12 間話 黒姫と白姫
私の名前は、織田 黒姫。東村の織田家の娘で二歳だ。半獣人は
二歳で成人する。
人間種でいうと、24歳くらいだ。私には妹がいる。名前を白姫、
私達は双子だ。
私のほうが先に、出てきたのでお姉さんなのだ。白姫は生まれた
時に私とは少し姿が違った。
生まれた時から、聖獣として白い犬の姿だった。
とと様も、びっくりしたらしいが二人の可愛い娘の誕生を喜んで
くれた。
しかし、家臣達からは不安の声も上がった。魔物扱いする者もい
る。
でも、はは様がおっしゃったの。白姫は聖獣ですって。
はは様は、代々の巫女の家系で不思議な力が備わっていたからだ
と思う。
とと様は、娘達の出産と名前を村中に公表した。もちろん二人の
ありのままを。
黒髪に黒耳に黒尻尾の黒姫。
聖獣 白犬の白姫。
村はお祭り騒ぎになった、みんなで二人をお祝いしてくれた。
でも、白姫の魔物疑惑は収まらず、体の大きさも他の犬と比べる
と大きかったために、怖がられていった。私は何度も村で会う人達
に、怖くないって説明したけど、みんなは次第に白姫を避けるよう
になった。とと様とはは様の子でなければ、危なかったかもしれな
い。
私達はなるべく人目につかないように、城内でひっそり暮らすこ
とにした。
はは様が、私達を気遣っての事だった。
でもその方が、安心して白姫といられた。世話をする数人の侍女
がいたが、はは様の直系の侍女達なので、みんな普通に接してくれ
た。
私は、白姫が大好きだ。白くてフワフワで柔らかくて温かくて。
みんなには、ワンワンとかバウバウとか吠えてるようにしか聞こえ
ないみたいだけど、私は白姫の話すことが理解できた。
いつからだったは、覚えてないけど。
二人で寝ていたときに、白くボンヤリと光る球体が浮いていたの
で近づいたら、綺麗なお姉さんが現れて、白姫を守ってねって言わ
れて、白姫と話せるよう加護を授けますって。
次の日の朝、起きたら白姫の話す言葉が分かったの。
はは様に、その事を話したらそれは、真神の加護かもしれないっ
て。
がんばって白姫を守ってねって言われた。
それから、いつも二人一緒だった。
誕生日を迎えた日の事だ、朝から二人庭で遊んでいたら白姫が転
んでしまった。
そのとたん、女の子になっていた。白髪で白耳で白尻尾の可愛い
女の子に。
侍女達には、今はこのままで過ごさせてとお願いした。
突然でびっくりしたけど、白姫が人の姿になるのは初めてだ。二
人は普段とは違う遊びを楽しんだ。そろそろ部屋に戻って着替えを
する時間だったので、白姫は元の姿に戻ろうとしたが、戻れなかっ
た。仕方なく、はは様を呼んで見てもらった。
はは様は、ニコニコしながら大丈夫と頭を撫でてくれた。きっと
侍女から報告が行ってたか、きっとこうなる事を知っていたのかも
しれない。
白姫が力をコントロールできるようになるまで、元に戻れなかっ
たので誕生日会にはこのまま行った。はは様も二人を着付けできて
喜んでくれた。
誕生日会での白姫の人気は凄かった、可愛い白姫にみんなが集ま
ってきた。
私は、嬉しかった。こんな楽しそうな白姫は初めてだ。
でもそんな時間はあっけなく終わった。
飲み物を運ぶ手伝いの最中に、白姫は転んだ。
変化が解けて、白犬の姿に戻った。みんな悲鳴をあげて逃げたが、
白姫だと分かると騒ぎは収まった……が、笑いは消えた。みんな白
姫を怖がって小さくなっている。
白姫は、空気を読んで帰っていった。
残った私は……誕生日会が終わるまでそこにいた。追いかければ
よかった……でもここで私も帰ったらと思うと帰れなかった。
城に戻ると白姫がニコニコしながらお帰りと言ってくれた。
私は、泣いた。白姫を守れなかった。
白姫は気にしないでと笑ってくれた。
それから、白姫は力をコントロールする為に、村の外れの神社に、
はは様と修行に行ってしまった。私は、初めてひとりになった。二
週間ほどたっただろうか、村では白犬の魔物が夜な夜な暴れている
話がもちあがった。討伐隊が編成される。
私は、変な噂を聞いた。暴れているのは白姫じゃないかという噂
