表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/31

1日目

なんと、第二部開始しちゃいました。

「というわけで、勇者を召喚していただきたいのです」

 絹のような光沢のある生地で作られたライトグリーンのドレスを纏い、漆黒の美しい髪にゴールドのティアラが映える超絶美少女が、俺の前でそんなことを言う。


「またかよっ!!」

「またかよ……、とは?」

 目の前の姫が、綺麗な顔に疑問の表情を浮かべる。背後にいる従者らしき男も怪訝な顔だ。

「あ、いえ、こっちの話です」

 くそ、せっかく世界を救ったと思ったら、またこんな目に……。それも……、それも?

「ずいぶんと、殺風景な……」

 呼び出された場所はまさに荒野。見渡す限りの赤茶けた荒地で、草木が1本も無い。そらもどんよりと分厚い雲に覆われて薄暗い。よくよく見れば、目の前の姫らしき人物も、ずいぶんと薄汚れている。あまりの美少女さに、汚れ具合にすぐには気が付かなかった。

 それ以外には馬車が一台とガチャ装置が……、あれ? 魔法陣も無いし、そもそもガチャ装置が馬車に搭載されてるぞ?


「えっと、とりあえず状況を聞いてもいいかな? お城とかじゃないよね、ここ」

 姫は少々くらい表情でうつむきつつ、この世界の状況を教えてくれた。


 この世界は、すでに世界の99.99999%がモンスターにより埋め尽くされ、城すら失い、彼らが知る限りで残された人類は彼らのみ……。

「あれ? これ、もう詰んでね?」

 仮にモンスターが何とかなっても、人類滅亡確定じゃね?


「と、とりあえず、モンスターに囲まれておりまして、なんとかならないかと……」

「え?」

 話し込んでいて気が付かなかったが、改めて見回すと周囲には大量のモンスターが……。

「すっかり包囲されとる!!」

 俺たちの話が終わるまで律儀に待っているとは、随分と空気の読めるモンスターたちで……。


「って! 関心してる場合じゃない!!」

 気が付けば手に持っていたスタミナコイン1枚を握りしめ、俺はガチャ装置へ走る。

 とにかく、強い奴来てくれ、頼む!!



 ガチャ



 つい最近も回したような、それでいて久しぶりのような感覚。

 そしてレバーの回転に呼応するように装置から飛び出すカプセル。そのカプセルは、地に落ちる前にパカリと割れ、光が漏れだした。

「あ、魔法陣無いからどうなるのかと思ったら、そういう……」


 光が晴れ、中から黄金のオーラを纏い、金一色に染まる頭髪が怒髪天を衝くように逆立つ男が姿を現す。

 それはまさしくスーパーなヤサイの人。


「太陽拳!!」

 俺は即座に送還ボタンをぶったたく。

「あぁ、金色に輝く神々しいお姿でしたのに……」

「くそぅ! やっぱりそういう展開になるのかよ!!」

 俺の気持ちを逆なでるように、ガチャ装置からはコインがコロンと飛び出してくる。


 と、周囲のモンスターどもが更に近づいて来ていた。

「ま、マズイ、いよいよ余裕が無い!!」

 次こそは! 著作権的に安全な奴来てくれ!!



 ガチャ



 再び飛び出したカプセルから光があふれる。


「さ、サリア、あまりくっつくなよ……、あれ?」

「じゅ」

「お、もしかして……」

「ジュンくぅぅぅん!!」

 召喚されたのは苦労人の勇者、タケモト・ジュンイチ その人だった。俺は感動のあまり、涙を流しながらジュン君の手を握った。彼は「お、おう」と言いつつ、少々引き気味だ。

 ジュン君は以前呼び出したときより更に力強い雰囲気を纏っていた。もはや押しも押されぬ"勇者"の貫録だ。


「いいよ。送還されたら体力も負傷も回復するから、全力で"殿(しんがり)"しとくよ」

「さすがジュン君! ステキ!!」

 俺たちの話を聞く間も、片手間で近づくモンスターたちをなます切りにしていくジュン君。マジで惚れそうだ。


「とりあえず退路を確保しようか」

 そう言いながら、振り上げた剣が輝きを増し、天を穿つように閃光が伸びる。膨大な光量の柱は振り下ろされ、地を這うモンスターの群れを一直線に消し飛ばした。

「よいしょっと」

 気軽な声で、ジュン君が剣を左右に振る。数cmの振り幅だが、伸びる閃光の先では数百mの範囲でモンスターが消滅した。かくして、地の果てまで扇状に広がる道が開かれた。


「……、殿(しんがり)とか要らなくね?」


 俺たちはジュン君に「アデュー」と見送られつつ、馬車で地の果てまで続くような扇状の道を走っていった。従者の男も、ジュン君を羨望の眼差しで見ていた。俺もジュン君の戦いを間近で見たのは初めてだったな。マジですごかった。


【世界のモンスター率99.99999%→98.0%】


ジュン君がヒロイン。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