六
それから更に時間が経過した。
いつも通り、とある問題に直面していた。今度も生死に関わるもの。
俺たちは最初、地震か何かだと思ったが、すぐに何かしらの生き物だと判明した。
その生き物とは牛頭人身の怪物、すなわちミノタウロスだった。
ミノタウロスは巨大な斧を用いて周囲の木々をなぎ倒してこちらに近づいてきている。
またしても身体が動かない。不思議なことに、彼女も動く様子はなかった。その間に敵は近づいてきているのにも関わらずだ。
俺たちは地面の揺れに耐えられず、二人とも転倒した。
俺は不意に笑ってしまった。もちろん、笑う要素などかけらもない。
俺のおかしな反応に彼女は反応し、俺の方を一瞬見るが、彼女は何も言わなかった。
恐怖に怯えた表情を浮かべていた。
彼女の次の行動を予測するには十分だった。
俺をこの場に残して何処かへと去っていく。それと同時に彼女の持っていた松明の明かりも消え去った。
そして、当然の如くミノタウロスの標的は俺に定まった。けれど、辺りが暗くなったせいで俺の位置を正確には把握できない様子。
すると、どうしたのだろうか。ミノタウロスが周辺の木々をなぎ倒し始めた。威嚇するかのように。
やはりといえばいいのか。数ある大木の内の一つが肩に当たり、呻き声をあげてしまった。
これに気づいたミノタウロスは斧を振り上げーー
命が断たれた瞬間だった。
生暖かい何かが身体中を流れ、目を閉じる。
異世界はのんびりしていられる場所ではない、という教訓だったのかもしれない。
この話は完結です。