だ。
嫌な予感に城を飛び出した、侍女数人が追いかけてきたが振り切
った。
村の外れの神社まで来ると、夜を待って隠れた。
うとうとしかけた時だ、はは様の声がした。必死に声をかけている
私はその現場を見た、白姫が暴れていた……はは様の声にも耳を
貸さない! なに? いったいどうしたの? 気がつくと白姫に向
かって飛び出していた。
はは様の悲鳴が聞こえたけど、私はそれ以上の記憶がなかった。
気がついたら白姫と二人神社の境内で寝ていた。はは様が頭を撫
でてくれていた。
白姫は、まだ眠っている。
はは様がおっしゃった。真面目な顔のはは様は少し恐かった。
昨日の夜、白姫が暴れているところ、私が白姫に飛び乗りなだめ
たとたん、白姫が落ち着きを取り戻したが、私はそのまま意識を失
ってしまったと。
はは様は、続けた。私達二人が生まれる前に真神様からお告げが
あったと。
白犬の子は聖獣の生まれ変わり。黒髪の子は聖獣の守護者の生ま
れ変わりであると。
私は、誓った。一生白姫を護り一生お姉さんでいると。
白姫は、夜な夜な暴れることは無くなった。力をコントロールで
きない時は、私がなだめた。
いつしか、白犬の魔物の事は忘れ去られ、白姫の噂も消えた。
とと様とはは様は、念の為に白姫は、力無き白犬と噂を流した。
それからは、ダメな白犬だけど殿様の娘だからしかたない……そ
んな存在になった。
白姫は、私に言った。本当の自分を最初から好きでいてくれる人
に出会えるまで、私以外に人の姿をみせないと。みんなが怖がる白
犬の自分を愛してくれる人にいつか会うまで。
私は、白姫と抱き合って泣いた。私も白姫と一緒に幸せになれる
日まで結婚なんてしないと誓った。
それから、いつも二人でいた。自分と白姫の鍛練で滅びの森に出
掛ける事が増えた。
二人でたくさん訓練した、勉強もした。白姫は算術の時は、たま
に消えた……けど。
とと様が剣術と体術を教えてくれた。狩にも連れて行ってくれた。
はは様から忍の技や魔法の知識、巫女の勉強を見てもらった。
もう少しで二歳って頃には2二人ともかなり強くなっていた。
私は、天魔六流 刀の師範代になっていた。
てんまむりゅうかたな
白姫は、力のコントロールもなんなくこなし、人の姿にも自由に
変化できていた。
私の前以外では変化しなかったけど。白姫は、はは様の指導で巫
女の修行もしていた。
人の姿の時は、魔法とは違う治癒の力が使えた。これは二人だけ
の秘密。
滅びの森に狩に行って帰る、こんな生活が続いた。白姫は、相変
わらずダメ犬を演じていた。もう力もコントロールできるし大丈夫
だと言ったが、白姫はこれでいいと言う。
本当は白姫も強いのに……。悔しかった。
二歳になった。成人した私にお見合いの話が沢山きたけど全部断
っていた。
村では強くて可愛いと評判になっていたらしい。私は、知らない。
勝手に姫様守護倶楽部なるものまで出来ていたらしい。私は、知
らない。
私の見合い話に一憂し、断ったと聞くと一喜してたらしい。私は、
知らない。
結婚など興味もないし、私は白姫の守護者だ。白姫を幸せにする
んだ……。
あの日あの人に出会うまでは……そうだった……。
その日はいつもの様に二人で狩に出た。道標の小屋を目印に適当
に進んでいた。
突然だった、白姫が走り出した。狩に来てるときは連携を重視す
る、だから姉妹の関係ではなく、ハンターとして行動している。単
独行動は絶対禁止だ。
白姫を呼び止めたが、早くしないと間に合わないって言葉と共に
走り去った。
本気の白姫の走りに追い付くわけがない。なんとか見失わないよ
うに追いかけた。
やっと追いついて白姫を見つけた私は、びっくりする。
子供が白姫を撫でている。白姫は嬉しそうに尻尾をパタパタ振っ
ていた。
こんな白姫初めてみた。白姫がなついている。
子供の目の前には、魔物の死骸が転がっている。それで急いでた
のか。
私は、白姫の行動に納得した。しばらく子供を見ていたが、剥ぎ
取りをしようとしないし、魔払いもしない……不思議な子供だと思
