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3 クルルのスキル選び

俺は、目を覚ましたが体はすぐに動かない。でもそんな事はわかっている。

 この体を動かすのは17〜18年ぶりになるのだから……。

 ゆっくりでいいはずだ、少しづつ確認していけば。そのまま一時間程たったであろうか? 俺は体を起こしベッドへ寄りかかった。

目の前が薄暗くなり光輝くカードの様な物が浮いている。

 カードには、スキル名 詳細 使用9MPが記載されている。これがテラスの言ってたやつかな。俺は、目の前にあるカードをおもむろに掴むと、内容を確認する。

 【スキルナンバー 1

 名称 ゴールドフィンガー

 詳細 どんな女性もイチコロの技

 使用MP 下位10〜30 上位 31〜60】


 ……。


 ありだな……キープで!


 片っぱしから確認する。


【スキルナンバー 6

 名称 スワンプリンス

 詳細 白鳥の様な貴族でいられる。自動礼儀作法 自動ジゴロシステム搭載 使用MP 0備考 このスキルは永久発動します。】


 数字の通り並んでるわけじゃなさそうだ。全部見るのも大変だな。

たしかテラスが言ってたな。よく考えろって……白鳥の王子属性もいいな。貴族社会みたいだし、生きていくだけならモテモテもいいな。


 これは……なになに?


【スキルナンバー 39 名称 右手が恋人】


 ……。


読むまでもないな、異世界でも同じ生活は嫌だ。


【スキルナンバー 9

 名称 偉大な料理長

 詳細 自動調理 自動調理知識 自動更新素材知識

 使用MP下位 5〜20 上位 21〜45】


【スキルナンバー 18

 名称 セクシャルスコープ

 詳細 一度出会った女性を観察できる。自動録画システム搭載】


 ……犯罪じゃんかよ。


この世界だと覗きはいいのか?

 俺はRPGのキャラ設定にこだわるタイプで、ゲームを買ってもキャラメイクでヘトヘトなんて多々ある。モン○ンなんて全作やってるが、声を選ぶのに全部聴いたりするし、男にするか女にするかなど、とにかく決められない男なのだ。


しかもここは異世界。剣 魔法 貴族 とファンタジーな異世界だ、下手なキャラメイクは死を招く。そもそも言葉は通じるのか? 不安だらけだ。


 自動翻訳のスキルカードは無いか。


 どうするか、勇者なんてスキルカードもあったけどさ、戦うとか実際無理だろ。


 平和に生きていく、それが重要だと思う。


 目が覚めてから、だいぶたつ。部屋に1つだけあった小窓から、日の光が赤く染まっていく。お腹も空いている。決めなければ。この体は久々の食事を欲している。


 …………。


 ゴールドフィンガーだな。 ニヤニヤするな俺よ男ってそんな生き物さ。


「お馬鹿ユウマ」


 突然の叫び声と同時に誰か落ちてきた。ガシャガシャン……綺麗なお姉さんが、ひっくり返ったいる。お姉さんのスカートがめくれて、白い下着がお目見えしている。


「イタタッ。きゃあっ、いやっ〜エッチユウマの変態」


 スカートを戻しながら真っ赤な顔のリリーノが立ちあがった。


「見ましたよね?」


 ジト目のリリーノも綺麗だ。


「見 て い な い よ……そっそれより何しに来たの?」


 リリーノは東の魔法神だ。5年近く不在だった魔法神に最近選ばれたのだ。ここに来るってことは、ご神託? 降臨かな。


「ユウマが、スキルを決めかねてるから心配で……テラスが行って

もいいからって」

「なんだ、それなら大丈夫だよ色々考えたけどさ、この世界で暮らすならこれだよ」


 俺は、スワンプリンスのカードを見せる。

 フルフルプルプル……リリーノさん? もしかして怒ってます?


「クルルシアンの体をモテモテジゴロにするおつもりで?」


 たしかにクルルシアンの体だけど、俺の器だし。

困ったな、とにかくリリーノに納得してもらおう。

 俺は、リリーノの肩へ手を……まだ体が馴染んでないみたいだ。手を置いた場所は、リリーノマウンテン。双子の山の上だった。


「いやぁ〜ん」


バチンッ。リリーノの平手打ち。


「ユウマのエッチ。まだこんなこと早いです」


 もっと後ならいいのか〜いいのか〜と考えながらも俺は、ベッドから転げ落ちたしまった。その右手にはカードが握られている……カチャカチャ。


ピンポンパンポーン。


「承認 スキルを空きスロットへ接続します」


 やっちまった。まずいぞ、非常にまずい。何のスキルが接続されたんだ?


