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14 東(あずま)村 その四

 城内を散歩する俺。自由にしていいと言われていたし、本当に自由にしていた。

気になる部屋は開けてみる。ラッキースケベとか狙ってないので悪しからず。


侍女更衣室とか侍女控室とかは、開けませんよ……。


しばらくウロウロしていると、書庫と書いてある部屋を見つけた。

気になるので入ってみる。そんなに広くはないが棚がびっしりと置かれていた。

十畳程の部屋だが、本の数は結構あったがきちんと整理されているので、探しやすい状態だった。


 何かいい本はないかと探していると! 腕の食べかけりんごウオッチから曲が聞こえてきた、着信?なぜに超天楽の着メロなのだろうか……。

 ウオッチの通話ボタンを押した。画面に現れたのは……テラスだった。


「ユウマ〜元気ですか? フフフ久しぶりですね」

「テラス! 元気だよ色々あったけどね。突然どうしたの?」

「ユウマったら全く連絡くれないから、電話しちゃった」


 んん? 声がステレオで聞こえるぞ。俺はキョロキョロと部屋を伺った。


 コトン、床に何かを置いたような音がした。そこには二本の剣達が、刃先を床にして斜めに立っている。後ろを振り返ると! 指が……俺のほっぺた触れた。


「えっ?」

「ウフフフ! ひっかかったー!」


 テラスがクスクスと笑っている。ビックリのあまり目が点になった。


「来ちゃった。ウフフ」

「来ちゃったんだ……それはそうと……その格好はいったいどうしたの?」


 テラスは、くの一みたいな格好だしかもピンクでミニスカだ。

 さすがに神様がこんな姿で現れてもいいのだろうか?


「どうかな? 似合うかな?」

「うっうん! とても可愛いよ似合ってるよ」


 嘘ではないのだ、たしかにこのピンクのくの一をここまで着こなすなんて……まさに神だ。でも一番偉い神様のパンチらは不味いだろ。


 それだけはダメだと思う。


 そんな俺の思いは通じなかった。テラスは見てみてとばかりにくるっと回転した。

ひらっとスカートがめくれる。下着については語るまい。


 ……相手は神様だ。素晴らしいとだけ言っておこう。


「ユウマったら相変わらず綺麗な魂ね。ウフフ色々困っているみたいね?」

「分かる? そうなんだよね。シュパッと一刀両断みたいにはいかないね」

「もうこっちに来なさいよ。ユウマなら大歓迎だし……色々とウフフフ」


 色々の部分はあえて聞かない。テラスやリリーノと高天原で暮らすのも悪くないけど……こんな中途半端ではね……可愛いい黒姫や白姫もいるし。


「ふ〜ん……ちょっと妬けるな〜! 二人の婚約者に負けないようにこの格好で来たのにな……」

「そうなの……だから二人みたいな服なのね」


 婚約したのバレてるのか……テラスも負けず劣らず乙女だな。


「それに私は、全部の神様で一番偉いわけではありませんよ」

「そうなの? てっきりテラスが一番かと……だって総帥でしょ?」

「それはね東のエリアでの事よ。東西南北それぞれにトップがいるの。西ならゼウスちゃんとか、北ならオーディンちゃんとかね!それもざっくり四つでエリア分けしてるだけで、他にも実力のある神はたくさんいるの」


 この世界の事をもっと知っておかないと、今後も大変だな。


なんか疲れたな……。


 そんな俺を知ってか知らずかテラスに手を引かれて、読書部屋に連れて行かれた。

 和室の畳がなかなかいい感じの部屋だ。テラスが座ると手招きをする。


「ここに頭をおいて楽にしてね。いつもユウマを見ていられる訳じゃないから、少し覗かせてね」


 テラスの膝に頭をのせる。フワッといい香りがする。いつもテラスはいい香りなのだ。


 額に手をおかれると意識が揺らいでいく。でもとってもいい気持ちだった。


…………。


「ウマ……ユウマ……起きて下さい」


 初めてテラスに出会った頃を思い出した。どうやら眠ってしまったようだ。


「ユウマも苦労してますね。婚約者との馴れ初めは妬けましたけど」


 テラスさん……お顔が怖いです。


「助けてあげたいけど……」

「大丈夫だよ。ありがとうテラス。神様に善悪も正義も関係ないもんね、神が手を出す程の事ではないんでしょ?」

「そうなの! ごめんね〜悪口でも言ってくれればね〜。すぐに天罰を!」


 テラスが手刀で首をトントンやってる。神様の天罰は恐ろしいのだ。


 それからテラスとお喋りを楽しんだ、そういえばとリリーノの事を聞いてみた。


「リリーノちゃんは、今不在でーす。私といるときに他の女性の話しをするなんてユウマは乙女心がわかってないですね。でも仕方ありませんね心配ですか?ちょっと妬けますね……リリーノちゃん西の魔法神を探しに行ってます。しばらくは、連絡もとれないでしょうね」


