私と君の宝物
皆さんこんにちは。蒼神美麗です。今回の作品は、短歌から想像して書きました。楽しんで貰えると嬉しいです。では、どうぞお読みください。
あっ。また『ごめんね』とひと言で済むのに、その言葉を言い出せずに、帰りの支度を終えた、君の背中を見つめて、見送った。これで何度目だろうか・・・・・。こないだのふたりでした会話が頭をよぎる。
部活が終わって君を教室まで迎えに行ったら、私の体が一瞬して凍りついたのが分かった。君は楽しそうに女の子と話していた。邪魔をするなといわんばかりに、君と女の子は笑顔で言葉を交わしていた。すると君は私に気づいて、私のところまで小走りでやってきた。私の気も知らないで、君は笑顔で、
「帰ろっか」
と一言言った。私は、君にとって特別な存在じゃない。だから、気持ちを押し殺して、
「うん、帰ろっか」
と笑顔で君にそう言った。
幼馴染の君といつも帰るこの帰り道。いつもならこの帰り道がとても楽しく感じられるのに、今日は全く楽しくない。しかも君は私の気も知らないで、あの女の子の事を話し出した。
「あの子ね、学年のトップ3に入る天才なんだよ。凄いよね。俺も頑張るぞー。でさ…………。」
とずっとあの女の子の事を話してて、だからついかっとなって、
「さっきから、あの子の話ばかりだね〜。君はそんなにあの子の事が好きなの〜?というか、好きなんでしょう。だからずーっと、あの子の話ばかりしてるんだ〜。ふーん。」
と嫌味を言ってしまった。そしたら、君が顔を赤くして、
「違う。俺は…………。」
と言いかけて。でも、私の感情は抑えられなくて、
「あ〜、そう。私に嘘をつくんだ。もう君なんて嫌いだよ。」
はっとした時にはもう遅かった。君の顔を恐る恐る見ると、なんだか泣きそうな顔で、
「そっか……。じゃあ、先に帰るね。」
と言って、君は走って帰った。その時の空が、薄暗く雲が多いのが私の心になんだか刺さった感じがした。
そうこれは私が悪い。勝手に一人で怒ってしまって。だけど、何度もこの事を思い出すと、君に謝れなくなる。でもこのままでは嫌だと、内心思ってる。だから次こそ、必ず言うんだと思っていても、勇気が出ない。そしてこの日は、また言えずに終わった。
次の日の放課後、また君が帰りの支度をしている背中を見つめていた。君が帰ろうとしたその時、体が勝手に動いた。そして君の袖を引っ張っていた。君が、
「何か用なの?」
と言ったので、今だ、と勇気を振り絞り、
「ごめんなさい。こないだ私、ひどい事言っちゃった。」
そう私は言った。やっと言えた。そのとき君は、
「俺こそごめん。実はお前に嫌われたかと思って、距離置くようにしてた。というか、無理しないで。無理に関わらなくていいよ。」
「嫌いじゃないよ。本当にひどい事言っちゃった。ごめんなさい…。」
「………。っ、良かった。嫌われたかと思ったよ。」
「ごめん、本当にごめんなさい。言うつもりはなかったんだよ。」
良かった。謝れた。そうほっとしていると、
「俺、お前に言いたい事がある。」
そういうと君は、
「俺、お前が好きなんだ。あの子じゃなくて、お前なんだよ。」
そう言われて私は、涙が溢れた。私は君の特別に慣れてたなんて…。
そしてその日、私と君はあの帰り道を帰った。夕日がとても輝いていて、祝福してくれているように感じた。私達はその後も、卒業まで一緒にこの帰り道を帰った。
大人になった今でも、あの事を思い出しては一緒に笑っています。あの帰り道には、たくさんの思い出が詰まっている、私達の宝物です。この話を、私達の新しい宝物に聞かせてあげたいと思っています。
〜Fin〜
どうでしたか。楽しんで頂けたでしょうか。またどこかで、お会いできたら光栄です。ではさようなら。また、会いましょう。