 右手が恋人だったら……どうしよう。


 俺は、急いで部屋中を見回した。鏡だホッペを見たい。しかしこの部屋には鏡なんてない。そうだ、窓ガラスで顔を見てみよう。そこには五歳児の姿が写っている。ホッペには何も書いてない。


 ふいに俺はリリーノを見た。彼女も事の次第に焦っているようだ。


「リリーノ俺の顔をホッペを確認してくれ」


 リリーノが指先で軽くホッペをつつく。

【名前 クルルシアン・トェル・フリード

 性別 男

 年齢 (23歳)

 身分 準男爵分家 当主

 職業 魔法使い

 スキル 現在接続中 残り時間 95時間

 特別スキル テラスの加護 リリーノの祝福】


「現在 接続中だって。分かるまで4日間はかかるみたいね。何の

スキルかしらね? 膨大なスキルデータが接続されてるみたいね」


 リリーノは、俺に胸を触られた恥ずかしさ? と事の大きさに顔が真っ赤だ。


「またしても、ご迷惑を……」


「もういいよ。今に始まった事じゃないしね。あっ、それよりさ俺って大きくならないの? ステータスは23歳なんでしょ。体が5歳って困るよ」


 ガラス越しに写る自分は、幼稚園児みたいだ。


「すぐに成長はしないでしょう。ですが普通より早く成長するはずです。年齢に体が追い付こうとしますわ」


 それから俺は、リリーノとおしゃべりして過ごした。本当は、この建物の調査とか外の様子を確認したかったが、体が思うように動かなかったからだ、リリーノがテラスに聞いた話だと、馴染むまで1日はかかるらしい。

接続中のスキルの件もあるし、慌てて動くこともないだろう。それにこの世界について聞きたい事があるしね!


俺はリリーノが持ってきた食事に感動しながらも、話を進める。


「よく食べますこと。クルルシアンは食の細い方でしたわ。18年ぶりの栄養補給ですから仕方ありませんけど。もっと良く噛んで下さいな」


 リリーノは嬉しそうに、俺の口をハンカチで拭いてくる。

 リリーノの目からは、涙が溢れていた。


「ごめんな……リリーノの大好きだったクルルシアンを助けられず、体を器として借りちゃって」


 俺っだって被害者ではある。だがその前に男だ綺麗なお姉さんの涙なんて見たくない。


「あっ。違うの誤解させてしまって、ごめんなさいね。嬉しいの、やっとクルル様と……こうやって話したり、食事をしたりって」

「そうか。でも中身は別人だぞ」


 俺はリリーノが見れなかった。


「ユウマ。聞いて、あなたも、クルル様も同じなのよ。49の異世界に住む同じ者同士。種族など多少の違いはあっても、同じ性質、人格、性格を持った同じあなた。ユウマの中にクルル様がいる。クルル様の中にユウマがいるの。少しズルいかもしれないけど私は、ユウマが大好きよ」


 そう言うとリリーノが俺に抱きついて来た。フワッと甘い香りがする。


 しかし俺の体は五歳児だ。かっこよく言うなら。


だが断る。


もっと自分を大切にするんだ。


 俺が大人の体になったら……お願いいたします。


 結局俺はそのまま眠ってしまったらしい。異世界転移騒動で疲れていたのもあったし、この体が人肌へ幼児的反応を起こしたのだろう。


親戚の綺麗なお姉ちゃんと添い寝が発動した。


 ぐっすりと寝れた。久しぶりの快眠だった。いい香りがしてきた、卵とベーコンの焼ける匂い。この世界にもベーコンなんてあるんだと思いながら、辺りを見回した。リリーノが杖から炎を出してベーコンを焼いている。本当に魔法ってあるんだ。


「起きましたか?お寝坊さん」


 リリーノめちゃくちゃ可愛いぞ。


 俺はリリーノと食事を取りながら話を始めた。


「降臨って、いつまでいられるの?」

「そうですね。格下の神ですと1分とかそんな感じで、私だと3日ってところでしょうか」


 リリーノは東の魔法神 四枚翼持ちだ。八百万の神の中では幹部

クラスであろう。


 その後、リリーノに質問攻を喰らわした訳だが、だいたいわかって来た。


 ①言葉は、エクスキャリント語を使う これはこの世界で共通語らしい。


  ちなみに俺は、テラスの加護で自動翻訳されているらしい。


 ②一年は千二百日、1ヶ月は100日だ。うるう年とかは無いそうだ。


 ③この世界は、色々な種族がいる、人間と共存してる種族もあれば、めったに姿を見せない種族もいるらしい。寿命もまちまちだが、人間でも200年は生きるらしい。1ヶ月が100日なのだから、寿命も長いのかな? ちなみに、リリーノはハーフエルフだったみたいだ。耳がとがり、緑の髪の毛がその証しだ、 今は神だから関係ないか。ハーフエルフは平均で500年以上生きるらしいが、リリーノは23歳で逝った。よほど寿命を縮める秘術を使ったみたいだ。