 そっかリリーノも頑張ってるんだな……。


「もう……妬けましたけど」


 ん? テラスが突然両手でハートの形をつくった……なんだろうなと思ってると……。


「このハートを覗いて下さい! 顔を近づけて覗くんですよ」



言われた通りに顔を近づけて覗こうとしたときだった……。

チュッ! ……。

俺とテラスはハートの中でキスをしていた……。


 えっ?? テラスはニコニコしている。


俺は、テラスにしてやられたのだ両手で作ったハートを覗くとき近づけた顔を唇を狙い打ち

された。ぽーっとしていると、テラスが腕を組んできた。


「ウフフ! ウフフフフ」


 テラスはご機嫌だった。このままいい雰囲気になりそうそんな二人の前に……。


「スクナビコナ!」

「ビコナちゃん!」


 スクナビコナはお怒りの表情で浮いている。小さいから怒った顔もキュートだった。

 プンプンと音が聞こえてきそうな膨らんだホッペも可愛いよ!


「テラス様! なんて事をしたのですかー! いくらお慕いしてるからって」

「スクナビコナ落ち着いて……って」


 スクナビコナのジト目が……。


「クルル様も何故にあのような古典的な手に引っ掛かっかるなんて」

「ごめんなさい」

「テラス様! 天照大神のあなたが人にチュウだなんて……しかも唇と唇でなんてしたらどうなるか知りませんよ。もうすでにクルル様が神格化し始めてます。このままでは」

「だって〜ユウマにもっと私の加護と愛をあげたかったの」

「とにかく、テラス様はお戻りになって下さい」


 スクナビコナがテラスのお尻をグイグイ押して強引に高天原に帰らせようとしている。去り際のテラスはそれでもニコニコ笑って、ウインクしながら帰っていったのでした。


「クルル様! 少し失礼します」


 スクナビコナが肩にのってきて俺の額に触れた。


「これでしばらくの間は大丈夫ですけど。定期的に力を散らさないと……」

「散らさないと? どうなるの?」

「クルル様が神様になります」

「神様には、なりたくありません」

「定期的に私が散らしに来ます。そうだフフフ、お茶会の約束覚えてます?」

「もちろん! 近々お呼びしようかと」

「決まりですね」

「是非ともお願いします。神様になりたくないです」


 二人で顔を見合わせてプッと笑った。まったくテラスにも困ったものだ。

 素敵なキスだったけどね……。


「クルル様! テラス様を思うと力が湧き出しますので、注意して下さいね。神様になっちゃいますので」

「はい先生」

「それと……。クルル様はあまり遠慮せずにドンドンやってもいいと思います。テラス様や他の神々とも絆があって、愛されてもいる。もちろん私もクルル様が大好きです。もうこれって、目立つなって言っても自分で気を付けていても無理でしょうね。下手に隠すから話しがこじれるんですよ。おもいっきり目立ってしまえばいいのですよ。この世界を楽しんでみたらどうですか? 神に善悪はありません。どんなクルル様でも私のクルル様ですよ」


 スクナビコナのほおが少し赤く染まる。いい雰囲気にってその瞬間着メロが鳴り響く。


 超天楽だ……。


 通話と念じた!


「ビコナちゃん! 帰っておいで」


 プンプンのテラス様に呼ばれるスクナビコナ。


「クルル様、また会いましょうね。お茶会楽しみにしてます」


 ウインクして帰って行った。


「ありがとうスクナビコナ。楽しく生きてみるよ」


 色々と吹っ切れたのだった。


 ぐぅ〜! お腹が鳴った。そろそろ夕飯の時間だウオッチも18:00を表示している。


 テラスとスクナビコナとのアッとゆうまの時間はけっこうな時間だったようだ。

 この書庫はまた今度にしよう。戻ろうとして出入り口に近づいてみると、なにやらガタガタと音がする外からはガヤガヤと声も聞こえた。


「白姫ぶち破って!」

「わかったワン」


 んん? 何が起きてるんだ? 俺は扉を開けた。

 目の前には人だかりができている。出てきた俺をみて皆が目を丸くしている。


「旦那様!」

「ご主人様 無事なのかワン」

「…………」


 なんの事かも分からないが黒姫と白姫が泣きじゃくりながら抱きついてきたので、頭を撫でながら大丈夫をアピールする。よかったよかったと皆が口ぐちに安どの声をあげる。


 そんなにピンチだったのかな?


