪いこと言わないでよ」

 クルルは、顔を真っ赤にしながらモジモジしているルルを抱きし

めた、ルルの左右で色の違う目が照れながらもクルルをしっかりと

見つめている。

「ルル、もう娘は卒業だね……俺の奥さんになってくれるかな?」

「はい……パ……あなた」

 樹海の奥で拍手が巻き起こった、この場にいた全員がルルとそし

てクルルの妻となる黒姫達へ祝福の拍手を贈ったのだった。

 それから、たくさんの女神達に手伝ってもらいながら結婚式の準

備を皆で進めたのだ……。

 ◇◆◇◆

 バージンロードを歩いてくる女性陣がクルルの前まで到着すると、

クルルの後ろに整列した。

 左から黒姫、白姫、初芽、オリヒメ、ミーコ、ルルの順番で並ぶ

……。

 この順番はミーコからの提案だった、もちろん神としてのミーコ

に遠慮した黒姫達が断ったのだが、クルルの前では神も人も関係な

く平等でいようと乙女の約束を交わしたことで、婚約した順番で並

んでいるのだ。

 クルルの前では同じ妻として平等でいる、それは黒姫達がミーコ

と喧嘩をしたとしても天罰は下らない……同じ立場という事なのだ。

 サイコが、神父役としてのセリフを言い始める……病める時もと

かそんなやつだが少しだけオリジナルな部分が追加されていた。

 それは女性達へ向けられていた言葉だった、今後もクルルが他に

妻を迎える場合も許せますかとサイコが言っている。

 クルルは思わず口からブーッとやってしまいそうなのを堪えた…

…。

(なんだそりゃ……)

 だが、女性達は大きな声で『はい』と返事をして了解したのだっ

た。

 ミーコも特に問題ないといった顔をしている……クルルは神々の

母ともいえる霊峰富士の神ミーコからもお墨付きをもらったのだっ

た……今後も結婚する女性を増やしてもいいというお墨付きをだ…

…。

 男としては羨ましいお墨付きだが、もともと日本人であるユウマ

にとって理解するだけで精一杯だった。

(ラノベのハーレムものみたいだな……)

 そんなクルルのことなどは、お構いなしに式は進んでいくのであ

る。

 いよいよ時はきたれり……さあさあ誓いの口づけを! なんか興

奮しまくりの神父役サイコに煽られるままに、黒姫のベールを上げ

て顔を覗きこんだ……顔を赤くさせた黒姫は目元を潤ませている。

「待たせたかな? 黒姫」

「……うん……待ったかもね」

 照れくさそうに微笑んだ黒姫を抱きしめるとクルルは口づけを交

わした。

 唇と唇が触れると……黒姫はホヘッと床にしゃがみこんだ……幸

せそうな顔でだ。

「人白姫の姿じゃなくても、いいんだよ。俺は白姫の全部が好きな

んだから」

「ありがとうワン……でもあたちも可愛いドレスが着たかったのだ

から、いいんだワン。それより早くワン早くキスだワン」

 肉食系な白姫に口づけをして、抱きしめるとキューンと甘い声を

だして白姫は倒れた……。

「……初芽さん? しないの?」

「……あるじ……恥ずかしい」

 初芽は、顔を両手で隠したまましゃがみこんでいる……隙間から

見える顔色は髪と同じぐらい赤かった。

 クルルは、初芽と初めて会ったときのことや我慢して強気な女性

を演じていた時のことを初芽に話ながら、自分もしゃがみこんでベ

ールを上げた。


「あるじ……」

「初芽とは色々あったね……これからも宜しくね」

 そう言って初芽のおでこに、そっと口づけをすると初芽は気絶し

てしまった……。

 ジュリが慌てて介抱してくれた。

「オリヒメには、どうすればいいのかな?」

「……マスターが宜しければ……あの、その」

 もじもじしてるオリヒメの手をそっと握ると、オリヒメに目で合

図した……コクリと頷くとオリヒメはクルルの手の中に入っていっ

た……オリヒメの小さな頬がほんのりと赤くなった。

 クルルは、繋がった手をそのままにして口づけした……ホウッと

息が漏れるとオリヒメは、体の力が抜けてしまったようでフラフラ

と床にしゃがみこんだ……フーコが介抱に走った。

フーコの介抱にほっとしたクルルは、ミーコの側に近づい頭を撫で

た。

ガチガチに緊張しているミーコは、とても可愛かった。

「えっと……ミーコは、どうする?」

「……ユウがさっきオリヒメにしたのと同じ……がいいな」

 分かったと頷いたクルルは、ミーコの手を握るとクルルにまで聞

こえてくる心臓の鼓動が分かる……愛しさからギュット抱きしめ口

づけをする。

 手はもちろんミーコと繋がっていたが、すでにミーコは恥ずかし

さが頂点に達したのかヘタッと床に腰を落としていた……クルルが

優しくお姫様抱っこをすると、頭から湯気をだして黙ってしまった

が、顔は喜びに溢れていた。


「……ルルに口づけするのは、なんだか照れるな」

「フフフ……私もです、パパじゃないや……あなた」

 黒と紅の瞳にクルルの顔が写っていた……それが見えたというこ

とは、それだけ顔が近づいたわけで……二人は親子!? から夫婦

になったのだ。

 口づけを交わした後にルルは、無邪気な笑顔を見せてくれた。

(……倒れないでよかった)