った。
剥ぎ取りを手伝った後、子供が少し汗臭かったので一緒に水浴び
をして、洗ってあげた。
お姉さんとして当然だけど、この子は少しやらしかった。
私の裸をチラチラ見たり、白姫に股がるときも下着をチラチラ見
ていた。
おませな子だった。
それから、不思議な冒険? が始まった。この子が東の魔法協会
に行きたいと言う。
歩いて行ける距離では無い。でも白姫が連れて行くって言った。
本気で白姫は、この子が好きみたいだ。この不思議な子供 名前
はクルル。
クルルは、魔法も知らないのに魔法協会に大事な用があるみたい
だ。
私は、少しだけ魔法の講義をしてあげた。すごい驚いてる。
ちょっと可愛いかな。しかしも、ホーリーシャワーを魔法だと思
ってる。
ちょっとお間抜けだ。でもなんだろう、少しづつ惹かれている。
たまに大人びた事を言う時は、ドキッとする。
私達三人は、本当に魔法教会に乗り込んだ。クルルはずっと時間
を気にしていた。
白姫も私も普段と少し違った冒険? にノリノリだったかもしれ
ない。
大聖堂に大穴を開けてしまった。やり過ぎたと反省している。
クルルが大聖堂に入ると、副総帥のスラントが現れたりと大騒ぎ
になった。
そんな中クルルが、総帥の後継者だと叫んだ。
その後は、酷かったかな。ウフフ今だから笑えるけど……。
ホーリーシャワーを! 魔法と勘違いしたクルル。
伝説の魔法具を四個全部! 持主登録したクルル。
ドラゴンと八岐の大蛇を召喚してしまうクルル。
私、クルルの事ばかり考えいる。
結局、逃げる事になって白姫が頑張ってくれた。
意識を失って寝ていたクルルが何故か成長していた、でも私のほ
うが背が高いから。
朝、いなくなった時は、心配した。白姫が行って来なさいって。
半べそで探した。私、クルルを好きになってる。
そして、道標の小屋でのこと。私はクルルの秘密を聞いた。
巻き込まれたなんて思ってない。私も白姫もクルルと一緒にいる
って決めてたから。
でもクルルが23歳なんて……聞いてないよ。私二回も裸見られ
てる……恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい……。
私は、白姫の後ろに隠れてしまった。嫌いな男だったら鉄拳制裁
で終わりだ。
でも好きな人に見られると恥ずかしいな。
白姫がこっそり言ってくれた。責任とってもらいなって……。
いいのかな? 先に好きになったのは白姫だよね。
クルルは、白姫と会話できるようになって楽しそうに話してるの
よ。
白姫はいいの? 私……悪い女だね。
私は、諦めようと考えていた。その時クルルが、おでこを触った
……。
びっくりして声が出た。そして気がついたの、もう諦めるなんて
無理だよ。
白姫ごめんなさい。
クルルに告白した、生まれて初めての告白、半獣人生最後の告白。
言った言葉は、『責任とって』だったけど……。
白姫がクルルに何か言ってる。未婚女性の裸を見たらお嫁さんに
する責任があるって言ってる……さらに白姫も告白してる……でも
私は嬉しかった、白姫も同じ気持ちだったんだね。二人で同じ人を
好きになった。
クルルは、私達をお嫁にしてくれるって約束してくれた。
白姫よかったね、そしてありがとう。
その後のクルルは、二人の王子様だった。
門番へ怒る。とと様とはは様へ怒る。
とと様とクルルが二人で出ていった……。
私達は心配だった。いくらクルルでも、とと様が相手では無事で
いられないかも。
でも、はは様がおっしゃったの、大丈夫だって。
あなた達2人の選んだ人は大丈夫だって。それと、とと様なら大
丈夫だって。
今私達は、とと様はは、そして大好きな旦那様……と月見を楽し
んでる。
クルルあなたに会えてよかった。
私と白姫を幸せにしてね。
「大好きです旦那様」
「大好きですワン。ご主人様」
二人を枕に眠っているクルルに私達は軽く接吻する。
本番は結婚式の時してもらうんだ。フフフ。
※※※
白「黒姫……乙女だワン」
黒「恥ずかしいです」
白「間話でした。ワン」