  俺は、人間種のようだ。ただしテラスの話だと異世界の力の作用で上位の位置にいるとの事だが、まだよく分からないらしい。


 ④このエクスキャリントは、東西南北に四の国がある。地図を見せてもらい驚いた。地球の世界地図と同じだったのだ、ちょうど日本の東京あたりにバツを書いて四等分した感じで国境があるらしい。気になったので聞いたが地球でいう日本には誰も住んでいないようだ、境界の交差点として、この島には上陸しないルールみたいだ。


 ⑤俺の今いるフリード領は地図でいうアルゼンチンのあたりみたいだ。細かく分からないのは、地図が雑なのだ。ファンタジーの定番、紙が貴重で地図の発達が遅れているらしく、領民達はあまり領の外に出ないらしい。電車、バスなんてないし、空を飛ぶ乗り物もないそうだ。上級貴族の中には魔法使いを雇って飛ぶ事があるらしいが、高額だし距離も短いらしい。飛翔系統の魔法はMP消費が、半端無いそうだ。


 ⑥通貨も共通で、テラスと言うらしい。金貨が一枚で一万テラス銀貨は千テラス 銅貨は百テラス 後は、鉄硬貨で十テラスだ。十テラス以下の単位は無いらしい。これはお金にのみだと言っていた。ちなみに、リリーノが持ってきた食材のキャリント棒が一本十テラスだ。日本の人気駄菓子に似ていた。分かりやすい単価だった。


 ⑦俺の現在の状況は、幽閉された、恐ろしい力を持った子供……

らしい。俺には、二人の姉がいて。長女のフレイが婿を迎えたらしい。次女に関しては、南の貴族に嫁いだみたいだ。今のフリード領は、長女の婿が爵位を相続したらしい。


 ガルム・トェル・フリード準男爵。婿だから1階級下がったようだ。


 貴族や平民ってのは種族とは関係ないようだ。


ん?


俺が帰って来ると。お家騒動とか起きかねないか? でも相続済のようだし大丈夫か。

 

⑧東の魔法協会って今はどうなってるんだ?スラントが総帥になったのか? リリーノは知っているのだろうか?


「まだ総帥にはなっていませんが、5年間の総帥不在の時に後継者が総帥宣言をする……それは不在の場合でした。不在のままなら、今年の12月99日までにクルル様が総帥宣言すればよかったのですが、まだ3ヶ月以上ありましたし。でも私は死んでしまいました。その場合7日目の昼12時までに、クルル様が宣言できなかった場合。副総帥のスラントが総帥になれるのです」


 リリーノが亡くなって1日。俺が高天原から器移しでここに来たので1日……昨日のスキル選びで1日……もう3日たっている。今日を入れて後4日か。


 俺は、東の魔法協会なんて別にどうでもいい、フリード家に戻っても厄介者だ。

 次は殺されてしまう可能性もある。体は、5歳児だし戦うなんて無理だろ。


 すまんリリーノ。俺リリーノの顔見れないよ。でもこのままでいいのか?。


「ユウマ。大丈夫ですよ。気にしないで 私がスラントに神託を出しますわ。次の総帥は暫くの間、不在にするように伝えます」

「ちょっと待って。相手はスラントだ、リリーノが魔法神になった事を信じるのか?」


 リリーノがハッとした顔で俺を見た。それに、スラントって西の魔法神の祝持ちだ。洗礼は出来るかもしれないが、東の魔法神の神託は受け取れるのか?


「もうわかってるんだろリリーノ。俺も覚悟を決めるよ」

「いや。東の魔法神リリーノ様。この俺に神託を……」


 俺は、リリーノの前に畏まった。俺も男だ。体は5歳だが魂は28歳だ、綺麗なお姉さんは俺が護る。


「東の魔法神リリーノが命じます。クルルシアン・トェル・フリードよ。東の魔法協会の掃除を命じますわ」

「大掃除になるな」


スキル接続終了まで後99時間。

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