「あのう? 何かあったのでしょうか?」

「なにかじゃ無い! ぐすぐす」

「そうだワン! きゅんきゅん」


 話が通じる方をチョイスしないとな……千様と目があった。

 ジト目で見られたが説明してもらおう。


「姫達が狩りを終えて帰ってきた後、婿殿が見当たらないってことで探し回ったのですが侍女の一人が書庫に入って行くのを見ていましたので、来てみたら……」

「強力な結界でドアが開かない」

「すごい結界だワン」

「こんな強力な結界」

「張れるのはかなりの手練れワン」


 それで大騒ぎになり、こんな感じになっていたのか。さてどうしたものか……。

 まさかテラスが来ていたなんて言えないよな。しかし強力な結界をいつ張っていたのやら。


「本を読んでいたので……じゃまが入らないようにドアにつっかえ棒をしただけですよ」

「あの結界は、つっかえ棒なの?」

「さすがご主人だワン。でも今度からは棒は無しワン」

「ごめんね」


 なんだなんだ、よかったよかったと皆が散って行く。

 夕飯の支度ができてるからと二人に袖を引かれ広間へ移動する。千がその後ろをついてくるが視線が……。


 グサグサと千の視線が刺さる……すっと俺の後ろで囁いた後ニコッと笑って先に行ってしまった。


 夕食は黒姫と白姫の三人で食べた。家臣達はそれぞれの屋敷に帰ったし。信長は出かけているみたいで不在だった。千はあれから顔を見ていない。


 食後に、黒姫達は湯あみに行くらしい。ゆっくり入っておいでと伝えるとニコニコと出かけた。


「さてと……行きますかな」

 俺は千に呼ばれていた庭へ向かった。ここは稽古場の一角にあり休憩の際に利用しているらしい。この時間は誰もいなかったので、静かだった。


 千が縁側に座っている。いつもの黒い着物じゃないな、巫女装束を着用している。

 前天冠を着用し千早を羽織った千は月明かりに照らされて一段と美しく凛としていた。

 見とれてしまうな……綺麗だ……。俺を見つけた千が縁側に座るよう案内し自らは、庭に降りて正座する。あなたの方が偉いのですからといった感じの対応に少し困ったがこの世界のルールもあるこ

こは従っておこうと、縁側に腰掛けた。


「クルルシアン様から特別な神々しい気配が感じられます」

「…………」


 神格化は止まってるはずだが。


「千様! とりあえず横に座ってよ。話しづらいや」

「そのような失礼な事をできません」


 スクナビコナ。俺は俺の生き方でいいんだよね。


「千様。となりに座ってほしいな。今は無礼講でいいじゃん……無礼講を命ずる!」

「婿殿には敵わないわ」


 千が、あきらめてとなりに座った。この世界の神々への思い入れは素晴らしいほど皆に行き届いている。

もし俺がテラスと会ってたなんて知ったら明日から俺は、どうなるんだろうな。

 ちょっと神々しいだけでこれだからな。


「何か頼みごとですか? できる限りは協力しますよ」


 織田家には恩もあるし、なんていっても2人の姫の母様だもんな。


「東の魔法神様は今もご不在なのでしょうか? 代替りはされてないのでしょうか?」

「だから巫女装束に千早で正装してたんですね。もし魔法神がいるなら会いたいと?」

「まさか東の魔法協会が一人の男によって私物化されていたなんて。思いもよらず、村の者の声も聞かずに時ばかり過ぎてしまいました。魔法協会は国の力も及ばない特別な存在ゆえに、素質検査も洗礼もしない協会でもおかしいと、思わずにいました。せっかく素質のあった者達に、悔しい思いをさせた事が悔やまれます。わずか5年程度の事とお思いでしょう……。5年間って私たちの間では長すぎる時間です。その5年があれば立派な魔法使いになれたでしょうし、魔法を使う特殊な道具も使えたでしょうに」

「時間の流れかたが違うんですね……」


 俺は、千が何を伝えたかったを理解した。それは2人の姫との間にも関係がある。

 半獣人の寿命に関係するのだ。自分と同じ時を過ごせる訳じゃないんだ。


「半獣人種の寿命って……どれぐらいですか?」

「長くて40年です。人間種の血が濃いともう少し長いですけど、普通で30年早い子は20年程です。」


 色々な種族が暮らす世界……時間は平等じゃないんだな。


※※※

「旦那様! その五に続く」

「創造神からのお告げだワン」

「……シンドリ神?」

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