 ◇

 つつがなく結婚式も終わると、お祝いの宴が始まった。

 島中の神々がお祝いに駆けつけてくれて、黒姫達は言葉をかけて

もらっている。

 そんな中、ヌノミとオハナが神々を代表して贈り物をしたいとク

ルルの前に現れた。

 もちろん、ありがたく頂きますとクルルは六つの箱を受け取った。

 どうやら、神々から女性陣への贈り物みたいで箱には名前も書い

てあった。

「……旦那様、開けてもいいのかな?」

 クルルは、ヌノミとオハナを見ると二人は笑顔で頷いた。

 せーの! で箱を開けると中に入っていた品物にクルルは、ブー

ッと飲み物を吐いてしまった。

「……パンツ? だよねこれ」


 箱の中にはパンツが、入っていた……シマシマの綿パンツだ。

 黒姫と白姫には、白黒のシマシマ綿パンツ。

 初芽には、紅白のシマシマ綿パンツ。

 オリヒメには、黄色と白のシマシマの綿パンツ。

 ルルには、黒と紅のシマシマの綿パンツ。

 ミーコには、銀と水色のシマシマの綿パンツ。

 それぞれ五十枚づつはある……もう一生パンツ買わなくていいか

もしれない。

(なぜ……パンツ?)

 神々からもらったパンツは、神々しく見えた……もったいなくて、

はけないかもしれない……なんてことはなく、せっかくだからと着

替え始めたのだった。

 それぞれが、贈られたパンツをはくとドレスを捲し上げてクルル

に見せにきた……。

 何て言えばいいのだろうか……でも素直に感想を述べておいた。

「シマシマ綿パンツは、神! みんな可愛いよ」

 その言葉に拍手が、沸き上がったのだった。

 こうして、クルルは結婚して皆と夫婦になったのであった。

 ◇

 宴も終わり、お祝いに来てくれた神々を見送るとすでに深夜だっ

た。

 お手伝いをしてくれたサイコ達も、気を利かせたのか片付けが終

わると早々に去っていった。

 クルルと黒姫達は樹海の奥深くで焚火を囲んでいたのだが、さっ

きから女性陣がソワソワしている。

 さっき水浴びをしてきたばかりなのに、なんだかうっすらと化粧

もしてるみたいだし……白姫はすでにパンツを五回もはき替えてい

る……といっても何度も同じ白黒のシマパンなのだが。

「白姫さっきら何度もパンツはき替えて、どうしたの? まさかお

漏らしとか?」

「なにを言ってるワンよ! どうしてこうもご主人様は朴念仁なの

かワン。わざと気づかれるようにパンツを何度もはき替えたワンよ。

お漏らしじゃないワンよ、勝負パンツに決まってるワン」

 あまりのクルルの鈍感王っぷりに白姫も大きな声になってしまっ

た、その会話を聞いた女性陣は一段とソワソワとし始める。

 白姫は鈍感王クルルにとどめさしてきた。

「今日は初夜だワン!」

 辺りに響く白姫の声がこだまとなって島を駆け抜ける……初夜だ

ワン、初夜だワン、初夜だワン。

 さすがのクルルも、ここまで直球勝負をされて気づかない訳もな

く、やっと理解したのであった。

「……ちょっと待ってくれよ白姫さん。全員で六人もいるんだよ…

…まさか」

「あたりまえだワン、そのまさかワンよ。全員いっぺんにだキャワ

ンキャワン……痛いワン」

 そうとう痛かったのだろうか、目に涙を溜めた白姫が振り返ると、

女性陣五名が白姫の尻尾を踏んでいた。


「白……いっぺんになんて、ダメですよ。まだ早すぎます」

「えっ?」

「キャー、違います……旦那様、今のは間違えです。順番にお願い

します」

 黒姫がそう言って敷地の奥に建っている、おしゃれなログハウス

を指差した。

 いったい、いつの間に作ったのだろうか? 疑問で一杯のクルル

にミーコが教えてくれた。

 式の準備の合間に、モクミが作ったそうだ……六LDKの立派な

ログハウスだった。

「こほん……ユウは、黒姫の部屋から順番に巡っていって、最後が

ルルだからね」

「……拒否権はなさそうだね」

 朝方までクルルは頑張ると、最後はルルの部屋で疲れて眠ってし

まった。

 ルルは、そんなクルルの寝顔を独り占めせずに、全員を呼んでき

て一緒に眠ったのだった。

 ※※※

「夜の描写は……ないのかワン?」

「……いずれ閑話で……」


王になったクルル(前書き)

クルルシアン・ザ・ミドルクラウン・ユウマ

クルルシアン・ザ・センタークラウン・ユウマ

に訂正しました。

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